jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

生成AIはコンシェルジュというより麻薬だな--個人的感想です

ChatGPT登場以来,生成AIの利用が拡大している。欧米では危機感の方が強めだが,日本では何だか諸手を挙げてのイケイケムードである。

 筆者はこれを「盗用AI」と表現した(生成AIではなく「盗用AI」というべき--Creativeな世界は崩壊した - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/7/20)。ネット上のデータを勝手に取ってきていかにも造り上げたように差し出すのを“生成(generative)”とはとても呼べないのではないかと思うからである。

 特に画像系の勝手に他の画像を組み込んで「生成しました」とシラッと表現されるのが気に入らない。しかもこれを画像系ソフトウェア企業最王手のAdobeが率先しているのが,まことに嘆かわしい。まさにこれでは「写真」ではなく「写合成」だからである。

 一方,テキスト系のAIは,「適切に使うと,もう1人のメンバーがいるように利用できる」と言われている。たしかに,まず第一段階のいわゆる“たたき台”を作るのには向いている気がする。物知りのアドバイザーであり,コンシェルジュでもある。

 しかし,彼は逆にすべての領域に通じているために,専門的な視点で見ると誤っていたり的外れだったりする。ここから人間のチームによる議論が行われなければ,彼を使うことには気を付けた方がいい。要するに,単なる「物知りクイズ王」だからである。王と言っても,結構な頻度で間違った答えを出すのは知ってのとおりだし,聞きかじりの知識をさも専門家のように語っているだけであって,その分野の専門家ではない。クイズのように正解があって,答え合わせできるものならともかく,相談相手としてはふさわしくない。

 しかし,クイズ番組の早押しではないが,その回答速度が圧倒的に速いことだけが評価され,番組が継続され,スポンサーが付き,お金が回るという仕組みになっている。視聴率が取れればいいテレビ番組にとって,その番組の社会的影響などどうでもいい。視聴率という「麻薬」に手を出したことになる。

 生成AIも同じように,期待以上の成果が得られることに単純に感動して,使い続けることになるのではないか。こちらもいわば「麻薬」と同じである。そのうち,出てくる回答が自分の回答と同じだと錯覚し,拒否反応もなく受け入れてしまい,やめることができなくなってしまうのではないだろうか。

 Adobeは,Photoshopに画像生成AI機能を入れてこれをサブスクリプションの形で提供している。筆者は古いパッケージ版のソフトを使っているので,当面は手を出すことはない。

 一方で,MicrosoftOffice 365というサブスクリプション版に生成AI機能を入れて提供を始めた。こちらは基本的にテキスト系である。

 Wordで文章を作成する際,これまでもさまざまな「おせっかい」機能が働いてきた。英単語なら必ず頭を大文字にするとか,開きカッコを入れると必ず閉じカッコも先に用意するとか,とにかく勝手に横やりが入るので,筆者は基本的にすべてのオートコレクト機能をオフにして使ってきた。

 ここに生成AIが入ってくると,どんどんと言葉が足されたり修正されたりするのではないかと気が気ではない。

 ただ,Excelでピボットテーブルを作るとか,表からグラフを作成するとか,そういう機能は自動化してほしい気がする。縦軸や横軸,グラフの種類など,選択肢が多すぎるからである。

 他社ソフトのCMで「表計算使ってた時は、天文学的な時間を要してました」というのがあるが,生成AIの導入によってこうした作業はExcel上でも改善するかもしれない。

 幸いなことに,筆者にとってグラフ作成機能の利用は年に数回しかなく,しかも最近はほとんどのグラフもファイルメーカーで作ってしまうので,このAI機能も筆者にとっては不要ということになる。ただExcel派の人にとっては,「麻薬」になるだろうな,という気がする。

 人間,簡単で楽で時短な手段を知ると,必ずそちらに流れて戻ってくることはない。おそらく,文章の校閲・校正,文献調査,表現の統一,翻訳といった,ある意味で非生産的・非効率的な作業については,AIの利用は各段に有効となるだろう。

 一方で,より創造的な文章づくりでは,執筆者の個性が求められることになる。AIは基本的にネットからの文章のただの寄せ集めなので,すべて同じになる傾向はあるだろう。ただ,その執筆者の“個性”が学習されてしまうと,“個性的な文章”が作成されてしまう危険は残っている。まあ,賞を受けたあとに次回作で悩む作家も多いので,そういう時のゴーストライターにはなってもらえるかもしれないが,これはまさに犯罪的な麻薬利用方法となる。

 もし現在から将来にわたって,文章を書く(タイプでも可),あるいは絵画や写真などの作品を創造するといった,いわゆる「クリエイティブ」な仕事を目指しているなら,生成AIには手を出さないことをおススメしたい。もちろん自分の将来が無限に広がっている若い生徒さんや学生の皆さんは,基本的に生成AIに手を出してはダメである。自分の進路が固まり,仕事に面白さを感じるようになり,そこで初めて新しいツールに挑戦するという段階が来るまで,AIの利用は待った方がいいと筆者は考える。何しろ,下手すると自分の頭で考えた文章よりも,よくできた(たとえば読みやすいとか,誤字がないとか)文章があっという間にできあがるからである。自信がなくなること,請け合いである。逆に,「これで有名作家になろう」とか「○○賞を狙おう」などとも考えないでほしい。それこそ「麻薬中毒」の症状である。