2024/2/7東京電力福島第一原子力発電所から,処理前の汚染水が5.5t漏れ出したというニュースがあった。16個あるバルブのうち10個を閉め忘れて作業したという。このバルブの操作は手動だという。
5.5tを換算すると5500kg。お風呂1杯が約200Lで200kgなので,お風呂27杯分ということになる。25mプールが540000Lで540000kgなので,学校のプールの1/10が流れたという感じになる。一般の家で毎日使うお風呂の水を1ヶ月分,一気に流したことになる。発電所の面積が大きいにしても,相当多いと感じる。
今回は,「処理前の汚染水」であることと,「手動操作」という2つの点で,今まで以上にもっと重大視すべきである。なぜ,この作業を人の手で行わなければならなかったのか,またなぜそこにこれほどの重大なミスが起きることが予想できなかったのか,マニュアルはあったのか,ダブルチェックの態勢があったのか,などである。
ヒューマンエラー,ダブルチェックミス,という意味では,2024/1/2に羽田空港で起きた日航機と海保機の衝突炎上事故がまず頭に浮かぶ。指示の取り違いミス,チェックシステムのミスなどが重なった。さらに,ここでも消火のための水が十分供給できず,海水を使うのも間に合わず,機体がほぼ全焼というお粗末な結果となってしまった。
バルブが半分開いた状態で作業を始めたとしても,「バルブが閉まっていない」というアラートを出す仕組みと,電源を作動させないフェイルセーフの仕組みがあれば,今回の事故は防げたのではないか。放射線汚染デブリの取り出しと,処理水の放水のことばかりに注意が行って,バックアップ態勢が取られていなかったのではないか。さらに作業員の教育も行われていなかったのではないか,と疑わざるをえない。
マスコミも,事実を報道しただけで終わっている。今回は「処理水」ではなく明らかに「汚染水」である。再び,海外からの批判が巻き起こることも考えられる。
土壌に染み込んだという5.5tもの水を,「土壌を処理する」と言われても,いったい何をどう処理するつもりだろう。水がどこまで染み込んだのかまで考えると,とてもプール1杯の処理量では済まず,また延々を掘り返しを続けなければならないのではないか。
処理水を海洋投棄で拡散させてごまかそうとしている。汚染水が土に漏れ出したからタンクに溜めることで対応してきた。その汚染水がまた土に漏れ出した。ということは,汚染水が土経由で海に染み出す可能性も否定できない。
東日本大震災からすでに13年。能登半島地震での志賀原発での変圧器の油漏れも重大な事故だが,今回の汚染水漏れは非常に重大なミスとして扱うべきだと考える。