天気予測の変更が頻繁すぎて予測にならない--雨雲レーダーを見て5分後の行動を決めるしかない - jeyseni's diary (hatenablog.com) (2024/8/22)と書いた翌週の台風10号は,まさに天気予報泣かせだったと思われる。最初はまっすぐ北上して本州のど真ん中に上陸し,そのまま日本海に抜けてさらに北上するという予測で,まさに日本縦断と思われた。日本海上に抜ければまたそこで勢力が落ちずに東北や北海道にも大きな被害が出る可能性があった。
ところが,途中で一気にスローダウンし,今度はどんどんと西に進路を取るようになった。筆者はこのまま,西に抜けて朝鮮半島の西側に沿って北上し,日本には大きな被害を及ぼさないと予測した。ところが奄美大島あたりで今度は急に北上を始め,鹿児島西部に上陸。その後も,自転車並みの時速15kmとゆっくりしたスピードで北上し,勢力が一気に下がった。現時点では暴風域はなくなったが強風域が大きく,しかもその外側の大気も大きく動かすことで,日本全体の大気が不安定な状態にあり,どこでも大雨が降る可能性が出てきた。太平洋からの湿った空気がぶつかる静岡や神奈川などでは,台風10号から離れているにも関わらず,線状降水帯によるような連続した大雨になった。この影響は明日の8/31も続く可能性があるという。
これまでの天気予報では,低気圧や高気圧の配置をベースに天気は基本的に西から東に移っていくのが原則として予報していた。これが温暖前線や寒冷前線などの形となり,天気の移りを予測して予報が出せた。
ところが日本周辺から太平洋にかけての海水温が上昇したことで日本の上空の水蒸気量が増え,大気の状態が不安定になった。ここに風や上昇気流などちょっとしたきっかけで積乱雲が発生し,局所的なゲリラ豪雨が起きる。日本国中,どこでゲリラ豪雨が起きるのか,見当がつかない。
ところが,現在の天気予報のベースとなっているスーパーコンピュータは,瞬間瞬間の大量のデータを元にして,将来の天気パターンを計算する。時間が経過すると,またその時点のデータを元にして計算し直す。ゲリラ豪雨をもたらす積乱雲は,神出鬼没だし,その発生をベースに再計算したら,過去の予測とはまったく前提条件が異なってしまう。したがって,予報が突然変更になる。
人間の予報士は,「天気が移っていく」ことを念頭に予報するのに対し,スーパーコンピュータはその時々のデータを元に再計算するだけなので,連続性がなくなる。スーパーコンピュータが勝手に積乱雲が発生する場所を作ることはないし,発生した積乱雲を元に再計算したら,それ以前の予測との連続性はまったくなく,とんでもない予報が突然出されることにもなりかねない。
ゲリラ豪雨は,いつどこで発生するか見当がつかない。しかし,「いつかどこかで必ず発生する」という前提で物事を考えれば,カンカン照りの晴天でも傘を持ち歩くという用心をしていれば,少なくとも濡れる量は半分で済むだろう。自分で,大気の状態を想像し,雨に遭う可能性を考えれば,傘を持参することがいかに重要かわかるのではないだろうか。
天気予報がスーパーコンピュータを前提とする以上,「5分先の予想」より以降の予報は「当たるも八卦,当たらぬも八卦」だと考える。「スーパーコンピュータはこう予測しました」と伝えるだけでは,気象予報士の存在意義はない。