2024/1/1の地震で大きな被害の出た能登半島で,今度はいったん中国に抜けた台風14号がUターンして温帯低気圧に変わってから前線を刺激し,線状降水帯を発生させて大きな土砂災害が引き起こされた。復興仮設住宅まで床上浸水し,半島のほとんどの河川が氾濫を起こし,土砂崩れが各地で発生した。
地震によって河川の堤防にも脆弱な部分ができていた可能性があり,これの修復前に大雨が来て堤防決壊が起き,広範囲の住宅地に水が流れ込んだ。従来のような土を盛ってその表面をコンクリートで固めただけの堤防では,長時間の水流で土砂が洗い流されたり,土手に切れ目ができたりし,水の圧力にも耐えられなくなってヒビが入り,そこから一気に決壊するというパターンから逃れられないと思える。矢板方式の河川堤防はいいアイディア。どんどん打ち込んでみてはどうだろうか。 - jeyseni's diary (hatenablog.com) (2021/8/27)と,ずいぶん以前に書いたが,こういう補修工事が進んでいるという話は聞いたことがない。その後も,利根川や多摩川といった一級河川ですら,堤防決壊による氾濫で大きな被害が出ている。
台風14号があまり発達せずに中国に抜けるだろう,という天気予報は見事に的中した。しかしその後,Uターンして,さらに線状降水帯が発生し,記録史上最大の雨量を記録するような大雨になることはほとんど予測できていなかった。9月の秋分の日まで,猛暑日,夏日が続くことも,60日を超えて猛暑日が続くことも,誰も予測できなかった。
天気予測の変更が頻繁すぎて予測にならない--雨雲レーダーを見て5分後の行動を決めるしかない - jeyseni's diary (hatenablog.com) (2024/8/22)と書いた。さらに,今日2024/9/23の能登半島地方では,朝には雨がやんで晴れたにも関わらず,「大雨警報」が続いていることの説明として,「大雨によって地盤が緩くなっていて土砂災害の恐れが続いているから,“大雨警報”を解除していない」という説明があった。これでは大雨警報ではなく土砂災害警報に切り替えるべきではないのだろうか。
大き目の地震が発生すると,「今後1週間ぐらいは,同程度,あるいは同程度を上回る地震の発生の可能性があります」という説明がある。これはもう,予測も何もしていない,ただの「とりあえず注意してね」と言っているだけで,何の根拠もない。メディアも,大雨があった際は,「早めに避難所に避難し,周りが避難できない状況の場合は,無理して避難せず,2階で斜面から遠い側で過ごしてください」と,これもお決まりのメッセージを発する。今回の能登土砂災害でも,2階まで水が来て,その後の行方が分からなくなって人のことが報道されている。無事で見つかることをお祈りするばかりである。
最近の天気予報は,「午後は大気の状態が非常に不安定になり,にわか雨や突風の恐れがあります」と関東全域を対象とした予報がされ,ゲリラ豪雨や竜巻などがどこでどの規模で発生するかは結局予測できていない。実際,雨雲レーダーを見ていても,突然雲が湧き,それが10分後には雷雲となり,その地域だけゲリラ豪雨になる。だいたいが山のふもとぐらいの位置で積乱雲が発生し,急速に発達して豪富をもたらしているのだが,どこで発生するのか,またその雲がどこに向かい,どの程度広がるのか,ほとんど予想がつかない。いちおう,雷雲の発生した場所と,風向きからその進路を予測するが,15分先の予報すら不可能である。
気象庁も気象会社も「天気予報は当たりません」と宣言すべきではないか。「天気予測」「天気可能性」と言った方がいいのではないか。伝えるのは,現在の気圧配置,雨雲の状況,風の流れの状況,各地の天気と気温などの「確定情報」だけにし,今後の天気の「予測」とその根拠を明確にすべきだと考える。あとは,今後の天気に関心のある人が自分なりに「予測」して対応策を考える。関心のない人は,「天気予報」に責任を押し付けるのではなく,予測しなかった自分を反省すべきである。
日本各地で気温が上がり,水蒸気量が増えれば,大気が不安定になることは明らかであり,「降れば土砂降り」になることは確実な状況になりつつある。ならば,まずいつでも折り畳み傘は常備することと,可能なら薄手でもいいのでレインコートを常備することを心がける必要がある。カバンが濡れないようにカバンカバーも持つ。濡れたときに拭くタオルも持つ。少々の水たまりになっても踏破できる防水の効いた靴を履く。日本の夏は,もうこれぐらいは覚悟しておいた方がいいと思われる。
地球温暖化で,空中の水蒸気量は増えている。夏場は土砂降りだが,冬場はドカ雪となる可能性がある。道は凍って滑りやすくなる。膝ぐらいまでの積雪の可能性は,どの地域でも起こりうる。滑りにくく,積雪でも踏破するには,長靴を準備する必要があるだろう。
降雨量,降雪量も従来の2倍,3倍は予測する必要があり,落雷の頻度も高まっている。住んでいる地域から離れた場所での天候不良によって停電や断水などライフラインに影響が及ぶ可能性も予測しなければならない。
今日の関東地方は曇りがちだったが,昼すぎにはいい天気になっていた。ところが夕方にかけて雲が広がり,山沿いで雲が発生している。Yahoo天気アプリなどでは,地域を設定しておくと,雨雲の接近に対してアラートが送られてくる。雨雲レーダーをベースとした予測は,10分先~15分先ぐらいまでは当たる確率が高い。今回は,このアラートのタイミングで,空読みをし,イヌの散歩に出かけた。10分ほどの散歩の帰り道で雨がパラパラし始めた。
筆者の行動の多くは,この雨雲レーダーの状況と,風向きの状況,そして雨雲レーダーによる雲の動きの予測アラートに従っている。そこに雨雲がある,という事実と,空の雲の様子,外の気温や湿気などを総合的に(いや単に勘に頼って)判断し,行動を決めている。だいたい当たっているような気がする。
線状降水帯はどこでも起こりうる。九州西部で水蒸気量を気象情報から線状降水帯の予測をするという装置が設置されたようだが,台風10号の際にも雨予測はできなかったし,四国や東北,関東の大雨を予測することはできなかった。しかし,大気が不安定な上に,台風で大気がさらにかき乱されている状況で,どこで大雨が降り,強風が吹いてもおかしくなかった。傘,レインコート,カバンカバー,防水靴も,実際役立った。
「命を守る行動をしてください」と,これもまたメディアの無責任な呼びかけである。正直,いくら「降れば土砂降り」と思って準備していたとしても,予測をはるかに越える災害が続いている。晴天の日は,そこから4時間ぐらいは問題ないとして,4時間を超える時間帯まで呑気に晴天を信じることをやめる必要があるように思える。午後は土砂降りの可能性を考えて,朝から準備する。そして家族間のコミュニケーション(どこに行くか,何時に帰宅予定か,食事は家で取るのか)といった何気ない情報の共有を図ることも,的確な対応につながるように思える。
地震からようやく立ち上がろうとしている矢先の土砂災害に見舞われた能登地方の皆さんには,心からのお見舞いを申し上げたい。他の地域の人々にも,まだまだ台風の季節が続くことを念頭に,地震への対応も併せて準備を怠らないようにしたいと思う。