ドイツのショルツ首相が退陣に追い込まれた(ドイツのショルツ首相、信任投票が否決される 来年2月に解散総選挙へ - BBCニュース 2024/12/17)。中道左派の与党・社会民主党が低迷し,保守派のキリスト教民主同盟が主導権を握ることになりそうである。
アメリカもバイデン大統領が退陣し,1月にトランプ氏が大統領に復活する。アメリカ・ファーストを掲げ,閣僚には民間人を中心にトランプ支持者を集めて,立憲,司法,行政のすべてでトランプ路線を推進する体制になる。
日本も自公連立与党が過半数割れし,石破首相が野党の意見を取り入れた政策に妥協しながら政権運営をするという不思議な形になっている。国民民主党の玉木党首が不倫問題で退陣するかと思いきや,年収の壁議論の先頭に立って与党入りしそうな勢いになっている。かつて公明党が自民党に歩み寄って連立政権を安定化させたのと同じようなにおいを個人的には感じる。
韓国では,ユンソンヨル大統領が弾劾され,保守系与党「国民の力」のハン代表が辞意を表明した。革新系最大野党「共に民主党」のイ代表が取って代わる可能性が出てきた。
保守・中道という安定的な政権から,革新・右派的な主に自国中心政権に,西側諸国が大きく転換しつつあるように思える。何となく,大国それぞれが勝手に利益追求をして,そこに個別の秘密協定ができて,米中ロ印+独仏北という大国中心の政治経済圏ができて,EUが崩壊,中東も大国支配,アジアは属国化,というかつての植民地時代のような様相になるように筆者には思える。
そこで何の手も打てないのが日本である。本来なら,エネルギー(水素),食糧(陸上養殖,植物工場)の分野で世界のリーダーとして中立で独立して世界を引っ張っていけるはずなのに,いつの間にか内政ばかりが話題となっていて,地球環境に対する議論がまったく聞こえなくなってしまった。強力なリーダーシップを国内で発揮できないので,野党がこれまで主張してきた細かい政策に対して妥協するのに時間ばかり掛かっている。このままだと,税収が減って,年金制度も健保制度も教育,介護,そして防衛にさえ予算が回せなくなり,さらに弱体化が進むように見える。エネルギー政策ですら,再び原発を正当化するような発表をしている(原発最大限に活用、依存低減の方針撤回-エネルギー基本計画素案 - Bloomberg 2024/12/17)。
世界が再び,国ではない組織によるテロの標的になるような懸念を筆者は感じている。アメリカ国内でさえ,銃の発砲事件が後を絶たない。トランプ氏自身もすでに標的とされた。中国国内での刺殺事件,そして日本での無差別殺傷事件など,格差社会での行き場をなくした庶民の精神構造が再び退行しているのではないかと思える。これが,SNSという形で一般民衆を扇動し,いわばソフトテロに発展しつつある。さらにバーチャルな世界での仮想通貨による搾取やサイバーテロなど,国という組織を越えた無法な世の中になろうとしているように見える。
地球環境の悪化によるデッドエンドが,2026年だという説や2030年だという説まで現れている。せっかく2000年の節目で「2045年までに解決」という合意ができたはずが,もはや「後戻りできない」段階が目の前に来てしまった。
かつてAI(人工知能)研究で先頭に立っていた日本。かつて量子コンピュータの研究で先頭に立っていた日本。この2つをきちんと組み合わせて,今,世界は何をすべきか,という答えを出せるシステムを構築できるのが,日本の研究者・技術者ではないか。全部googleに持って行かれてしまうのか。
筆者としてはおそらく失敗に終わると考えている関西万博(2025年日本国際博覧会=EXPO 2025 大阪・関西万博,2025.4.13~10.13)だが,逆に日本からのメッセージ発信のチャンスに変えられるかもしれない。水素製造,水素発電,陸上養殖,植物工場,そして「富岳」の次のスーパーコンピュータなどの設備を半年かけて作り上げ,「これをお手本にして」というメッセージを世界に発信できるのではないか。そんな構想を,トヨタ自動車の豊田章夫氏や,ソフトバンクの孫正義氏,楽天の三木谷浩史氏らが実現してほしい。これもまた,筆者の夢想に終わるのだろうか。