jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「健康トレース」を提案--ワクチン接種履歴をマイナンバーと紐付けて管理し,ビッグデータとして分析する必要性

マイナンバーに基づいて、COVID-19対応ワクチン接種やCOVID-19コロナウイルス感染とその療養情報を管理することを提案している マイナンバーと「陽性者トレース」「ワクチン接種」のリンク管理を改めて要望 - jeyseni's diary 2021/9/10。もともと、健康保険証をマイナンバーカードに組み込むという構想があるわけだから、データベース上で管理することは簡単だし、すでにヒモづいているのかもしれない。

 健康保険も,正直言って不公平感がある。同じ治療を受けても,国民健康保険と被用者保険では,そもそもの保険金額も都度負担額も前者が多い。後者は企業が半分負担するからという理屈だが,それなら都度負担額は同額であるべきだと思うのだが,不思議な制度である。この際,マイナンバーに基づいて国民を一様に管理してはどうかと考える。非健康者の医療費負担を健康者がするというのも,おかしな話である。しかもその非健康の原因が,ぜいたく食や大量飲酒,タバコなど,そもそも非健康な習慣から起きているのだから,その治療は自己負担すべきという理屈は十分成り立つはずなのだが。

 それはともかく,生まれてからのワクチン接種記録や病歴など,きちんとトレースする仕組みがどこにもないことが,不安である。今回のCOVID-19により,ワクチン接種履歴をきちんと管理することの重要性は明らかである。3度目の接種をするのかどうか,あるいは毎年すべきなのかどうか,などについても,これまでのような無作為なサンプルデータ管理では証明できない問題になっている。つまり,すべてのデータをビッグデータとして解析・分析しなければ,関係性は出てこない時代だと思われるのである。

 おそらく現在はまだ,医者は「病歴データ」には関心はあるが,「健康データ」には関心がほとんどないのではないか。健康を管理しトレースすることで,COVID-19のような感染症の拡散防止も可能になる。現実問題としての医療逼迫の緩和(病床追加,病状のオンライン管理など)はもちろん大至急進める必要があるが,「健康トレース」も大至急進める必要があると考える。デジタル庁がようやく活動を始めたはずの今月2021年9月だが,有識者紹介のセミナーばかりで具体的に何一つ動いていない。この半年間,いったい何を準備していたというのだろうか デジタル改革は,「省庁ができてから」動くんでしょうか。 - jeyseni's diary 2021/5/12。やることは山のようにあるのだ。これを実行して社会システムを変えるのが,DX(デジタル・トランスフォーメーション)の1つではないのか。

 デジタル庁に,おかしな考え方を持つ人材は要らない。むしろAIが運営すればいいのではないかとさえ思ったりする。マイナンバーデータを基に国民全体の声を聞き,意思決定のための施策を提案できるような仕組みがほしい。官僚や政治家,金持ち,権力者が利益を独占する現在の世の中を変革できる仕組みがほしい。

 

ソーシャルディスタンシング再考

COVID-19コロナウイルスの感染対策として、マスク、手洗い、換気とともに重要なのが、ソーシャルディスタンシングである。デルタ株の蔓延以降、マイクロ飛沫による感染拡大が最大の問題になっている。換気は一番大切だが、その次にできることとしてのソーシャルディスタンシングについて、もう一度その意義を考察してみる。

 そもそも、相手と距離を取るのは、生物としては基本的な本能である。草原で草を食べているトムソンガゼルと、そこから10m先にライオンがいるという想定でも、トムソンガゼルはライオンの攻撃から逃れることができる。したがって、このソーシャルディスタンシングの中に入らないように常に距離を取るように移動する。食事に集中し過ぎて、この距離の中にライオンが入ってしまうと、後はトムソンガゼルとライオンの動き始めのタイミングと双方の脚の速さ、ステップの的確さ、周囲の障害物などの条件によって勝者が決まる。負けた方は死が待っている。

 COVID-19感染対策としてのソーシャルディスタンシングも基本的な考え方は同じである。そして、相手によって距離がある程度異なる点も同じである。排気量の大きな大柄な男性やジョギングしている人、マスクの付け方のいい加減な人、ベチャベチャ話し続けているひとたちのからは、より長い距離を置くべきである。

 そして、COVID-19の厄介なところは、このソーシャルディスタンシングの取りミスが「死」に繋がる可能性があることである。また、トムソンガゼルのように犠牲者になるのと同時に、陽性者はライオンのようにスプレッダーになる確率が高い。意図しなくても、感染拡大に荷担してしまう。ライオンというより、ゾンピに近い。

 生き物が持つ本能によるソーシャルディスタンシングに加えて、ヒトの知性によるソーシャルディスタンシングも必要である。なにしろ、陽性の可能性のある人たちが意図的にさえ接近してくるのがヒトは社会だからだ。この危機からは、理性を使って意図的に距離を置く必要がある。なんとかこのソーシャルディスタンシングを取らない、あるいは意図的に近づいてくる人たちを排除できないものだろうか。

 

共通部門,管理部門がテレワークすべし

企業には,さまざまな部門がある。筆者は1つの成果物に対して企画・制作・進行管理から一部営業,Web制作まで一貫して手掛けているので,社内の人に仕事を依頼するのは,本格的な営業推進と,経理,システム管理,そして出退勤などの総務関連の業務である。

 フェイス・ツー・フェイスの交渉が必要な営業活動は,出かけていく必要があるが,その他の自分の業務は基本的にテレワークが可能である。これまでも,パソコン1台があれば出張先であろうが海外であろうが喫茶店であろうが,また休日や夜中であっても,仕事を進めてきた。必要なハードウエア,ソフトウエア,通信環境などは,自分で勉強し,自分で費用負担して,自分が都合のいい方法で構築してきた。システムの不具合に対応するためのバックアップ,コンピュータウイルスへの防御システム,そして情報漏えいを防ぐための暗号化処理やロック処理なども,自分で勉強して導入してきた。

 世の中には,万全のセキュリティーシステムやテレワークサポートシステムがある。導入コストや維持コストは当然のことながらかかる。おそらくこういう市販のシステムは,完全であるがゆえにガチガチに管理され,融通が効かない仕組みなのだろうと想像する。しかし,その流儀さえ身につければ,頭を使うほどのことはない。ただ費用を基本的には企業側が支払う必要がある,というだけである。

 テレワークをしない企業は,経営者のITリテラシーが低いのと同時に,社員のITリテラシーも低いことが原因で,テレワークの導入を進めない。いや,導入するかどうかの検討もしない。テレワーク導入に対する追加コストと,導入によるメリット・デメリットを計算して,「効果がない」「コスト増になる」と否定的になる。

 当然のことながら,正しいシステムを導入するのにコストは必要である。一方,テレワークを導入することによるコストメリットを評価・計算する基準は極めて曖昧であり,「目に見える効果が分からないから導入しない」という判断になりがちである。

 「テレワーク」ではなく「テレコンダクト」 - jeyseni's diary 2021/8/26 と書いた。要は,社員にいくらテレワークしろと言っても,部長や社長がリアルに出社していては,テレワークにならないという話である。部長が出ているから,部下の自分が家で仕事をしていていい訳がない,と勝手に忖度して出社してしまう。「まず隗より始めよ」というのは,リーダーに対して言いたいことである。

 もう1つ厄介なのが,共通部門,管理部門の人間である。人事情報や経理データ,顧客情報,マイナンバー情報などの個人データを管理するという理由で,社外からリモートで仕事をする,という感覚がほとんどない。現在の共通部門の仕事ぶりを見ていると,確かにパソコンで仕事をしているのだが,専用のソフト(経理,データベース)以外はExcelとWord,そしてメールソフトで仕事をしている。

 「自分の仕事は会社の中でなければできない」と頭から思っているので,テレワークなど自分たちには関係ないと思っている。しかし,すでに経理も総務もアウトソーシングできる社会情勢になっている現在,わざわざ出社して共通部門業務を遂行する社員は要らないとまで,企業側は考えなければならない。当然,アウトソーシングする以上,守秘義務契約は厳格に行われるので,むしろテレワークで情報漏えいが起きる可能性のある社員よりは,アウトソーシングした方が安全性を担保できている可能性が高い。

 単純に,自宅に個室を指定し,オフィスの端末をリモートアクセスできる仕組みを作れば,自宅にいながら共通部門の業務はできる。会議もオンラインですればいいし,メールも電話も使える。個室がなければ,防音ボックスを準備すればいい。

 経理関係の処理は,オンラインで銀行での取引ができれば実現できる。稟議の必要な書類は,電子回覧システムを入れれば実現できる。

 何でもやろうと思えばできる時代である。そのシステムを導入するコストと,自分の人件費,交通費の削減効果と,可能な時間帯に業務することによる業務効率の向上効果を算定すれば,ほぼペイするはずである。共通部門の仕事は,ほぼ定形業務だからである。

 管理部門とともに,共通部門をテレワークにして,外部から操作できる環境を作り,さらにこれらの部門のITリテラシーの再教育,ないしアウトソーシングでの取り換えを図らなければ,次の時代のグローバル経営はできない。

COVID-19 in 東京オリパラ2020を総括する

2021年に,1年遅れで開催された東京オリンピックパラリンピック2020におけるCOVID-19について総括してみる。

 東京オリンピック2020。期間は,2021/7/23~2021/8/8の17日。参加国数206,選手数11,092人。ボランティアは,のべ51,672人だった。
 東京パラリンピック2020。期間は,2021/8/24~2021/9/5の13日。参加国数161,選手数4,403人。ボランティアは,のべ24,514人だった。

 COVID-19関連の数字を見てみよう。

 期間中の,選手・関係者の感染確認者数は,東京オリンピック2020で547人(のべPCR検査は約60万回),パラリンピックで316人(のべ検査数は99万3268回)。期間中に来日した選手・関係者は,空港検疫通過数で54,214人で,そのうち空港でのPCR検査での感染確認者は数は54人だった。

 陽性率として発表されているのは,これらの数字を使って,東京オリンピックが0.1%,パラリンピックが0.03%,空港検疫が0.1%となっていた。

 しかし,陽性率の計算の母数が異なっているのが気になる。通常の市内では,PCR検査数と検体数はほぼイコールである。つまり,1000人を検査して10人が陽性と確認されれば,陽性率は1%である。空港検疫での0.1%の場合の母数は,入国した人の数とほぼイコールと言える。しかし,開催期間中の陽性率の母数は検体数であり,1選手が期間中,10回は検査を受けている。単純に選手数で割ると,オリンピックの場合は4.9%,パラリンピックの場合は7.2%という割合になる。10万人当たりでいうと,4,931人と7,177人という高い数字になる。東京でも1週間の感染確認者数は,10万人当たり100人未満(93人),日本全体で70人。オリパラの開催期間をそれぞれ2週間とすると,この2倍の数字なので,それでも186人と140人。桁が違う。

 やはり,オリパラ期間中の選手・関係者のCOVID-19感染率は,日本の市中感染よりも高かったといえるのではないだろうか。選手同士,選手と関係者の距離は,市中感染よりも明らかに近い。マスクなしで競技する時間も長かった。心肺も300%使って競技をしている。感染拡大リスクも大きい。

 正直,バブル方式が基本的に採用され,さらに無観客で試合が行われたことにより,日本国民との接触は限定的だった。しかし,ボランティアやデリバリーなどが選手村や会場に入る際はPCR検査を都度行っていたわけでもなく,そのルートでの感染がゼロではなかったのではないかと考える。

 「オリパラ2020における陽性率が0.1%と0.03%」という報道を聞いた際,即座に逆算して「母数が100万人というのはおかしい」と筆者は家族に話したのを覚えている。のべPCR検査数が100万回に対しての陽性率の計算は,正直言えば開催者である東京都がオリパラでのCOVID-19感染拡大は抑えられたと発表するために,数字を小さくするゴマカシだと思うのである。「新型コロナウイルス禍における東京オリパラ2020は成功」とIOCも開催者も政府も発表しているが,感染確認者がその後,国内で治療を受けたのか,競技に出ないまま帰国することになったのかなどについての報道もまったく見かけなかった。もし,陽性のまま帰国されたとすると,今度は自国での感染拡大のきっかけにならないとも限らない。

 結局,東京オリパラ2020とCOVID-19の関係は,「ウヤムヤ」のうちに「無事閉会」し,「すべてが雲散霧消」して,「なし崩し」的に終わって,だれも騒がなくなるというパターンで終わってしまったようだ。日本中には感動を残したものの,世界でどのように評価されているのか,もう一度検証する必要があると考える。

 

COVID-19死亡者ゼロにならない限り,重症病床は医療崩壊寸前の状態は変わらない

 「東京都 新型コロナ 15人死亡 1242人感染 1週間前の半数以下」(2021/9/10のNHK Online)。なぜマスコミは,いつまで経っても,1日の感染確認者数の動向と,死亡者数しか伝えないのだろうか。

 医療現場が逼迫している状況は,想像を絶する。COVID-19による死亡者は,基本的には「重症病床」で亡くなっている。重症病床の患者数は微増傾向にあり,一向に減らない。ということは,重症病床で亡くなった分,中等症病床から容態の悪い患者が重症病床に移され,人工呼吸器やECMO(人工心肺)などで治療を受けるが,その甲斐もなく,回復するよりも亡くなる方が多い。中等症病床はモニターで管理されることも多いが,重症病床は多くのスタッフが24時間態勢で治療に当たる。休みなしでの治療で医療現場は常に崩壊の危機にある。今日は死亡者が少ないとか増えたとか言っているだけでは,医療現場の逼迫度合いを伝えていることにならない。マスコミはいつこれに気づくのだろうか。

 同じように,1日の感染確認者数が「増えた減った」と一喜一憂しているが,ここで1000人の感染確認者が問題なのではなく,この8割の800人が「自宅療養」や「調整中」として医療の管理化に置かれないばかりか,この自宅療養者の数字が着実に積み上がっていることを伝えなければ意味がない。

 自宅療養者数が減っているのは,たまたま中等症病床からの退院数が,新規の自宅療養者数より多くなっているために,減っているように見えるだけである。中等症病棟の退院数が毎日数千人と意外に多いのは,抗体カクテル療法などの適用で早期に症状が軽減したという医療現場の努力によるものである。

 はっきり言わせていただこう。マスコミはバカの一つ覚えのように同じ数字だけを追っかけて一喜一憂している。今回の緊急事態宣言が9/30まで延びて,医療現場の状況を反映して解除すると言われているが,基本的にまだその基準が明らかにされていない。本ブログを読み,自宅療養者数と中等症病床の関係と,重症病床数とそこからの死亡者数をきちんと報道し,医療現場の逼迫度合いをきちんと報道していただきたい。

 いい加減に目を覚ましてほしいものである。

マイナンバーと「陽性者トレース」「ワクチン接種」のリンク管理を改めて要望

まず,タイトルの「マイナンバー」であって「マイナンバーカード」ではないことを先にお断りしておく。マイナンバーカードの発行を待っていては,すべて手遅れになるからだ。

 国は,誰がいつワクチンを接種したか,陽性になったか,入院したか,重症になったか,退院/死亡の状況はどうか,について,1億2000万人のデータをリアルタイムで管理することを提案するものである。

 ワクチン接種券で券番号と個人名はリンクしている。この後の接種日などの情報は,「ワクチン接種記録システム(VRS)」に記録されているので,これをマイナンバーと関連付ければ,国民全体のワクチン接種情報は,個人レベルで把握できる 

「VRS」のバーコード入力の不備,「V―SYS」との未連携という愚行【修正】 - jeyseni's diary 2021/7/14。

 一方で,陽性確認された後,どのように対応・入院・退院/死亡という流れが,やはり分からない - jeyseni's diary 2021/9/9 で指摘したが,各自治体はCOVID-19コロナウイルスPCR検査で陽性が確認された時点でその個人を特定している。この時点でマイナンバーと関連付けられているのかどうかで,その後の管理状況がトレースできるかどうかが決まる。

 国はこの情報を基にまず,ワクチン接種済み者かワクチン拒否者かワクチン未接種者かで個人同定し,ワクチン未接種者(つまりワクチンは希望しているが打てていない人)で年齢の高い順にピンポイントでワクチン接種を進めて,取りこぼしがないようにする必要がある。打ちたくても,予約申し込みができない人はまだ山のようにいるからである。

 そして,ワクチン拒否者(体質的に打てない人と信条的に打たない人)には,3日に1度のPCR検査をさせるようにアクションを起こさないといけない。ワクチン非接種者が次の陽性者になったり,感染拡大者(スプレッダー)になる確率が極めて高いからである。

 ここまで来ると,自分のワクチン接種状況やPCR検査受診情報を少なくとも紙の形でプリントアウトできる。QRコードも入れて,再度ワクチン接種券の配送と同じ流れで国民全体に郵送すれば,これがいわゆる「ワクチンパスポート」ないし「健康パス」ないし「ワクチン・検査パッケージ」になるのである。別にスマホアプリを作らなくても,これで十分運用できる。QRコードの読み取りシステムを公共交通機関や飲食店,イベント会場,学校などがそれぞれ使えばいいだけだからだ。

 これをさらに有効に活かすために,ここでようやく「マイナンバーカード」が登場する。紙の健康パスは擦り切れることもある。マイナンバーカードにリンクすれば,マイナンバーカードを作って持ち歩く,という習慣が ようやく付くだろう。

 正直,「○○パッケージ」の提案の中にスマホQRコードを表示してチェックする,という話があるが,QRコードは機械で読み取らせれば「ただのテキスト情報」となり,情報の流出の危険性が極めて高いという懸念がある。QRコードの中身を暗号化し,容易に読み取られないような仕組みを組み込んでほしいと思うのだが,果たしてそこまで考えてスマホアプリをリリースしてくるかどうか,極めて心配している。

 

「パッケージ」って何?

COVID-19のワクチン接種またはPCR検査陰性を証明する仕組みを,日本では専門家分科会が「ワクチン・検査パッケージ」として提案してきた。これのお手本は,フランスの「健康パスポート」だろう。皆さん「ワクチン・パスポート」の意味を取り違えてます-ただしフランスの「健康パスポート」には反対論も【追記】 - jeyseni's diary 2021/6/17。「パス・サニテール(健康パスポート)」でいいかなと思うのだが,「パッケージ」とはどういう意味なのだろうか。

 パスポートが嫌なら,「免許証」,「許可証」でもいい。英語で言えば「ライセンス」である。あるいは「通行証」なら英語で言えば「パス」である。ほかにも,「身分証明書」(アイデンディフィケーション),「証明書」(サーティフィケーション)などの言葉がある。パッケージでは,なにを意味するものか,まったく伝わらないように思える。

 パッケージといえば「包装」「包装用の箱」「ひとまとめ」という意味がある。ワクチン接種証明とPCR検査証明を“ひとまとめ”にしたからパッケージ,という意味で使ったのだろうが,複数の機能を持つものがすべて“パッケージ”ではない。どちらかというと「セット」の方が一般的ではないだろうか。

 パスポートは,ポート,つまり港(空港)を通過(パス=pass)するための通行証である。人流を制限する,つまり通過を制限するのが本来の目的だから,「パスポート」でまったく問題がないはずなのだが,なぜかこの行動制限が差別に当たるという変な解釈があって,パスポートという言葉を使わないようにしているような気がする。

 逆に,この証明書を持っている人を優遇する方がおかしい。優遇を受けるチャンスを活かせる人と活かせない人で利益差が大きいからである。たとえば「マイレージ」。同じ仕事をしているのに,飛行機で移動する仕事をする人は毎日のようにマイレージが貯まるが,事務職の人は飛行機に乗る機会もなく,恩恵を受けられない。たまに乗ったとしても,そのマイレージを活かせることもなくポイントは消えてしまう。この方が不公平なシステムの気がする。つまり,“金持ち優遇システム”である。

 ワクチンを接種することで優遇を受けられるとすると,ワクチン接種することが「良いこと」であるという不公平感を生み出す。

 現在,ワクチン接種は公費で進められているが,定期的なPCR検査も無料で受けられるシステムであることが求められる。しかし,この無料PCR検査については,いまだに一言も言及されていない。海外ではすでにワクチン接種できない人やワクチン接種を拒否している人の3日ごとのPCR検査は無料で実施することで,健康パスポートを実現している。パッケージなどというネーミングで発表する前に,このシステムを確立する必要がある。当然,そのための予算も組まなければならない。

 菅首相は,ワクチン接種がCOVID-19に勝つ決め手になる,という強い信念を持っておられた。そこは称賛すべきところなのだが,供給のドタバタで点数を下げてしまったのは残念である。省庁間の縦割り行政によりシステムの設計も運用もバラバラである。ワクチンの予約もうまくいかず,その中でワクチンの無駄が出たり,3回めのワクチンを打ってしまったり,さらにその中でワクチン接種との因果関係が疑われる死亡案件が出てきたりして,潰れていってしまった。

 パスポートが気に入らないのなら「パス」でいいだろう。フランスの「パス・サニテール」も「健康パスポート」と訳したが,「健康パス」でもいい。とにかく変な言葉を作らないでほしいものである。