筆者は,今回の新型コロナウイルスを当初はやはり他人事のように思っていた。豪華客船ダイヤモンドプリンセス号の船内で感染がどんどん広がって行き,陰性と判断された人がホテル待機2週間を経過した後に各地に帰宅し,そこからも感染が広まった。オーストラリアやアメリカ,ヨーロッパへの感染の発端も,このダイヤモンドプリンセスの乗客であると現地では報じられた。
その間も,中国との人の行き来は続き,武漢などの現地滞在者の行き来も続いた。海外への渡航,海外からの入国も,体温測定による一次検査からPCR検査で判断していただけで,無症状の感染者を捉えることはできなかった。これが,世界的な蔓延を引き起こした最初の原因である。
しかし,現在もこの無症状感染者による感染拡大が続いている。
筆者は現在,仕事での外出は週1回にしている。早朝の乗客の少ない時間帯に都内に向かい,いちおうきちんと感染対策がされた職場(体温測定,アルコール消毒,マスク常時着用,席間の透明シールド,階ごとの動線分離,ソーシャルディスタンシングを確保した休憩室)で仕事を行い,また乗客が減った20時以降の電車で帰宅している。通勤時のマスク着用,万が一の感染源接触に備える手袋の持参,そしてアルコール消毒液とアルコールウェットティッシュの持参と適時使用,頻繁な手洗いを実行している。したがって「自分は感染しない」というかなりの自信を持っていた。
しかし,道ですれ違う人,職場で交わされる会話,電車の乗客など,いったい何人の見知らぬ人と関わっているのかを考えると,その1人から感染被害を受けていない,と自信を持って言えないことに気づく。仮に自分が発症したとして,その潜伏期間とされる2週間の間に感染を受ける行動をどこかでしていたわけだが,それがどこで誰との接触だったのか,あるいは感染した場所を触ったのか,などを特定することは,もはやほとんど不可能である。
とにかく,あらゆる場面において,感染から身を守る行動を取るとともに,「もしかしたらこの2週間の間に感染したかもしれない」という意識を持つ必要がある。そして,自分が無症状の感染者になっている可能性を意識し,マスクをしないことは知らない間に他の人を殺している可能性についても意識すべきだと思う。
1日の感染者が100人を超えた,超えないなどと一喜一憂しても,これはただの数字マジックである。中途半端な行動は,結局何もしていないこととそれほど変わりはない。徹底的な行動規制をすべき段階に入っているのを感じる。