2021/1/15現在,新型コロナウイルスの世界中での感染確認者数は9000万人を超え,死亡者数も190万人を超えた。山の形を見ると,少しピークアウトしてきているように見える。ワクチン接種をためらうことなく進めている国が多く出ているからだろうか。イギリス,アメリカのワクチンを中心に,ロシアと中国は自国製のワクチンの接種を進めている。正直,鳴り物入りで開発表明してきた大阪大学と日本のベンチャー企業は,いったい何をしているのか,という気持ちになる。
イスラエルやUAEで英米製のワクチンがすでに500万人以上接種を受けて,副反応が数人,というレベルであれば,日本でも可能な限り早い段階で接種を始め,普及を急いで感染拡大を止めることが重要と思う。もうすぐ前期高齢者の仲間入りをする筆者としては,まあ人生ほとんどやりたいことは済ませている。COVID-19で死ぬよりはワクチンの副反応で苦しむ方が,医学・薬学への役に立ちそうなので,早くワクチン接種を受けたい。
というのも,日本の第三波の感染者数の増え方が異常だからである。明らかに指数関数的に急拡大している。他国がピークアウトしている中,特に先進国の中でこんな異常な増え方をしているのは日本だけである。日本のマスク習慣,手洗い習慣が世界標準として各国でも推奨され,どこの国からの中継でもみんなマスクを着用している様子が映される。過去にさんざん訝しがられたアメリカ人ですら,マスク着用している。
そのお手本にもなった日本が今,感染の急拡大で医療崩壊の危機にある,と言われても,他国の人は信じられないのではないか。モンゴロイドの自己免疫説やBCGワクチン接種による免疫説などの「ファクターX」論は,単なる仮説にすぎなかったと思われる。
国別に見ると,感染者数が最も多いアメリカ(2260万人)や,イギリス(316万人)では,まだ増加傾向にある。一方,第2位だったインドは1050万人だが,2020年9月ごろの700万人をピークに急速に減速している。
当初,感染拡大の理由が人の密集度の高さに比例するのではないかと個人的には考えていた。日本で東京,埼玉,神奈川,千葉や大阪で感染者数が増えるのはそのためではないかと予測した。人口密度の高いインドもこれが原因の一つではないかと考えたのだが,これではアメリカでの大流行の説明がつかない。
筆者の知るアメリカは,ニューヨークやボストン,サンフランシスコなどの大都会でも,街中は実にゆったりしている。まして,ニューヨークの隣のニュージャージー州やアメリカ中央の州など,広々とした芝生のある庭や隣家が見えないほどの距離があったりする。交通機関も,自家用車が中心である。オフィスもゆったりしていて,自分の机はパーティションで区切られている。大学の教室もゆったりしている。
感染拡大のスピードの差は,一つや医療保障体制だろう。国民皆保険制度のないアメリカでは,医療機関にかかるのに莫大なお金がかかる。貧富の差の大きい国なので,満足に医療を受けられずに感染して亡くなるケースが多いことが予想される。ワクチン接種を進めるのに,マクドナルドのクーポン券を配っている,という話も聞く。ワクチン接種率が全国民の20%の200万人を超えたというイスラエルも,国民皆保険制度がある。
日本の場合,PCR検査は公費負担だが,あくまでも「症状があり」「保健所でヒヤリングし」たあとでないと受けられない。つまり「保健所の審査」が必要なため,PCR検査数にボトルネックができる。現在はかなり症状が進んで,保健所の審査に合格しても,実際のPCR検査を受けられるのがその数日後,さらに入院や施設待機なども順番待ちで,東京だとここで7000人が滞留して自宅待機状態にあり,そこで容態が急変して亡くなるというケースが出始めている。これからもっと増えるに違いない。自費でPCR検査を受けることもできるが,ここで陽性になったとしても,結局また保健所に連絡し,そこで「正式にPCR検査を受け」「陽性の確認」があって,初めて新型コロナウイルスと判定され,専門医療が受けられる,はずなのだが,ここでまた7000人の滞留の列待ちに巻き込まれるのである。
国民皆保険なら,3割負担でどの医療機関でもPCR検査ないし抗原検査を受けられるようにすることがまず第一である。そのためには,インフルエンザの場合と同じように,一般窓口とPCR検査窓口を別のドアに設定し,万一のほかの人への感染を防ぐ態勢は必要である。PCR検査を実施しているのが指定の専門医療機関だけとなっており,治療に専念しなければならない医療従事者が検査業務もしなければなくなって,負担が拡大している。一般医療機関が,仕事をシェアすべき段階に入っていると思う。
同様に,以前書いたが,一般医療機関はワクチン接種業務をこれから担うことになる。そろそろ準備を始めていないと,実際にワクチン接種が始まったらまた大混乱が予想される。現在英米などで行われているように,接種後30分の経過観察のためのスペースの確保が必要である。一般医療機関でこの場所をどうやって確保できるのかと考えると,もっと別の方法を思いつく。
つまり,「選挙の投票所」のような広い場所で,しかも投票案内はがき(投票所入場整理券)と同じ仕組みで,指定場所でのワクチン接種を国あるいは自治体が管理したやり方で整然と行う必要があると考える。
すでに選挙の時に実施している全く同じ方法で,はがきを発送し,それを切り取って会場に出かけ,バーコードを読み取って電子的に確認して接種を受ける。これが最も公平で,間違いなく,短期間にワクチン接種できる方法だと考える。接種対象も,18歳以上の成人ということで確定でき,ワクチンの必要数も把握できる。高校生以下は,とりあえずワクチン接種から外すということでいいだろう。一般の医療機関からその日だけ,会場でワクチン接種業務をしてもらえればいい。「期日前投票」に相当する「期日前接種」は,市役所で行えばいい。
2020年秋のインフルエンザワクチン接種は,まず65歳以上が10/29までに接種でき,一般の人はそれ以降だった。それでも1週間でワクチンが底を突いた。これも,結局行政が何のコントロールもしなかったからではないだろうか。一般は3900円を支払っての接種だが,これも「投票管理」しておけば後日引き落としなどで徴収できるのではないか。
現在,マイナンバーカードと引き落とし口座のリンクが検討されている。そもそもマイナンバーカードは,個人データを管理しないことが前提だったはずだが,すでにこの基本が崩れようとしている。しかし,これはリンクさせていいのではないか。実際,確定申告では,引き落とし口座とすでにリンクしている。自分のプライバシーはすでにお役所が握っている,と常に感じている。必要があればリンクしていい。ただ,マイナポータルのように,「鼻先にニンジン」を吊るして国民を呼び込むようなやり方は,感じが悪い。そして,過去の年金機構や日本郵便のような,情報管理のずさんさ,情報セキュリティの甘さは,二度と繰り返してもらいたくない。「お役所仕事はお上の仕事」みたいな姿勢が,民間への丸投げ委託のような非常識を生んでいる。もっと自己研鑽して頭を使って工夫してほしい。