COVID-19の新しい変異株のオミクロン株の拡大勢いについては,いくつかの考え方がある。感染力は10倍強いが,重症化リスクは10%程度にとどまっている。
オミクロン株自身の性格なのか,それともワクチン接種の効果によるものか,さらに重症化リスクを下げる各種の治療法の適用によるものか,国によっても事情が違うから厄介である。
現在の各国の感染者数と状況,ワクチン接種率を一部まとめてみた。
1日の感染者数は,NHKのデータサイトでの米ジョンズ・ホプキンス大学の数字である。中国の数字のみ,WHOの発表数で示している。ワクチン接種率もNHKのデータサイトから高い順に9ヶ国と,南アフリカを表している。接種率の数字は,簡易的に100人あたりの接種数を2で割って2回接種率として算出した。南アフリカの数字は,2回接種率として発表されたものである。
ざっと見ると,感染者数が急増しているのは,韓国,イギリス,ドイツ,イタリアという,ワクチン接種率の高い国である。また,接種率75%のアメリカでも急増している。日本も微増傾向が出ている。
一方,2021年11月に南アフリカが新変異株の存在を発表してから1ヵ月。南アフリカは,感染拡大がピークアウトしたと発表した。ワクチン接種率は30%以下と低く,人流抑制もされていない。死者も出ていない。
こうすると,ワクチン接種率が80%で止まっている日本の状況が注目される。この段階で日本が感染拡大を抑えられれば,これが感染拡大の世界的な指標となるはずである。
緊急事態宣言が10月末で解除されてから,人流抑制はない。2021/11/25の段階で海外からの渡航規制はしたが,現時点で1日300人を超える感染者が確認されており,市中感染と思われる事例も,大阪と京都,そして東京でも確認されている。
海外からの渡航規制をさらに強化しているが,そもそも各国を出国時のPCR検査が陰性,日本入国時の検査でも陰性で,入国後に発症しているケースが多い。PCR検査の網をくぐりぬける厄介者なのかもしれない。
とすると,イギリスやアメリカと同様,これから一気に感染拡大が起きる可能性が残されている。
なにしろ,まず無症状で感染者本人があまり意識をしていないので,PCR検査をいい加減にする可能性がある。医療従事者が鼻腔やノド粘膜を綿棒でこすって採取する方法より簡易な唾液検査が主流になっている今,いい加減な唾液出しによって正確な検査ができていない可能性がある。
あるいは,粘膜採取して検査をしても,無症状状態のときにはウイルスの増殖が少なく,医療従事者が採取しても検体が取れていない可能性もある。
実際,日本でももっと以前から感染者がいたのではないか,という説もある。イギリスでも,気が付いたら数百人単位で感染者が出ていたからである。南アフリカとのリンクは日本はイギリスよりは少ないが,香港との間のリンクは強い。南アフリカ─香港─日本という経路での感染がいちばん怪しい。
入国制限はバカげているという国際政治学者がいるが、それは日本という国土のメリットを無視した一般論である。経済評論家ならともかく、政治学者の言うことではないだろう。
せっかく、新規感染確認者ほぼゼロできた3ヶ月が無駄になってしまうのだろうか。あとは国民一人ひとりの心掛け次第なのだが、これに関しては、日本人の最もダメなところである。
イギリスを中心に,3回目のブースター接種を加速する動きが出てきた。これによる効果も確認できるようになるとありがたい。筆者としても早くブースター接種をしたいと考えている。