jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

ワクチン接種のクーポン券に思う自由社会の良し悪し

夕べ,おかしな夢を見た。トイレを使おうと列に並んだところ,「お客様はクーポン券をお持ちでないので,利用いただけません」と言われた(実際はもっと荒っぽい言われ方をされて,ビックリして目を覚ました)。

 戦時中は,食糧の配給に配給券が必要だった(そうだ)。限られたリソースを公平に分け合うためには,管理された「券」を配布することが効果的である。

 クーポン券と言えば,新型コロナウイルス対応ワクチンを4月から高齢者向けに接種するのに,クーポン券が発行されるという。発行されて予約開始日には,予約受付のコールセンターにまた電話がつながらない状態になったり,予約受付システムがパンクしたりすることが十分に予想できる。一日でも早く接種を受けたいと思っている筆者などは,たぶん初日に予約をしようとするだろう。

 より高齢者の方にとっては,電話をかけることもパソコンで予約システムに入ることも難しい作業であったり気が引けたりする作業である。このあたりの心情も察して,「後期高齢者優先枠」とか,「事前優先指定枠」とかを作っていただけると,物理的な混乱および精神的な混乱の度合いが減ると考える。ここでシステムダウンや高齢者無視などの状況が発生すると,またマスコミのかっこうのツッコミネタになるからである。

 ワクチン接種は「選挙投票方式」で行政が管理して実施してほしい - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/1/15。クーポン券の発行は,投票用紙の発行と同じ原理であり,結果として自治体が管理して進めることになるので,この点では以前の提案は実現しつつある。選挙の投票会場のような学校の体育館を使うことも検討されており,掛かりつけ診療所での接種との併用方式なども結構だと思うのだが,問題は「予約」をする必要があることである。

 たとえば電話で受け付けることを考えると,コールセンターのオペレーターや医院の受付の人が,希望日を聞いて,空いている時間帯を検索し,登録して返事をする,という作業を行うことになる。早い時期に予約の電話をしてくる人は「早く接種したい」と思っているから,なるべく早い時期を希望する。その日の予定はあっと言う間に埋まってしまい,次の希望日を聞いたりしている間に,どんどん枠が埋まっていってしまう。おそらく,1人の人の予約日時を確定させるのに,10分はかかることが予想される。1人で処理できるのは1時間に6人。1日10時間受付をしてもたった60人である。6,000人を処理するには,オペレーター100人が担当しなければならない。自治体や医院にこのような人員をかかえる余裕はあるのだろうか。

 一方,オペレーターが対応しているあいだ,電話はつながらない状態になっている。話中で何度も掛けなおしが行われ,たまたま電話を切った瞬間に電話を掛けた人がつながる。先ほどまでつながらない状態にいた人は,また次のオペレーターの空きが来るまで掛けなおしをし続けることになる。

 専門のコールセンターの受付システムは,相手に保留状態を知らせつつ,掛けられた順番につないでいけるような仕組みになっているため,少し待っていれば順番につながる。複数のオペレーターによって処理されており,オペレーターが終話したら次はそこにつながる仕組みになっている。切れ目なく,しかも待ち時間を最小限にする仕組みを構築している。

 しかし,自治体の受付電話や保健所の受付電話などは,おそらくコールセンターのような受電の仕組みになっていないので,受付側も一日中対応しているが,掛ける側は何十分の間,掛け直してもつながらない,という状況が発生する。2020年秋口からの第三波において保健所に電話がつながらない,という状態はこうして起きていると判断している。

 ワクチン接種を受けられるのは,住んでいる地元の接種場所か掛かりつけ医ということになっている。65歳以上の高齢者と言っても,筆者のようにとりあえず現役で働いている人も多いので,テレワークをしていない人にとっては平日の接種は難しくなる。すると土日に集中することも予想される。夜間受診は医療関係者には厳しくなるので,これも選択肢として難しい。まして,65歳以下のバリバリ現役世代にとって,仕事を数時間でも休むことは許されない。この辺りになると,クーポン券+予約という仕組みはうまくいかないのではないかと心配である。

 前言を改めるのは心苦しいが,ここは「健康保険制度」の登録情報をもとに対応することも視野に入れる必要がありそうだ。生活している自治体の登録情報ではなく,就業先,就学先の情報を元に,たとえば東京で働いている人は,その属する企業の健康診断の枠組を使って都内でワクチン接種が受けられるようにすると,就業先の近くで,最小限の業務への影響で接種が可能になると思われる。

 この場合は,健保情報と自治体での接種情報のリンクが必要になるので,これもまた現実的ではない。マイナンバーカードと健康保険情報のリンクもまだ道半ばなので間に合わない。

 国民のワクチン接種率が最も高いイラクは,国民皆保険の情報管理のもとで整然と接種指示が行われているようだ。一方,中国のように国民の情報を完全掌握している国では,PCR検査やワクチン接種はもはや命令であり,接種しなければ仕事もできないような管理が取られている。

 日本でも,この新型コロナウイルス対応ワクチンの接種にはさまざまな管理方式が試されており,選択の自由もある程度存在する。この自由によってストレスのない生活が日々送れる一方,「国民一丸」「足並みを揃えて」とは行かず,さまざまな抜け道ができてしまって,終息が長引き,ワクチンの効果も限定的になり,経済の立ち直りが遅れる。さらに犯罪者が付け入る余地を与えてしまう。「範を示すべき政治家」の自粛破りなども,“犯罪”の範疇である。

 マスク着用も「ラスト10%」が励行しない。飲食店利用や会食会話の制限も「ラスト10%」が実行しない。これによって,実効再生産率が1をなかなか下がらない。ワクチン接種に至っては,30%が接種を希望しないという。集団免疫の考え方の中で,この数値はウイルス拡散防止に効果があるのかどうか,これもぜひシミュレーションしていただきたい。集団免疫も「ラスト10%」で破綻するとなれば,この接種を希望しない人に対しての別の取り組みも検討しなければならないだろう。