またまた,バカげた和製英語の登場と思われる。マウンティング。「カタカナの意味としては上から目線で自分が優位であることをアピールしてくること、一方的に自慢をしてくることを指している」といった内容である。
筆者もうかつにも,これまでのブログで6回もこの言葉を使用している。「mount」という英単語からカタカナの「マウンティング」まで,うまくまとめられている文章が
mount(マウント)とmounting(マウンティング)の意味と使い方 | ネイティブと英語について話したこと にあった。ここにはHe is mounting her.という例文に,当方がイメージする言葉の意味が書かれている。つまり,性交をイメージさせる関係である。オスがメスの上に乗って性交する意味で,パワーハラスメントの意味合いを含むセクシャルハラスメントな関係をイメージしていた。
動物の世界では,オスがメスの上に乗っかって性交するのは当たり前である。また,ニホンザル,チンパンジー,ゴリラなどの類人猿は,オス同士の力関係を表現するのに,強いオスが弱いオスの上に乗る行動がある。英語圏のサルといえばチンパンジーだが,この意味でのmountingという言葉はないらしい。「乗馬する=mount the horse」の意味しかないようだ。
日本で使われて定着したのが,2014年に出版された『女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態』(瀧波 ユカリ/犬山 紙子・著 ,筑摩書房)と,テレビドラマ『ファーストクラス』,そして「2014ユーキャン新語・流行語大賞」に「マウンティング(女子)」がノミネートされたことだという。NHKまでこの言葉を使った番組を作っており,すっかり定着したようだが,正直言えば,あまりお行儀のいい言葉ではないと思う。ハラスメントの要素を含んでいる。「会話のマナー講座」のような軽い扱いをしてはならないと思うのである。
なんだか,どっちが上だとか,どっちが偉いだとか,そういう価値観で人と接して傷ついている人が多いようだ。同担(応援する相手が同じ)で組める(歓迎)か組めない(拒否)か,など,SNSのプロフィール内容で相手を評価するなども普通に行われているらしいと聞いて,正直,寂しい世の中だなと思ったりする。
筆者は,とにかく他人と同じことをするのが嫌いで,常に何か新しいことを目指してきたので,他人を評価することはなかったし,他人をうらやむこともなかった。別に群れることもないし,忖度することもない。自分の道を行けばいいと思っているからだ。
そんな会話講座などが必要な情けない若者が多いのかなと思ったりする。サルの場合は本当に力が強いサルが上に乗ろうとするが,人間の場合は,自分の立場があやふやなヤツほど上に立とうとする。それをもってマウンティングというのなら,それは詭弁というものである。本当に上に立つ者は,言葉を弄せずにチームをまとめるものである。言葉を使う,あるいは力づくで支配しようとするのは,パワーハラスメントであり,男女の間であればセクシャルハラスメントである。
人と人の間に,こんな会話講座など要らない。付け焼き刃のようなマナーが,その後の人生で役立つはずはない。いずれは化けの皮が剥がれる。