東京オリンピック2020に間に合わせるために旧国立競技場を完全解体して作り直した新国立競技場。当初のコンペのデザインが建設費がかかることでキャンセルされ,隈研吾デザインが採用された。国立競技場のデザインを変更した理由は?便器みたいでダサい? (outidesigoto.com) に裏話も載っている。
SDGs(持続可能な開発目標)の視点でみると,鉄骨と木材の両方の良さを生かして全体を軽量化し,木材の柔軟性を利用して地震などへの耐久性は維持した,というのがコンセプトの一つになっている。実際,鉄骨構造や鉄筋コンクリート構造の耐久性は50年。メンテナンスを繰り返しても100年である。一方,ヒノキづくりの寺院は,1000年以上も風雪に耐えてきた。メンテナンスも繰り返されてきたが,完全解体することもなく,部品を交換しながらその姿を後世に伝えている。新国立競技場は50年後にまた建て直すのだろうか。
代々木体育館は,元の姿を残したまま,耐震補強をしたり,天井の落下を防ぐ工夫を加えたりしたそうだ。しかし東京直下型地震には耐えられないのではないかと想像する。
新国立競技場の最終デザインでは,開閉式の屋根は付けなかった。開閉しなくても屋根付き競技場にすることもなかった。すべて予算の関係だという。
今回のオリンピックでは,開会式の途中で雨が降り,パフォーマーが雨に濡れる場面があった。また閉会式は台風10号の接近で午前中は豪雨だったが,夜の閉会式は雨から逃れられた。
工期が間に合わなかったこともあるだろうが,この時代に屋根なし競技場の存在意義には疑問も残る。後付が可能かどうかは不明だが,たとえば両側にレールを敷き,蛇腹に畳んでいたシート状の屋根を両側から伸ばして開閉式にするという工事なら,比較的安価に後付できるのではないかと思われる。多目的な会場とするための工夫が必要だろう。作ってしまったものはある意味で仕方がない。無駄にしないように,生かす方法を考えるべきだろう。東京オリンピック2020が最終目標だったということでは,話にならない。