jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「情報」は大学入試共通テストに必要か--ITに必要なのは「企画力」「想像力」

筆者は,大学に入って初めてコンピュータに接した。最初は大学の大型コンピュータ。プログラム言語は,理工系では一般的なFORTRANだった。教員も,TSSというシステムで大型コンピュータの端末を使用。一部のレポート用にNECのパソコンが教員室にはあったが,学生は触ることも覗くこともなかった。

 個人用にはポケットコンピュータという,関数電卓にプログラミング機能が加わったものが購入できたが,価格は結構高く,筆者としてのニーズはなかった。ただFORTRANに似たBASIC言語でプログラミングできることは興味を持っていた。

 社会人になって,入社した企業の親会社にパソコンクラブというものがあったので,参加してみた。シャープのグリーンコンピュータ「Z80」というパソコンが使われていた。OSの起動もフロッピーディスク,データの記録もフロッピーディスク,ディスプレイは黒地に緑の単色キャラクターディスプレイだった。しばらく通ったが,別のビルだったので自然に遠のいていった。ただBASIC言語でいろいろプログラムできるのは面白いと感じ,大学時代には購入しなかったポケットコンピュータのさらに廉価モデルを購入した。こちらはOSは内蔵していたが,データの記録はマイクロテープだった。それでも夢中になってプログラムした。最大のプログラムは「インベーダーゲーム」。まあ,1行しかないディスプレイのどこかにインベーダーとなる文字を表示し,これを撃ち落とすのにキーを叩く,というだけのプログラムだったが,結構面白かった。

 時代は変わって,現在は幼児の時代からスマートフォンを触れる環境になった。ITの人材が圧倒的に少ない日本で,プログラミングの能力を育てようと「情報」が2020年に小学校,2021年に中学,2022年に高校で始まる。

 2025年の大学入試から,「情報」が加わるという発表があった。これに対して,週2コマしかない授業の科目が共通テストの必須科目になるというのはどうか,という意見もある。

 筆者としては,「情報」を大学入試共通テストに加えるのは,いかがなものか,という感想を持った。というのも,筆者の経験したプログラミングのプロセスと,現在教えられている「情報」のプロセスが大きく違うような気がするからである。

 「情報」は,論理的な思考プロセスで問題解決ができることを学ぶのが本質であり,ITリテラシーを教えるだけではないと思うのだが,入試となると結局はITリテラシーの暗記に頼った内容になることが考えられ,本質とかけ離れた人材がいい点を取るという結果になるのではないかと思われるからである。

 同様に,「生物」も特にバイオ関連が格段に多くなって,記憶に頼る内容が増えており,入試では敬遠されている。

 筆者は,医療や介護を目指す人には「生物」を必須科目として高校生ぐらいから専門コースを設けるべきだと主張している。同様に,ITを目指す人には「情報」を必須科目として高校から専門コースを設けるべきだと思うのである。

 これは現時点では,工業高校の役割のように思われる。しかし工業高校,専門学校の場合,その上位教育機関が準備されていない。

 正直言って,「情報」で必要なのは「企画力」「想像力」である。どういう仕組みを作ると,世の中で役立つか,という企画さえできれば,これを実現するソフトはもはやAIが作ってしまえる可能性がある。こまごまとしたプログラミング言語の習得は必要なくなるのではないかと思うのである。したがって,「情報」で点数を取れる生徒の入学を進めても,IT振興は一向に進まないと思えるのである。