jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

ムダ死だった安倍元首相--日本では政治が機能していない。エネルギー,食糧問題でリードできる技術に投資すべき

2022/7/7に安倍晋三・元首相が凶弾に倒れて亡くなった。人の死をどう語るかで語った者の素養も知られてしまうのであまり書きたくもないのだが,政治家として撃たれたのではなく,個人的な恨みの妄想で撃たれたような状況に,筆者は残念さを感じているところである。

 たまたま,衆人の目の前に出てくる選挙応援という機会を利用され,政治と関係のない理由で撃たれた。仮に犯人がアンチ自民党,アンチ安倍という政治思想によって犯行に及んだのなら,撃たれた側も納得がいくところがあるが,安倍氏の政治思想と関係のない理由で撃たれたことに,本人も納得いかないことだろう。しかし,ほかに被害者がゼロだったことは奇跡かもしれない。それほど,安倍氏の周りががら空きで,狙った通りの犯行が行われてしまった。

 かつての二・二六事件や,海外の政治家の暗殺事件は,いずれも行政の長の立場から引きずり下ろす方法の1つとして銃撃による暗殺が行われた。今の政治に対する不満からである。個人的な理由は基本的になく,今の政治の流れを変えることが目的である。議論という民主的な方法ではない点は論外だが,そんなことを言えば国会での殴り合いや野球場での乱闘騒ぎなど,暴力に訴える場面は他にも見られる。これも許されるものではないが,動物的な本能の部分なので仕方がないかもしれない。むしろ,動物の方が,相手を殺すところまで進まず,領地から追い出したところで平和が戻ってくるのに対し,人間は相手の命まで奪うための道具を発明してしまうという愚かな面がある。

 今回の暗殺が,個人の家庭の経済的破綻が原因で,そこに宗教団体が絡んでいる,という安倍氏が進めていた政治とはまったく関係のない理由で行われたことは,そこらの乱痴気事件と変わりのない実に低俗な事件であり,凶弾に倒れた安倍氏もまさかそんな理由で自分が命を落とすなど考えてもいなかったろう。

 参議院選挙の結果は,自民・公明党が予定以上の圧勝。維新の会と立民党の逆転,共産党の敗退,そして泡沫政党が2議席も獲得,という結果になった。政策野党を標榜した立憲民主党が敗れる結果となり,諸外国のような健全な二大政党による活発な政策議論という構図はまた遠のいてしまった。

 筆者宅では,家族全員が選挙権を持つ年齢に達した。息子が選挙公報を熱心に読んでいたのには驚いた。「なんだか,自分の成果の数字ばかり並べる候補はどうかなと思う」などと分析していた。若い人は,政党への関心よりも「政策」への関心が高いように思った。

 筆者の時代は,戦後の経済が復興して日本経済が高度成長期にあり,収入が増えることで国の税収も増え,ますます豊かになる,という好循環が続いていたため,基本的に今の政治のやり方は正しく,安定的であることが望ましいと思っていた節がある。「平和」であることが世界の成長の決め手であり,戦争をしない,軍隊を持たない,そして世界に富を分配する,という平和外交が機能していた。もちろんその陰に日米安全保障条約という屈辱的な条約でアメリカの軍事の傘の下にあるという立場は黙認してきたところはある。アメリカが,政治力でも軍事力でも,世界のリーダーだという認識があったからである。

 しかし,アメリカとソ連の2大国以外に核兵器の開発能力ができた辺りから,世界の力学的なバランスが壊れていった。原子力が,クリーンエネルギーの最先端にいたことが,核拡散,核兵器開発の暴走を止められなかった。もはや,アメリカの核は抑止力ではなくなり,世界の警察としての責務も回避するようになった。

 これまで,アメリカの軍事力に守られてきた日本だが,すでに北朝鮮のミサイル開発の練習台にされており,いつ攻撃をされてもおかしくない状況で,アメリカの軍事力はまったく期待できないことがウクライナ紛争で明らかになった。NATOとロシアの対立の構図でも,アメリカ軍を現地に派遣できず,武器供与にとどまっているからである。同じ状況が日本で起きても,アメリカの兵士は戦ってくれない。ただ武器が届くだけで,だれもそれを使うことができない。自衛隊ですら。

 ウクライナ情勢が2022年2月に始まってもうすぐ半年になろうとしているが,日本はアメリカやNATO,G7のメンバーの1つとして「侵攻に反対」と言っているだけである。平和的に解決するにはどうしたらいいかは,話し合いしかないが,侵攻開始後にプーチン大統領と話をした政治家が誰もいない。岸田首相の外交力が残念だった件--この際,安倍,森,だれでもいいから交渉すべき - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/4/16。安倍氏がこの大役を果たせば,また違った展開があったかもしれないと思うと,非常に残念である。そして,「プーチン氏が喪に服してホコを納める」というシナリオに期待--凶弾に倒れた安倍晋三氏の最後の功績として・・ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/7/9 というシナリオも結局は実現しなかった。

 数々の政治成果が評価されている安倍氏だが,死者に鞭打つわけではないが,筆者はやはりそれほどの人格者ではなかったと判断する。おまけに,森友学園問題,加計学園問題,そして「桜を見る会」を巡る問題など,国民を欺いた事件の中核にいて知らんぷりを決めていた姿が,いまだに雑音として残っている。残念ながら,筆者は直接的な利害がなかっただけに,平日の仕事時間を割き,自腹で献花に訪れた多くの来訪者の行動にも疑問を持たざるをえない。

 自民党圧勝で,しかも安倍氏の死去によって,憲法改正論議ばかり前面に出てきている。しかし,軍事予算を拡充して防衛関連や敵基地攻撃の能力を増強したとしても,誰がその武器を操作できるのかを考えるとお寒くなってくる。そもそも日本には徴兵制度もなく,筆者を含めた戦後の日本人に「自分の国を守るために行動する」という意識はまったくない。北朝鮮がミサイルを打とうが中国,ロシアの軍艦や戦闘機が領土に接近しようが,スクランブル発進はかけるものの,ただの監視と抗議だけである。

 今や,アメリカ軍に救ってもらうことはできない。日本への攻撃がいったん始まったら,反撃もできず,降参するか壊滅するかしか選択肢がない。ウクライナのように反撃したり守ったりする力もなく,またフィンランドのように都市部攻撃に備えた別荘政策もない。唯一,「戦後からの奇跡的な経済復興」という世界から称賛された日本のパワーも,もはやただの紙切れにすぎない。日本から輸出するもので世界が潤うものは何もない。

 だから,早くエネルギー政策で世界をリードするための水素エネルギーへの集中投資を呼びかけているが,これもドイツや中国が先手に出てきている。今朝のニュースで出てきた水素細菌を使って油や二酸化炭素からプラスチック様物質を作る研究を,日本中で進める,という話は,前向きに取り組んでもらいたい。これらの新しいエネルギー分野での特許を早く押さえるべきである。食糧生産における陸上養殖技術や植物工場技術も,世界の他の国にはない卓越した技術であり,世界をリードできるのである。

 政治家は,結局は選挙のための票集めと,その票を投じた地元の人だけに利益還元をすることしか考えない。今必要なのは,世界の中での日本の立場をもう一度復活させ,世界中が日本の進めることに賛同することである。軍事力や防衛力の強化などという後ろ向きの予算ではなく,日本が世界のエネルギーや海洋汚染,そして地球温暖化,食糧危機などを解決することに予算を集中するべきなのである。残念ながら,具体的に公約を揚げた政党も政治家もいない。これが日本が没落の道を辿っている証拠だと筆者は考えるのである。