jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

コロナ重症病棟は「救急救命センター」を上回る「大規模山火事」のような危機状態--回復させる手段がなく人工呼吸器もECMOも延命措置に過ぎない

「救急病棟24時」というドラマを見ていた。救急救命センターを舞台としたドラマである。1話で1時間のドラマの中で,救命要請の電話が2~3件入る。搬入されてから1時間以内が勝負。救急救命センターの場合,致死率は30%ぐらいである。しかし,外科的な措置が終わってICUが必要なのは1日ぐらい。ピークを越えれば一般病棟に移せる。

 それでも大事故で一度に多くの怪我人が運び込まれたときには,トリアージュが行われ,複数の病院に協力を依頼するだろう。だが,最初のピークの数時間~半日の外科的な措置の後は,基本的に多くの怪我人は自己回復していく。

 一方,コロナ重症病棟は,運び込まれてから回復する場合でも1ヶ月はかかる。同じ1ヶ月を経過しても,残念ながら亡くなる方も多い。現時点で,重症病棟に入ってしまった場合,死亡率は90%を超えるのではないか。時間を掛け,手を尽くしてもほとんどの重症患者の方は亡くなってしまう。

 毎日10人の重症患者さんが亡くなってしまう。その空いたベッドに次の重症患者が運び込まれる。そして1ヶ月後に亡くなってしまう。その間,人工呼吸器やECMOなどの装置類を患者は使い続け,また医療従事者は経過をずっと観察し続け,容態が悪くなればそれに対応した措置を取らなければならなくなる。

 物理的な傷なら患者本人の自己修復能力によって基本的には回復する。それが外科手術である。しかし,主に肺炎を引き起こす新型コロナウイルスは,患者自身による自己修復ができない。一般の風邪をこじらせて肺炎になる場合は,細菌性肺炎であることが多いため,抗生物質の投与で回復の可能性があるが,一般的な抗生物質が効かないケースがあり,さらに耐性菌による肺炎の場合はいかなる抗生物質も効かない。

 新型コロナウイルスによる肺炎も,治療薬としてレムデシビル,デキサメタゾン,バリシチニブ,カシリビマブ/イムデビマブ,ソトロビマブ,モルヌピラビル,トシリズマブ,ニルマトレルビル/リトナビルなどが使われているが,決定打はまだない。中等症患者に投与して重症化を防ぐ目的で主に使われ,重症患者を救う手段はおそらくまだないと見ていいだろう。

 インフルエンザでは,日本で年間1000万人が罹患してきた。10人に1人は毎年罹っていることになる。特効薬がすぐに処方され,ほとんどの人は数日で熱が下がり,1週間で回復する。しかし,1年間でインフルエンザがきっかけで亡くなる方も3500人はいる。何らかの理由で症状が悪化し,肺炎を併発することで,死に至るケースだろう。肺炎は,人類がまだまだ克服できていない病気なのである。

 この3年間での日本でのコロナによる死亡者数は,現在3万5000人を超えた。第7波の2022/7/1からですでに3747人が亡くなっている。ワクチン接種の強制はしない,行動制限はしない,全員検査もしない,指定医療機関でしか取り扱わない,というどこにも歯止めを効かせない“ゆるい”“生ぬるい”お願い政策によって,「そのうち国民が気をつけてくれるからピークアウトするだろう」と放置したことが,世界一の週間感染確認者数という不名誉な記録を続けている原因だろう。

 2020年の訳もわからなかった段階と異なり,医療従事者側の対応方法も確立してきたと思う。必要な防護服も,必要な検査キットも,十分手配できるようになった現在,先生1人で運営している小さな町医者以外は,発熱者,有症状者に対応できるように医院を分割し,診断,検査,届け出の業務を受け持つべきではないか。また自宅療養に移った患者のトレースは,LINEによる自動化を徹底できるように民間業者に手続きの委託をしてもいいのではないか。

 「症状があったら発熱外来で検査」と言っていても,各都市に3箇所ぐらいしかない発熱外来でさばける量ではなくなってきている。実際,筆者の家族の例でも,かかりつけ医で検査してもらったり,休日当直医院で検査してもらったりしていただいた。市が指定した発熱外来以外で検査していただき,スムーズな手続きができたのはありがたかった。

 救急救命センターのドラマでも,一瞬の判断の遅れで手遅れになるケースが再現されていた。しかし,大方の場合は待機室で連絡待ちをしているときに緊急連絡が入り,受け入れ体制を作って対応する,というメリハリはある。3日連続で病院泊まり,などというシーンもあるが,コロナ重症病棟はこの状態が何ヶ月も続いているのである。

 火事でも交通事故でも,立て続けに何件も発生するわけではない。消防も警察も常に現場対応しているわけではなく,待機状態がある。しかし,コロナ重症病棟は,常に事件発生が続いており,消火活動が続けられており,1箇所が消火できてもまだ他が燃えているという,いわば山火事状態にある。いくら水をかけてもなかなか消えない。焼き尽くされなければ鎮火しない,しかも消火する消防隊員側にも命の危険がある,といった状況にある。まず火を出さないことが先決だが,発生してしまった以上,強制的な措置を取る必要もあるし,航空機などを使った強力な消火手段の投入も必要である。一般医療機関も,いわば消防団のようなサポート業務でもいいので,手を貸す必要があるのではないだろうか。