jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

いいイヤホンとは何か考えた--集中モードと街歩きモードの両立はまだ難しい

2022年のイヤホンのトレンドは、「骨伝導」だったと思う。2020年を中心にBluetoothによるワイヤレス型が一斉に登場した。その前は、ノイズキャンセル機能が流行った。

   2023年になって、イヤホンを耳の穴に挿し込まずに、周囲の音も同時に聞こえるタイプが続々と発表されている。イヤホンの中央が貫通したタイプには驚いた。そのほかの製品は、耳に掛けるなどの方法で浮かせた状態にする工夫がされている。

   もともと、ヘッドホンもイヤホンも、音に集中するのが目的である。そのための密閉型ヘッドホンであり、インナーイヤー型(カナル型)が最も適している。しかし,密閉型は耳全体を覆うし,インナーイヤー型は耳の穴の中にシリコーンイヤーパッドがずっと入っている。長時間使用していると,耳の周辺に汗をかき,蒸れた状態になる。不快である。

 ワイヤレス型も,当初は耳の穴を塞ぐインナーイヤー型が主流だった。耳の穴だけで支えるため,落下による破損や紛失が多発した。駅で線路上に落ちると,小さすぎて拾うのが大変だったようだ。角を付けて耳たぶの内側で突っ張ったり,耳たぶの縁に引っ掛けるなど,落下しない工夫も見られた。

 筆者も,ワイヤレス型,骨伝導,ノイキャンといろいろ試してきた。それぞれの効果は確認できた。周囲の状況を把握しながら音を楽しむには,骨伝導型が結構良かった(Bluetooth接続でワイヤレスだった)が,電車の中のようなうるさい環境では,音量を上げざるを得ず,音漏れが発生する。

 さて,このようなイヤホン群雄割拠の流れの中で,かなり革命的なイヤホンがNTTから発表された。耳の穴にイヤパッドを入れないオープンタイプでありながら,音漏れがほとんどしないのだという。もちろんケーブルはなし。耳たぶにひっかけるようにして使うようである。音を聞いている人の耳に相当近づいて耳を澄ませるとやっと聞こえる程度の音漏れだという。原理的には,音に指向性を持たせ,耳の穴に向かう音には雑音のノイキャンを,耳の外に向かう音にはすべての音をキャンセルするような仕組みになっていると思われる。

 これまで,外部の雑音を防ぐ方法として,インナーイヤー型は言わば「耳栓」だった。耳の中の空間だけで音を振動させるため,鼓膜への負担が心配された。インナーイヤー型のノイキャン・イヤホンは,外部の雑音をさらにカットすることで,再生音量を下げることができ,鼓膜への負担を軽減できた。一方で,近づいてくるクルマの音などの情報や,話しかけてくる人の声もカットしてしまうため,危険とも言われた。ただ,音楽や語学など,集中したいときには非常に効果があった。

 オープンエア型ヘッドホンや,骨伝導型は,音楽も外の音も同時に聞こえるのがポイントだが,外部の雑音に対抗するために音量を上げると音漏れがかなりあるのが欠点だった。今回の新型ワイヤレスイヤホンは,音漏れがほとんどないのが特徴である。

 筆者のニーズとしては,音楽や語学は集中して聴きたいので,外部の雑音が入らないノイキャン機能付きのインナーイヤー型で,ケーブルのないワイヤレス型がいい。しかし,屋外で使用中に,急に話しかけられたりしたときに,ボリュームを下げたり,ノイキャンを外すボタンを押したり,という動作をするよりも,耳から外した方が手っ取り早いので,それなら落とさずに済む有線型でも十分ということになる。通常のY字形になる有線イヤホンだと,片耳を外すとイヤーパッドが下に垂れ下がってしまい,これがきっかけで反対側のイヤーパッドも外れてしまいがちである。そこで,ネックストラップと組み合わせたタイプが使いやすい,ということになる。もともと有線型だったが,小型のBluetoothアダプターを使うことで音楽プレーヤーから無線で信号を飛ばして使用していた。胸元のアダプターで音量調整も簡単にできた。

 音楽も外部の音も同時に聴くというニーズは,歩きながら音楽を楽しみつつ周囲の状況も把握し,しかも音漏れがないので迷惑がかからない,という意味では,究極のイヤホンと言えるのかもしれない。しかし,同じイヤホンで「集中モード」つまり,外部の騒音をカットするために,耳の穴にイヤーパッドを入れるという使い方はできない。

 筆者としては,集中モード,街歩きモードの両方が1つのイヤホンでできるモノが,筆者にとっての「いいイヤホン」かなと改めて感じた。

 骨伝導型と称するイヤホンを購入した際に書いたブログがある イヤホン・ヘッドホンを再考する--没入感,リアル世界との共存,耳への負担を考える - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/1/17。比較的静かな家の中で,音楽を楽しみながら,家族との会話も楽しむ,という使い方には骨伝導型はもってこいなのだが,屋外の雑音の多い環境ではほぼ使えない。一方,昨今の骨伝導型イヤホンが,「ボリュームを上げて音漏れするのは,中身が普通のイヤホンと変わらないから」という話題も書かれている。実際,耳の穴を塞ぐようにすると,普通に音が聞こえるからである。そういう使い方は変だが,集中モードと街歩きモードを使い分けられるイヤホンは,まだかな,というのが,今回の感想である。まあ,若い人ほど音に対するニーズは高くなく,現状の複数の有線,無線,骨伝導を使い分けることで満足しているので,ウン万円もするイヤホンを今後も買うことはないだろうな,というのが結論である。