料理の紹介の番組が嫌いである。
1つ目は、超高級料理。素材の厳選、達人による調理、店の雰囲気など、超一流である。まずいはすがない。あるいは、まずいと言えない雰囲気があるため、批判を出せないのかもしれない。
2つ目は,とにかく「うまい」「うまい」を連呼する番組である。「うまい」と言うことを前提に,口に食べ物を運び,口に入れた途端に「うまい」と発声する。これは食に対する感想というより,単なる「ギャグ」にしか聞こえない。「いつも同じギャグじゃないか」と思える。同じ「うまさ」であるはずがない。良さが伝わってこないように思えるのである。
一般的な食品のCMなら,その商品を購入して試してみてもらうための効果を持っている。しかし,地方の隠れた名店や,個人の家の食べ物を紹介されても,そこにアプローチすることもできない。番組の独りよがりの企画になっている。
それよりも,食を題材にする番組が,大食いや激辛,激安などを売り物にしているのは,世界に対する冒涜であると思う。世界66億人のうち40億人が,1日1食をまともに食べられないという現在,食材を無駄遣いし,その店が儲かり,タレントがギャラを得られるというシナリオを作るだけで,世界トータルで考えるとまったくサステナブルではない。
外国からの観光客に1杯3000円ものラーメンを出していい気になったり,1日1組しか客を取らずに何万円もの食事を出したり。食をオモチャやエンタメにしてほしくないのである。
より基本に忠実に,無駄なく,効率よく,より多くの人に食料が回るようにしてほしいのである。
日本の数千箇所でこども食堂が運営されている。運営そのものもギリギリだし,そこに来る家庭もギリギリの生活をしている。食材の味を生かしたシンプルな食事こそ,人間らしい食なのだと筆者は考えている。
お米をただ炊いただけで食べられる国は,日本だけである。筆者は卵かけご飯も納豆かけご飯も,ふりかけもなるべく使わない。生卵も納豆も,ご飯とは別に食べる。その方がご飯の味をじっくり楽しめる。おにぎりも,究極は塩だけのおにぎりがおいしい。
味付けをすればするほど,素材の味があやふやになる危険もある。筆者は基本は塩味である。醤油は世界に誇れる調味料である。塩味を中心に深い味がある。それで十分だと思うのだが,何でもかんでも混ぜ合わせて新しい味を提供しようとするのは邪道な気がするのである。
素材の本来の味を生かすのが食のプロだと思っているが,モノの値段には常識というものもある。その値段に糸目を付けない人たちがいることも,問題をややこしくしている。領収書を出せない政権与党側の政治家も,お金の感覚がなくなっているように思える。それが癒着になり,世界が見えなくなり,利害関係のある人だけが豊かになっていき,周囲は見捨てられる。
SDGsと標榜するなら,メディアはまず食の番組のコンセプトを見直す必要があると思うのである。特に食レポでお笑い芸人を肥やす必要はないのではないか。