芸人の地上波離れ加速の深層…霜降り明星はレギュラー1本に、令和ロマン「テレビに出ない」(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース (2024/6/19)。一度,見逃したニュースを見つけるのは至難の技である。この記事も気になっていたのだが,5日間も見つけることができなかった。それほど,ネットワーク上の情報は多様で膨大である。
いろいろ世間を騒がしているお笑い芸人の霜降り明星が,テレビのレギュラー番組を1本に減らしたというニュースだが,これはテレビ局側が減らしたのではなく,出演者がテレビ出演を拒否した結果なのだという。M1グランプリ優勝の令和ロマンに至っては,もはやテレビ出演はしないという。
彼らを代表とする最新のお笑い芸人は,Youtubeが主な収入源になりつつあるというのである。Youtubeには規制が何もないのに対して,テレビでは放送コードに代表されるさまざまな自主規制が存在する。自由にできないのだという。一方で,Youtubeでの広告収入や投げ銭などの収入が,テレビ出演を上回っているようである。コスパ,タイパから考えれば,Youtubeにシフトするのは当然なのだろう。
実際,お笑い芸人をフォローする若者は,すでにテレビは視ない。仮にテレビドラマであっても,ネット上の見逃し配信やアーカイブで好きな時間に視聴できる。テレビは不要になっている。固定電話も使わない。
一方で,年配世代はまだテレビを視聴し,留守録したものをタイムシフトして視聴する,という使い方をする。そこで見かけるのは,タイパの優れたCMへの芸人起用と,何とか若者にアピールしようというMCへの芸人起用の実態である。別に出演したCMの商品が売れようが売れよまいが,彼らには関係なく,割のいい出演料をいただくだけなのだろう。つまり,テレビ番組もテレビ広告も,もはや終末期を迎えたと言えそうなのである。
年寄りからの助言である。テレビは筆者にとっては時計代わりであり,時間割代わりでもある。まず,その時点での重要なニュースと天気予報の情報を入手することがテレビの役割である。最近は,3時間スペシャルや4時間スペシャルみたいな長い番組も増えたが,基本的には1時間ごとに区切りができる。この1時間はアニメ,この1時間はエンタメ,などと一種の時間割のように使っている。終わったら寝る準備をする,といった感じである。
テレビを視ない若者は,もはや「時間」という概念に縛られないのではないか。逆に言えば,ベッドの中でも,デートの最中でも,そして歩きながらでも,スマホをいじっていることにつながる。切れ目がない。それは,健康な生き方ではないと思うのである。
最近,検索の回答の上位にはYoutube動画が並ぶことが多い。これまで文字でコツコツと解説してきたWebサイトと違い,動画だと細かい点が良くわかることもある。テレビと違って前に戻して見直すこともできる。マニュアル的な使い方としては優れている。しかし,あまりにパフォーマンスが過ぎると,疲れてしまう。若者にとっては,まったく抵抗がないのだろう。
テレビ番組に食レポなどの食べ物番組がやたらと増えたのも,ほかにできる企画がないからだろう。お笑い芸人の番組は,もう一方の支えだったのだが,これが消滅すればもはやテレビの存在意義すらなくなってしまうだろう。
東京都知事選挙で56人も立候補者があり,政見放送が1人6分,2回放送で11時間を使うのだという。そのうち半分がNHK党サポート者である。だれがいつ出るかまで調べてその時間に放送を視る人がどれだけいるのだろうか。
日本は,地上テレビ局が6~7局で,そのうちこれにUHF局が各地で1~2局加わった。BS放送で5局が加わり,電波割り当てからするとほぼこれで打ち止めである。一方,ケーブルテレビでは30局以上の専門チャンネルが見られる。一方で,Youtubeは無限チャンネルと言ってもいいだろう。視たい内容で検索すればずらっと出てくる。しかも,テレビのような時間制限も内容制限もない。出演者も視聴者も,テレビから乗り換える構図になっている。
若者が視なくなっているテレビのCMにお笑い芸人を充てがっている広告代理店には,年配者しかいなくなっている視聴者のニーズがすでに理解できていないのだと思う。ヤケクソで作っているとしか見えない。この業界体質も消滅していくものと思われる。