jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「働くメリット」はあるのか--働かない人が激増している現在は国の終末現象

東京都のトライアル就労のCM を見た(成長産業への就職をサポート|成長産業人材雇用支援事業 (seicyo-tokyo.jp))。「働く」ことの意味を考えよう,というための場の提供だと思われる。

    筆者は古い世代なので,お金を得るためには働くのが当たり前だと思って生きてきたのだが、近年、仕事をしないでお金を稼ごうという風潮が蔓延しているように思える。

    通常は、自分の能力に値段を付け、あるいは他人から値段を付けられ、その仕事を提供することによって対価を得る。1件当たりの単価のこともあれば、1時間当たりの単価,いわゆる時給のこともある。

 もちろん,どの時代にも頭を使ってお金を儲けることを考える人たちがいた。自ら,手元にお金が舞い込んでくる仕組みを作る頭のいい人たちがいる。寺社が始めた富くじは,今でも宝くじとして引き継がれている。胴元である寺社が最終的には大儲けをする仕組みである。

 自由経済の下では,投資という仕組みが生まれた。為替,株式,商品先物など,変動する相場を読んで売り買いを繰り返し,差額で利益を出す。政治,経済,事件などの一挙手一投足で状況が急変する。裏情報に手を染めれば,インサイダー取引も発生する。特に株式は,基本的にはモノづくり産業という「働く」人たちの活動の結果を評価すべき仕組みのはずだが,逆に政治情勢や経済方針,事件・事故・戦争などによって価値が暴落したりする。コツコツと働いている人が被害を受ける一方で,差額で大儲けする人が出てくる。どちらが楽かといえば,自明な気もする。

 「働く」ことによって生まれる価値は,「人と人との信頼関係」だと思うのである。顧客との信頼関係はもちろんのことだが,同じ目標に向かって働く職場の仲間の間にも信頼関係がなければ仕事はうまく進まない。いい加減な仕事をする人やサボっている人が職場では許されない。そこにルールが発生するのは当たり前なのだが,そういった規律で縛られることなく成長してきた若い人にとって,社会は生きにくい世界に見えるようである。自分の考えていた世界と違うと数ヶ月,あるいは極端には数日で辞めてしまう若者が多い。学生時代と働く社会の間での気持ちの切り替えができない。

 これは現在の親世代にすでに問題がある(いや,いつの時代も親世代が問題なのだが)。筆者の世代は,戦後のモーレツ社員,ビジネス戦士,などと言われた時代の名残なので,週休1日しかなく,残業も休日出勤も厭わなかった。どの会社も活気にあふれていた。いいモノを作ろう,品質でNo.1になろうと,カイゼンなどの現場活動も盛んだった。世界に対して,日本企業の存在意義を主張できる時期だった。企業が発行する株式を,企業の成長のために買って投資し,実際にその企業が成長することでリターンを得るという,株式市場本来の役割を果たしていた。

 しかし,その後は「マネーゲーム」という言葉が生まれたように,ゲーム感覚で投資する世界に変わった。筆者もある証券会社との付き合いがあったが,まったく見知らぬ会社の株の購入を勧められたりした。バブリーな会社だったようで,その後確かに成長したようだが,筆者にとってはまったく興味が湧かなかった。しかし,そういう「上がる株」を買って,株価が上がったところで売り,差額で儲ける,というマネーゲームが楽しくて仕方のない人たちが世の中にあふれるようになったと思う。

 マネーゲームは,要はゲームである。他人に頼らず,自分で考えて行動するので,人との信頼関係など関係ない。ゲームの対象となるモノの情報を掴み,世の中の動きを掴んで賭ける。これは賭博となんら変わりはない。

 筆者から言わせると,エンタテインメントは国力にならないと思っている。アメリカ大リーグで活躍する大谷翔平選手だが,彼がいくら活躍しても日本にとってのメリットは何もない。彼自身は,自分の才能を市場が買ってくれていることの対価として莫大な収入を得ているが,それは日本の成長にはならない。この理屈があるために,あらゆるスポーツについて,基本的に筆者は否定的だし,将棋などの勝負事,演芸やお笑いなどのエンタテインメントも否定的である。エンタテインメントはあくまでも生活の潤滑剤にしかなりえないからである。

 そのエンタメに膨大な時間を費やすことで,また国力は落ちる。攻略までに数百時間もかかるというゲームを1週間寝ずに頑張った,などという話を聞くと,その1週間で生むことができる価値がほかになかったのか,と思いたくなるのである。

 勤め人は,基本的に拘束される時間で価値が決められる。現代社会では,拘束時間以外に働くことは会社にとっての不利益になると考えられている。残業してでもイイモノを生み出そうとしてきた自分の人生が逆に空しくなってくる。社会のためにいいことをして,そのために自分の時間を多く提供することに何の疑問もなかったのだが,現在は逆に「有給休暇は働く者の権利だからすべて取得する」ことは当たり前と思われているし,さらに逆に企業は社員に有給休暇を取得させられるように配慮しなければならなくなっている。

 つまり,「働く」ことがストレスになっており,適当に休ませて社員を長持ちさせることが,企業経営にとって配慮すべき点になっているのである。一生懸命に就活をした先に待っているのが,ストレスのある空間と時間であれば,働く意欲も湧かず,辞めてしまい,生活費だけをアルバイトで稼ぎながら,一発当てようと投資の道を選んだり,自らYoutuberなどのエンタメの世界を選んだりするような流れになるのではないか。

 形を作らない営みは,国の価値であるGDPには貢献しない。モノができなくても他国から輸入すればいい,という安易な考えで来たのが,空白の10年,いや30年を生んでしまった。もし,東西の冷戦が本当に終結し,世界が一丸となって,当時の人類が直面していた「核兵器」や「飢餓」などの問題に取り組めていれば,世界中でモノが流通することで平和が促進されたはずだが,日本がモノづくりの座を他国に明け渡してしまって,生産国から消費国に転落したことで,食糧自給率が低下し,もともとないエネルギーはますます世界経済によって翻弄される結果になってしまっている。もしここで,ウクライナ紛争やイスラエル・ガザ紛争が拡大してアメリカvsロシア,中国,北朝鮮というこれまでの想定を越える大きな争いになった際に,日本は一気に潰れてしまうだろう。

 日本のモノづくりで最後の砦だった自動車産業すら,検査不正の山を築いてしまっている。高度経済期に100%まで完備したインフラが寿命を迎え,ここに地球温暖化による気候変動や大地震が加わって,もろくも崩れつつある。こうしたモノづくりやメンテナンスの現場を支える人材すらいなくなり,海外からの労働力に多くを依存している。

 農業や医療・介護などの現場でも,日本人労働者が不足し,せっかく就業できても賃金が低いために労働意欲が湧かず,犯罪行動を起こすケースが増えている。治安を維持するための警察,消防,自衛隊,国民生活を守る自治体職員,次の世代を育てる学校教員も士気が上がらず,犯罪行為に走るケースが増えている。

 これをまとめる役目を持つ政治家も,地方のトップである知事や市長がハラスメントを起こしたり,中央政党の中が4分割,9分割してまとまらなかったりしている。誰のために働いているのだろうか,と思われるニュースが蔓延している。

 筆者のブログでは普通,ここまで考察すると,何等かの解決のためのアイディアが出てくるのだが,今回はまったく解決策が浮かんでこない。エネオスが合成燃料のプラントを稼働し始めたというニュース(「合成燃料」原料から一貫し試験的に製造する施設完成 国内初 | NHK | 環境 2024/9/30)が唯一,1つの光に見えている程度である。