梅雨入りとなり,新型コロナウイルス対策 vs. 熱中症対策という,相反する緊急事態から少し考える時間ができた。本格的な夏に入る前に,この二つへの同時対策を考えてみる。
「新しい生活」では,人と出会う際にはマスク着用が必須となる。これを前提に考える必要がある。一方,マスクによって呼吸による体温の放出が減るため,身体に熱が残りやすくなり,熱中症の危険性が高まる。これを両立する方法としていくつか提案されている。
まず,ソーシャルディスタンシングが取れる場合は,マスクを外せることを認識するということである。距離だけでなく,屋内か屋外か,会話の頻度,接触時間など,ほかの要素との組み合わせによって,マスクを着用していた方がいい場合も多いので,ここは頭を使うしかない。
たとえば屋外を歩く場合は,マスクを外すことがいいとされている。すれ違いに1.5mが確保できない場合も多いが,接触時間が短いため,感染リスクは低いというのが理由である。屋外で運動する場合は,マスク着用そのものを控えるよう指導されるようになった。吐く息が通常よりも荒くなるが,ソーシャルディスタンシングを取ることで密閉空間ではないため,感染リスクが低くなるということである。
会話がある場合は,マスク着用が必要だが,飛沫飛散をある程度十分に防ぐことができる布マスクの方が,不織布製使い捨てマスクより通気性がいいため,夏場には適しているとされている。筆者は,自宅では自作の三角コーナー用不織布製のマスクを使っており,外出時は市販の不織布製使い捨てマスクを使っている。布マスクへのトラウマがまだ消えないためだが,そろそろ試してみようかと考えている。
布マスクの選択肢として,自作と購入がある。自作の場合,手縫いかミシン掛けが必要になる。材料も購入してくる必要があるため,筆者的にはなかなか手が出ない。娘をそそのかして作ってもらおうとしたが,オンライン授業が始まって余裕がなくなったようだ。もともと,我が家では手芸系の活動はあまりない。
現在,購入に向けてお店を覗いたり,ネットで検索したりしている。いくつか候補もあるが,これは宣伝になるかもしれないので,報告はしない予定である。
一方,市場から使い捨てマスクが消え,キッチンペーパーなどを使った代替マスクが提案された後,アベノマスクなる布マスクを各家庭に2枚ずつ配布するという話が出た2020年4月前後から,自作の布マスクの作り方紹介がYouTubeで多く紹介されてきた。100円ショップからは,まず使い捨てマスクや除菌ペーパーがなくなり,次に手芸用の不織布やガーゼ,ゴムひもがなくなり,そして布マスク用の端切れ布もなくなっていった。
そこで,自宅にあるハンカチやバンダナを加工し,耳ゴムはストッキングを輪切りにして使うなどのアイディアが紹介された。アベノマスクが最初に届いたある家庭では,マスクのサイズが小さいとして,アベノマスクをほどいて畳み直し,裁断して立体マスクに変えるという方法も紹介された。西村経済再生担当大臣のデニムの布マスクが格好いいとして,その作り方を公開する動画もアップされた。
街中を歩くと,マスクを着けている人の2/3は,不織布製使い捨てマスクを着用しているが,残りの1/3はそれ以外のマスクになっている。ウレタン製の丸っぽいマスクも女性や若い人を中心に多く使われ,男性の中には藍染っぽい布マスクも見られるようになった。どうせマスクを着けるのなら,自分に合ったデザインや色のマスクを着けようという気持ちが見える。筆者は自ら色物や柄物のデザインを選ぶことはおそらくないが,ほかから勧められたら着用するかもしれない。
これらの布マスクだが,おそらく手作りだろうと思われるものが多い。たぶん,家族で生地を探して選び,家庭でマスク作りを楽しんでいる姿が目に浮かぶ。使い捨てマスクが市場からなくなったときに,地元の小学校に自作の布マスクを寄付した高校生の話題があったが,すごいなと思ったものだ。その後も,自作の布マスクを介護施設に寄付した話が続いた。手芸店が自作マスク用の型紙をプリントして店先に置いたら,生地も一緒に売れたという話題もあった。我が家のご近所では,週2回,庭先で自作布マスクを販売しているお宅もある。
なんだか日本人はこういう自作が好きなのではないかと思えてきた。手先が器用なのだろう。昔から,街角で自作のアクセサリーを販売したりしていたし,現在ならインターネットでさまざまな小物やアクセサリーが個人ショップで販売されている。
これに対して海外では,有名デザイナーやブランド店が,オシャレな生地を使った布マスクを作って販売した。普段からマスクを着ける習慣がないため,服とコーディネートさせることでマスク着用が進むのであれば,これは歓迎すべきことだ。海外ニュースを見ると,なかなかオシャレなマスクが使われているように見える。しかし,マスクは試着ができないので,実際はブランドマスクを購入してもあまり使われないで,単にブランドの宣伝になっただけ,ということなのかもしれない。
日本各地の生地産業がこぞって,布マスクを作り始めた。ニット製のもの,タオル地のもの,絹糸を使ったもの,染めを工夫したものなど,さまざまな工夫が見られる。ヨーロッパの布マスクはファッション性やブランドイメージが中心だが,日本製布マスクは機能性を売り物にして国内だけでなく海外にも展開してもらいたい。日本の変な習慣だったマスク着用が,いまや世界のトレンドになっている。「日本製の○○マスクを導入したら,感染率が一気に下がった」という声が聞けるとうれしい。