jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

マスクの落とし穴。マスク周辺へのマイクロ飛沫拡散が怖い

咳やくしゃみをした際,飛沫飛散の防止に役立つマスク。新型コロナウイルスでは,唾液腺への感染や舌の受容体への感染が報告され,唾液の飛散による感染拡大が懸念されている。会話をするだけで飛ぶ唾液飛沫をある程度捕捉して感染拡大リスクを少しでも下げるために,布マスクを含めたマスク着用が絶対必要な段階にある。

 マスク着用による飛沫飛散防止効果について,映像で紹介するケースが増えている。たとえば,布マスクではマイクロ飛沫までは防げないが,通常の会話時の唾液飛散や咳・くしゃみ時の飛沫飛散をある程度防げている様子が映し出されている。

 ナツノマスクとしての布マスクや,マスクを着用してスポーツができるというスポーツマスクも多数紹介されている。夏場は特に,熱中症との兼ね合いがあるため,ある程度,通気性を優先したものが作られている印象である。

 これらの映像を見て,逆に恐ろしく思ったのは,マスク周辺へのマイクロ飛沫の飛散である。たとえば,通常の不織布製使い捨てマスクは,咳・くしゃみ時に正面への飛沫の飛散をほぼ防いでいる。しかし,マスクの着用が不適切だと,マスクの周辺にできた隙間からマイクロ飛沫がかなり飛散していることがわかる。

 比較的ガバガバに作られるケースが多い布マスクでは,マスク正面へのマイクロ飛沫の飛散もそれなりにあるほか,マスク周辺の隙間からのマイクロ飛沫の吹き出しがかなり激しい。

 このマスク周辺へのマイクロ飛沫飛散が最も懸念されるのが,あくまでも「3密」ではないと政府も専門家も主張する公共交通機関(電車,バス)である。隣通し座った人,あるいは横に立った人が,咳やくしゃみをした場合,マスク正面にいないにも関わらず,マスク周辺から飛散したマイクロ飛沫が横方向に流れてくるのである。

 先に書いたが,筆者は週1回の都内への通勤時には,フェイスシールド付きキャップをかぶっている。つり革やポールに手を触れるリスクをできるだけ減らすために,基本は席に座るようにしている。フェイスシールドとキャップがあるため,前に立った人が咳やくしゃみをしても,基本的にその飛沫の直撃は避けられているという安心感がある,ということも書いた。

 ところが,横に座った人が咳やくしゃみをした場合,仮にその人がマスクを着けていても,このマスク周辺からのマイクロ飛沫の拡散をフェイスシールドで完全に避けることができないことに気づいたのである。これは,フェイスシールドをして立っている場合に,後ろからくしゃみを吹き込まれればフェイスシールドが何の役にも立たないことと同様な危険性である。

 マスク着用の基本は,マスク周辺に隙間を作らないように顔にフィットさせることである。おそらく,花粉対策でマスクを着けてこられた方は,よくお分かりかと思う。息を吸うたびにマスク周辺の隙間から花粉が侵入しては,何の役にも立たないからだ。

 一方,ウイルスの侵入防止のためにはマスクはほとんど役に立たない。新型コロナウイルスに対するマスク着用は,自分から唾液などの飛沫飛散を外部に出さないことが目的である。したがって,外の空気を楽に吸い込むために,マスクを緩く着ける人が多いように思われる。布マスクを着けて話すたびにずり落ちを防いでいる会見の様子をよく見かけるが,これは布マスクをガバガバにして着けているからである。不織布製使い捨てマスクと違って,布マスクの多くが手作りであり,耳ひもの長さを勝手に変えることができるため,楽なように緩めに着けているのである。

 夏場に比較的楽に呼吸をして,熱中症の防止と両立させたいという気持ちは分からないわけではないが,これでは咳・くしゃみ時のマイクロ飛沫の周辺拡散を防ぐことができないのである。

 対策方法は2つ。まず,夏場であっても,不織布製使い捨てマスクも布マスクも,顔にフィットさせて使うことである。フィットさせていても,咳やくしゃみの威力は凄まじいため,マスクが一瞬浮いてマイクロ飛沫が周辺に漏れることもあるだろうが,基本的に顔にフィットさせていれば,顔からマスクが離れるのは一瞬なので,拡散する飛沫の量は最小限にできる。ガバガバにしていてはダダ漏れである。

 そういう意味では,正直,自作されている布マスクのほとんどは不合格だと思う。小池都知事の日替わりマスク,西村経済再生大臣のデニムマスクなども,ガバガバである。そもそも小池マスクは顔に対して大きすぎる。顔を覆う面積が広くなると顔が暑くなるため,ガバガバにして外気を取り入れているように思われる。マスクとしては不合格である。

 もう一つは,咳やくしゃみが出る際,マスクの上から手を当てて咳・くしゃみエチケットをすることである。そうすれば,マスクが顔から浮くのを防ぐことができ,咳やくしゃみもマスクを通して外に出るため,飛沫拡散をそのマスクの性能いっぱいまで防ぐことができる。

 東京での感染者数が連日50人を超え,昨日2020年7月2日は107人と100人超えした。このことを受けてか,また唾液での感染のことがかなり認識されたのか,街中でのマスク着用率はまた上がって来ているように思える。街中でも電車の中でも,咳やくしゃみが聞こえるとその人を見るようになっているが,さすがにマスクを着けていない人はかなり減っている。

 しかし,「マスクしているから,咳やくしゃみをしてもいいでしょ」的に,大っぴらに咳・くしゃみをする人が多いように思える。マスクを押さえたり,あるいは人に面と向かってくしゃみしないように顔をそむけたりする人をほとんど見かけない。

 マスクによるウイルスの罹患防止効果はほとんどないことは繰り返し説明してきたが,飛沫飛散防止効果も,正しく装着した上で,可能な限りの咳・くしゃみエチケットを守らない限り,効果が薄いのではないかと考える。その意味では,夏場のマスクは,薄手でもいいから顔にフィットした布マスクか,衛生面を配慮して不織布製使い捨てマスク(食品産業用の「衛生マスク」で可)を着け,咳・くしゃみエチケットも併用してもらって,熱中症を防ぐのと両立させる必要がある。

 「新しい生活様式」がかなり当たり前になってきて,抵抗なく受け入れる人が大半になってきているが,その中にもこの「夏場の新しい生活様式」は受け入れられない,という人もいるのではないかと思われる。しかし,「新しい生活様式」の広がりとともに,これまでのインフルエンザの罹患数が1/4に減っているという数字も出ている。手洗い,マスク,ソーシャルディスタンシングという,ウイルス対策がインフルエンザに対しても効果的であることを示している。

 これからも「新しい生活様式」はさらに変化していく可能性がある。人に迷惑をかけていることを認識できない人,また人に迷惑をかけることを楽しんでいる人が世の中にまだまだ多いことを改めて感じる。二重の自衛をさらに拡充しなければならないのだろうか。