ワクチンパスポートの話題が2021年2月20日ぐらいから盛んに報道されている。新型コロナウイルス対応ワクチンを接種していることを条件に,入国許可したり,移動許可したりできる仕組みである。アメリカ,EUほか,イスラエルも始めている。接種がまだ進んでいない韓国でも,ワクチン接種の段階での電子化が進められており,ワクチンパスポートの発行もスムーズに進むという。各国とも,スマートフォンのアプリとして電子化することが前提に話が進んでいる。
一方,日本はワクチン接種の仕組みも自治体ごとにバラバラ。管理システムは現在構築中というが,バーコードで接種したことを読み取って記録するだけ。このために新しいシステムを開発しようということらしいが,これだけなら選挙管理方式でもすでに採用しているバーコードをそのまま使えばいい。ワクチン接種は「選挙投票方式」で行政が管理して実施してほしい - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/1/15。接種証明書を発行する計画も基本的にはなく,海外渡航する際には,医者に証明書を発行してもらう,という手続きが必要になる状況のようだ。
ワクチンパスポートができると,ワクチンを接種した人は今まで以上に自由に行動できるようになるというのがメリットとして言われている。しかし逆に,パスポートを持っていない人は,行動を厳格に制限されてしまうことにもなる。まさにパスポートを持っていない人は出国・入国ができない,ということである。
ここで困るのが,ワクチンパスポートの準備を何もしていない日本である。まず,医療従事者への接種が始まったが,次段階の65歳以上の高齢者への接種が4月から,一般の人への接種は6月以降,と言われていたが,どうもそれほどうまく進まないような雰囲気である。確保の契約は「6月まで」という期限条件が入っていなかったようで,いつ入荷するのか不明である可能性があるというのである。
仮に6月から16歳以上の一般の人の接種が始まったとして,まず真っ先に接種したいと思っているのは,海外との取引のある企業の営業パーソンだろう。しかし,この人たちに優先的に接種してもらう,という判断は今のところ全くない。接種管理も,自治体の管理する名簿なのか,筆者が提案した健康保険の名簿なのかによって,優先度を導入できるかどうかも変わってくる。ワクチン接種のクーポン券に思う自由社会の良し悪し - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/2/18。
ワクチン接種によって免疫を獲得していることが証明されたとして,その人の渡航を自由にできるようにする根拠が,筆者にはあまり理解できない。免疫を獲得していることと,その人が感染しないことはイコールではない。感染しても軽症で済む,という証明にはなるかもしれないが,では他の人に感染拡大させない,という証明にもならない。感染に対して免疫がある人が入国したとしても,その国にとってのメリットはほとんどなく,逆に無症状感染して感染の再拡大に関与する危険性も考えられる。しかも,パスポートを持っている人は大手を振ってマスクなしでも歩き回り,無症状感染再拡大を引き起こしやすいのではないかとも勘繰ったりする。
ワクチンパスポートはもちろんだが,以前にも提案したPCR検査陰性証明の方が,入国される側にとってはメリットがあるように思う。移動をしたい人は,抗原検査キットで自宅で陰性を自己証明すべき - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2020/11/28。私費でPCR検査をしたり,抗原検査をしている人こそ,優先的にパスポートを発行して,移動の自由度を与えていただきたいものである。もちろん,ワクチン接種もしていることが望ましいことには疑いがない。
国民全員にPCR検査をしてホワイトロックダウン(無感染者しかいないエリアを確保する)をする,というアイディアは,結局どこも実施しなかった。ワクチンの量産により,国民全員にワクチン接種する,という集団免疫作戦は,もちろん有効である。PCR検査は検査機関が限られ,1日辺りの処理数が限られてしまったが,ワクチン接種は冷凍設備の問題以外は,多くの医療関係者の協力によって実現しそうだからである。
しかし,「ワクチン接種=感染の心配なし=感染の拡大なし」ではないことをはっきり示さないと,海外でワクチン接種したヤンチャな若者が日本に押し寄せて,感染拡大を引き起こさないとも限らない。とりあえず,日本は「ワクチンパスポートは,日本入国のためのフリーパスではない」ことを宣言した方がいいと思う。これによって,また世界からは後進国日本を印象付けてしまうかもしれないが,当面は「鎖国」して国内経済を立て直すことに注力すべきではないかと考える。