日本では政治家になる女性の割合は,議員の10%。しかし,女性の政治進出の先進各国でも,2021年のメキシコの48.2%が最大で,2位のフランスが39.5%。その他も30%前後で,半々には遠い。しかも,2010年はすべての国で30%を切っている。各国でもここ10年の動きに過ぎないように見える。
一定の割合で女性議員を入れるクォータ制を各国では取り入れている。結局は,制度化しないと,女性の割合を確保することはできないのではないか。
しかし,たとえば100人の議員のうち40人を女性議員にしたい場合,男女が同じ確率で当選するには,たとえば男性候補300人,女性候補200人を擁立しなければならない。しかし,実際には女性候補の成り手が50人しか集められなかったとして,当選確率は男性候補の4倍にもなる計算である。
女性が政治家になるのに,日本ではいろいろ制約があるのではないか。1つは共働き率の低さである。共働きであっても,パートタイムの低時給の仕事がほとんどである。資格で仕事のできる法曹界や医者も,女性の人材は少なく,多忙を極め,政治の世界にシフトすることはない。大学の研究職には多くの女性が進むが,結婚を機に辞める人は多い。また典型的なピラミッド構造の中を突き進める人は限られている。一般企業でも,男女雇用機会均等法によって就職時に差別されることは減ったとはいえ,責任のある仕事を与えられる女性は少ない。
逆に,女性らしい資格や学問,起業などを積極的に創出する専門系大学を作ったり,女性従業員の受け皿となる企業をもっと多く作る必要があるのではないか。かつての土木建築・機械・化学,エネルギーなどの力仕事では男性が責任を担ってきたが,健康・医薬など,女性の感性が求められる事業は,もっと女性が中心になって開発してほしいと思うのである。
今回,第二次岸田内閣の組閣で,大臣には5人の女性が入ったものの,副大臣,政務次官人事に女性がゼロだったことに,新聞社の女性記者が意見したことで,別の問題が噴出した。女性記者のコメントに対する逆批判である。ここにも,旧態依然とした男性系メディアの理屈がまかり通っている。
ジャニー喜多川の性犯罪について女性記者がテンションを上げる理由は何かを考えてみた - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/9/9 でもコメントしているが,まず筆者を含むどんな記者も,ほとんど理論武装していない。では1人でも女性副大臣がいればよかったのかといえば,半数を女性が占めるまでは納得しないだろう。その解決の糸口はすぐには見つからない。クォータ制を取り入れてたとしても10年はかかる。まして,人数が少なく,層の薄い野党が政権を獲得した場合,責任を取れる大臣の任命は困難を極めるだろう。
今回の布陣にしても,まず責任者としての大臣に適任者を選び,そのサポート役としての副大臣,事務次官に手堅い適任者を配した結果ではないかと考える。
逆に言うと,法曹系や医者,教員など資格を必要とする仕事は,努力次第でポジションを得ることができるが,一般企業の社員のように無資格で就職をできる場合は,「責任を取れるか」という1点でのみ判定される。かつての定年制がある場合は,責任を取り業績を上げた人が昇格する。これは別に男女を問わないはずである。しかし,一般社員の定年以上に役員定年になるまで,会社の業務に専念するには,相当な覚悟が必要になる。男性であっても,せいぜい部長までは昇格したとして,その上を絶対に目指す人は少ない。
お客様がいなければ企業の収入は上がらないが,メディアの場合は広告収入が大半を占める。すなわち,広告主が喜べば何でもありであり,視聴者が喜べば販売収入が入るので,どちらに転んでも収入は得られる。そこにポリシーがあるかどうかである。
もし,女性代議士を増やすことを論じるのであれば,どうすれば増やせるかについて提案をすべきだろうし,メディアで騒いでももはや何の効果もないことを認識して,別の道を探すべきだろう。作家でもいいし,むしろ代議士の道を選んでみてはどうだろうか。給与所得者に独立して無収入から始める覚悟があるかどうかだろう。
ちなみに,筆者の例を言えば,中学生の卒業アルバムには「政治家になる」と書いた。日本のあらゆる面で矛盾があり,正義に欠けていると思ったからだろう。その後,公害問題を技術的に解決する,という目的意識で大学の工学部を選んだ。しかし,一般企業が自分たちの利益を優先して環境問題には後ろ向きだったことも見えてきたため,経済の発展と環境の保全の両面から情報提供をする専門雑誌の記者の道を選んだ。21世紀に入って経済が破綻し,モノづくりが破綻したことで,そのメディアを離脱し,またそのマスコミ企業も離脱した。現在は,環境に深く関わる地球の生物のメディアを通じて,研究者の応援と多くの地球人への気づきのメッセージを発信している。
残念ながら,どの国の政治家も,「国民の生活を守る」と言いながら,環境を破壊し,他国を侵略し,ケンカばかりしている。女性議員が増えたとしても,高齢化問題や少子化問題,介護問題などの根本的な解決策は出てこないように思える。経済成長が唯一の目標で,何でもありというのが国である。また,どんな手を使ってでもいったん金儲けをした人間は,それをたやすく手放すことはない。企業人も政治家もそして芸能人も同じである。
日本の人口問題にとって,今回の内閣の布陣で大丈夫なのかを正し,何のための布陣なのか,その目標についてコメントをする,といった奥深さが足りなかったのではないだろうか。もちろん,答えを出すのは容易ではないだろう。