2021/9/14 西村康稔経済再生担当大臣が,タイトルのようなことを確か発言したのをチラッと見たと思ったのだが,錯覚だったのか,その後,ニュース検索してもどこにも出ていないので,珍しく戸惑っている。この発言の部分だけを聞いたので,おそらく9/12から再度の延長となった緊急事態宣言を解除する基準として,病床使用率を明確にすることが必要だが,中等症病床の状況を正確に把握するには医療機関の負担が増える,といった会見だったように記憶するのである。
各都道府県が準備している病床数は,中等症用,重症用とそれぞれ発表されている。自治体ごとに,毎日の病床使用率を計算しており,ステージ数で発表している。病床使用率が50%を超えれば「ステージ4」であり,毎日発表されている数字である。
筆者が提案しているグラフの最新版(東京都入院数,自宅療養数,調整数 2021/9/14現在)を見ると以下のようになる。
8/21の自宅療養数が26,409人だったのが,9/14段階では6,800人,調整中も1,650となっている。訪問医療の負担も相当緩和されたと思われる。
しかし,中等症病床の入院数は3,127で,9/4の4,084よりは改善しているものの,相変わらずステージ4状態は続いている。自宅療養者や調整中者がいつ入院してこないとも限らない。したがって自宅療養者や調整中者の数がゼロになることが,まず大切なことである。
西村大臣が,中等症者数が把握できない,といった(と思われる)のは,この自宅療養者や調整中者の症状の大きさの内訳が正確に把握できないために,入院している中等症者と合算できない,という意味なのかもしれない。しかし,自宅療養者,調整中者は,酸素濃縮装置が必要な人も相当数いることを考えれば,すべて中等症と同等と位置づけて考えるべきで,野戦病院や酸素ステーションなどの設置対象となるべき数字である。
なんとなく,「自宅療養者数が減少傾向が明らかになってきたので,野戦病院はこのまま設置しなくても」という政策になっているのではないか。まだまだ自宅療養で苦しみ,常に悪化の危機があるので,臨時の施設の設置は必須だと思う。大規模接種センターの受付のプレハブ小屋のように,使用が終われば撤去すればいい。仮設テントよりはきちんとした床や天井,空調設備などは必要だが,仮設住宅ほどの居心地の良さが求められるわけではない。
ワクチン接種が,再度進んできている様子で,接種完了者数も50%を超えたという。抗体カクテル療法を,入院なしでも実施できる通院型の医療機関も出てきた。それでも,東京都の1日の死亡者数は,9月に入っても1日10~20人と,自宅療養者が数倍と拡大した8月末からずっと同レベルで続いている。
自宅療養中の死亡や,自宅療養で容態が急変して救急搬送先で亡くなった方も毎日1~2人はいらっしゃる。
この2つの事実から言えることは,「死者を出さないためには重症化させない」「重症患者を出さないためには,軽症,中等症段階で抗体ワクチン療法をできるだけ使う」「自宅療養での容態急変に即座に対応できる野戦病院の確保と,自宅療養中のモニタリング・治療にも抗体ワクチン療法をできるだけ使用する」ということであり,したがって,「中等症の患者を自宅に放置している今の形を早急に野戦病院収容型に変えて,モニタリングと抗体カクテル療法の適用を積極的に進めること」しかないと思われる。
感染県数が指数関数的に増加しているので,県単位でホワイト・ロックダウンを - jeyseni's diary 2020/7/23 のブログで,「中国武漢で最初の感染拡大があった際,「4000人分の病棟を1週間で作る」と報道され,それは無理なのではと思っていたら,実際に実現してしまった。」という話をした。それから1年経っているが,日本で追加で病棟を作ったのは,もはや「蜘蛛の糸」状態。行政から一般国民への糸は無い状態 - jeyseni's diary 2021/8/20 のブログで紹介した富山市の体育館の100床だけである(10床レベルは各所にあるが)。大規模接種会場を作れるのなら,なぜ救急病棟を作らないのか - jeyseni's diary 2021/5/18 は,ワクチン接種加速の切り札として政府・防衛省の肝いりで自衛隊が3日で設営した。野戦病院を作ることなど訳ないと思うが,一向に号令がかからないのはなぜなのだろうか。
政府は「そのうち感染拡大は落ち着くだろう」「そのうちワクチン接種が進んで落ち着くだろう」というのを待っているだけではないか。現在は第5波が下降に向かっていることと,オリンピックが終わって世界の視線が日本から外れていること,自民党総裁選でCOVID-19問題から政治家の関心がぶれていることなどにより,まったく何も動いていない「ダンマリ状態」である。その間に,経済崩壊が進んでいる。欧米各国での経済回復が進むのと対照的に,日本はいつまでもグズグズしている。
これは,国のリーダーの決断力の無さなのだろう。COVID-19を過小評価した上に布マスク配布などの失政の後に退陣した安倍晋三も,その後を引き継いだ菅義偉も,有事のリーダーではなかった。やはり,日本の政治は戦後以降「平和ボケ政治」だったと言えるのではないか。COVID-19禍においても,アメリカ,中国,イギリス,ロシアなど世界各国は,常に何らかの抗争・紛争状態下にある。「自国を守るためには手段を選ばない」という心構えがどこかにある。
日本のリーダーは,結局は出身地元に利益還元する政策を提案するだけの政治屋でしかない。国境水域での中国とのにらみ合いや,アフガニスタンの関係者救出,そして毎日が戦争状態のCOVID-19病棟での病魔との戦いなど「どこ吹く風」で,どの候補の陣営に付けば自分の将来の出世ができるかだけの「金魚のフン政治屋」ばかりに見える。
上記2021/5/18のブログで,筆者は自衛隊による「救急病棟」設置,という表現を使った。日本医師会が「野戦病院」という言葉を8月半ばから使い始め,これに対して大阪府は「大規模治療センター」という言葉を使うことにした(9月初旬報道)。
とにかく,すべての行動の着手が遅い。決まるまでに議論を重ねるのが民主主義だ,と思っている政治家は,今も「平和な日本」だと思っているだけで,今必要な人材ではない。
「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される」とされている。別に,与党である自由民主党の総裁が自動的に総理大臣になるわけではない。国会内で選挙が行われる。もちろん多数である自民党から立候補した自民党総裁が選ばれる流れになるのだが,党に関係なく国会議員の票を集められれば総理大臣になることは可能である。ならば,自民党総裁選にも関係なく,野党党首とも関係ない,多くの国会議員の指示を個人として集められる人格と指導力のある人材が,総理大臣指名選挙に立つべきではないかと思うのである。まあ,こう言うと,泡沫党の党首が立候補するのだろうが,無党派で世の中のことを考えて,国会議員一人ひとりと話し合って票を集められるような人格者がほしいところである。