jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

トラフって何?--なぜ突然出てきたのか。「大津波」に対する対策はまったく不十分

南海トラフ地震の範囲に関東を入れた方が適切--意図的に外していないか - jeyseni's diary (hatenablog.com)  (2024/8/11)と書いて,個人的には何となく落ち着かなかった。「トラフ」って何だろう,なんだか突然出てきたような言葉だったからである。

 意味としては,「海底の深さ6,000mより浅く凹んだ地形」を言う。6,000mより深い溝を「海溝」と呼んで区別をしている。トラフは英語ではtrough,地理的には「舟状海盆」と呼んでいるようである。日本語訳するとさらに訳がわからなくなるが,地理用語としても,地学用語としても,また地震用語としても明確には出て来ない。

 一方,建築用語では”U字溝”や”道路排水溝”など,細長い船底のような形をしたものや,配管・配線等の各種ケーブルを保護するためのU字形の溝やボックスも”トラフ”と呼ばれているようである。

 地震のニュースで出てくる「トラフ」は,海底の比較的浅いところにあるU字形の凹地のことと考えると,ようやくイメージできた。しかし,一般に地震の原因としてのプレートテクトニクスという考え方では,フィリピン海プレートが大陸のユーラシアプレートの下に潜り込んでいくことで歪みが生じ,地震につながるというものだが,なぜその場所が「海溝」ではなく,「トラフ」という地形なのか,ほとんど説明がされていないように思える。凹んでいる,というよりも,やはり沈み込んで行っているというイメージの方が強い。海溝よりも浅い“浅溝”と呼んだ方がいいような気もする。

 海溝はどんどん沈み込んで行くが,トラフでは沈み込みの途中でプレートが跳ね上がるので地震につながる,ということなのだろうか。

 実際,南海トラフ震源とする大地震は,江戸時代にも頻繁に起きており,1854年安政年間に,安政東海地震安政南海地震があった。ただし,安政地震1855年に江戸で大火を出した地震で,別のものである。その次は1944年の昭和東南海地震,1946年の昭和南地震が記録されている。さらに古い時代にも何度も起きているようである。今回の宮崎の地震が予兆だったとして,次に起きる可能性が高まった大地震を,「南海トラフ地震」と呼ぶのはなんだか変な気がする。令和に起きたとして,「令和東南海地震」と呼ぶことになるのだろうか。それとも「令和南海トラフ地震」と呼ぶのだろうか。

 「トラフ」が一般的にまだ知られていない言葉であることは,2018年に岩波書店が10年ぶりに改定発刊した『広辞苑』第七版でもわずか3行の解説しか載っていないことからも明らかである(SNSは恐ろしい--感情的な批判表現は「表現の自由」ではなく「勝手表現」。規制する技術が必要と感じる - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/2/18)。しかし,もしこの言葉を使うのなら,安政の東海,南海地震津波被害をベースにした予測と対策を講じるべきなのではないだろうか。断層地震である阪神淡路大震災や,直下型の関東大震災などとはまったく異なる対策が求められるからである。

 とりあえず,津波からは逃げる時間がほとんどない。津波が予測される該当地域では,ライフジャケットの用意が先決だと思うのである(津波とライフジャケット--万一飲み込まれても生存率向上に役立つかも - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2024/6/26)。地震による直接の被害より,津波による被害の方が大きいのが,この南海トラフを起点とする地震である。ならば地震よりも“南海トラフ津波”とした方が,対策方法を根本的に考え直すきっかけになると思えてならない。備蓄や停電対策などは二の次なのではないかと思うからである。