ロシアによるウクライナ侵攻から5ヶ月も経過しようとしている。ロシアにとっては止めるきっかけがなくなり,ウクライナにとっては西側諸国の支援という大義名分のもと,こちらも意地でも戦いを止めようとしない。
自由主義,民主主義の考え方からすれば,自国の権利を侵攻してくるわけだから,悪いのは侵攻してくるロシア,正しいのは守ろうとするウクライナ,という構図なのだが,ここまで来ると「本当にウクライナに正義があるのか」という疑問が生じてくる。まぁ,これは平和ボケした日本人が外野から見た見方かもしれない。
まず「戦争」を定義する。軍事同士,軍隊同士の争いであれば,これは「軍事衝突」である。例えば第二次世界大戦でも,海上における戦いは軍事衝突と定義でき,双方の武力の差や作戦の優劣によって形勢が決まる。真珠湾攻撃では,トータルの武力はアメリカが圧倒的に有利だったが,作戦の優劣,攻撃のタイミングなどの作戦で日本が初戦を突破した。しかしその後のミッドウェー海戦などでは,圧倒的な軍事力の差によって日本軍は敗退する。日本軍は,若い志願兵で訓練もそこそこに現地に派遣され,そこで命を失った。しかし,日本を守ろう,本土を守ろう,天皇陛下に尽くそうという高い意識があった。おそらくどの戦いでも,軍隊同士の争いであり,民間人が巻き込まれることは基本的になかった(その後の略奪などの戦争犯罪は別である)。
日本本土決戦を前に,盾となったのが沖縄戦である。ここでは日本軍は,沖縄の住人を盾にした。心ある軍隊なら,民間人を巻き込むのは侵略であり,目的ではないと考えるだろう。しかし,日本軍が住人を盾にしたことで,不幸な沖縄戦が起きてしまった。
住人を盾にされたアメリカは,「住人を巻き込むのは本来の目的ではない」と考えて攻撃を停め,交渉という手段に入るべきだった。しかし,沖縄はアメリカに侵略され,アメリカ領となった。さらに本土への空襲と原爆投下という愚行まで犯し,住人を巻き込んだ。これこそ,「戦争」と呼ぶべき段階である,と考える。
話をウクライナに戻してみると,ロシアがウクライナに侵略するのは,戦争を仕掛けたと定義できる。というのは,ウクライナの領土内で,ウクライナの住人のいるところで軍事力を展開しているからである。まして,一般の施設を破壊する行為は,「戦争」と定義できる。一般の施設や建物は,戦いには不要の存在であり,これを破壊することは住人に攻撃することである。丸腰の相手を攻撃するという実に破壊的な行動である。一般人をも巻き込むという意味では,「テロ」と言い切れると思う。
一方,ウクライナ側の戦い方にも疑問がある。それは,日本の沖縄戦のように,住人を巻き込み,盾にしているようにも見えるからである。これは,ウクライナ側が最初から「戦争」となることを容認していたと見ることができる。
当初から,軍事力ではロシアが圧倒的に優勢と考えられた。ここでウクライナ南部の住人を避難させ,この場でロシアと軍事衝突してまともに戦ってはウクライナに勝ち目はない。だから住人を盾にしてロシア軍の攻撃の手を逃れようとした,という解釈も可能になる。
もし,ウクライナが早い段階で南部から住人全員を避難させ,その戦場で軍隊同士が戦い,そして形勢不利で退却して南部がロシアに占領されたとしても,ウクライナの住人の被害はもっと減らせたのではないか。ウクライナ南部がロシアに占領され,クリミアまでつながったとしても,そこで軍事衝突が終われば,まだ残っているウクライナ南部の港からの穀物出荷などについて,ロシアとの交渉の余地があったのではないか。
つまり,戦いの場に一般住人がいれば,「戦争」になってしまい,どちらかが殲滅されるまで続いてしまうのである。ウクライナ南部から早い段階で何が何でも住人を退去させ,そこを戦場として軍事衝突して争う,というスタイルを取らず,住人を残して盾にしたスタイルは,ゼレンスキー大統領の最大のミスだったと言える。
その膠着した中で,さらに西側から武器の供与を要請し,民主主義の先頭に立っているかのような善人ヅラをされると,さすがに引いてしまう。これはもう正義でも何でもなく,軍事衝突を「戦争」に拡大させてしまった張本人として,西側も糾弾すべきではないかと思うのである。
プロレスでレスラーが闘うのはリングの中と決まっている。リングの外は「場外」であり,場外での闘いは「乱闘」であり,一般客も巻き込まれる恐れがある。しかし,プロレスにおける場外乱闘はエンタテインメントなので,レスラーが一般客を襲うことはない。
とにかく,あらゆる争いは残念ながら起きてしまう。今の地球の経済のアンバランスでは,富める者と貧しい者の差を埋めることができず,人と人,グループとグループ,国と国,そしてテロ集団と国などの関係において利害が対立し,争いの火種をなくすことができない。特に一般住人を巻き込むテロも,残念ながら後を絶たない。
今回のロシアによるウクライナ侵略は,プーチン大統領によるテロである。多くのテロ組織同様,何らかの経済的,精神的な洗脳を行うことで,一般住人に対する殺害が引き起こされている。アルカイダというテロ集団も,ウサマ・ビンラディンの暗殺によって何らかの方向修正が加わった。ロシア全体が,世界に向けてテロを起こすとは思えない。首謀者であるプーチン大統領の動きを早く封じなければ,世界は破綻する。アルカイダと違って核兵器を持っているからである。安倍元首相の死すら,プーチンの行動を止められなかったことがまことに残念である 「プーチン氏が喪に服してホコを納める」というシナリオに期待--凶弾に倒れた安倍晋三氏の最後の功績として・・ - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/7/9。