jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

リセットできるデジタルの怖さ--やはり「リアル」が重要

今の若い人は、生まれた時にはすでにパソコンやスマホ、テレビ、アニメがすぐ横にあった。これが、筆者の世代とはまったく異なる環境である。

    筆者の時代は、科学技術の発展の時期だった。テレビはもちろん、ロケットで地球を離れたり、月に行ったりなど、あらゆる事件がリアルだった。つまり、人類の夢を技術の力で現実に実現してきた時代である。

    リアルな出来事にも失敗は付き物である。しかし、その失敗は、怪我や死、故障、破壊などにつながる。お金もかかるし、時間もかかる。慎重に設計し、間違いが起こらない工夫をし、最後には安全な手段で破壊する方法まで組み込む。成功すれば、これらの安全措置は不要だったことになるが、失敗の可能性をキチンと把握した上での設計である。

    ところが、コンピュータなどのデジタル技術には、この危機感が足りない。プログラムのバグなど当たり前で、不具合が発生してから改善すればいいといわんばかりの設計が多い。

 筆者は,ソフトのマクロ機能を使ってさまざまな自動処理を進めてきた。コマンドラインでの命令から始まって,Lotus1-2-3,Word,Excel,そしてファイルメーカーなど,組み込みマクロは徹底的に使ってきた。しかし,やりたいことは結局は1行のマクロの内容で,これを処理を繰り返し行う,というだけの処理である。個人で使うだけなので,処理をどこで終了するかのポイントだけ指定すれば,エラー処理なしでも使えた。まあ,プログラムとはとても言えない代物である。

 実際のソフトのプログラムには,このエラー処理がいくつぐらい組み込まれているのだろうか。考えただけでも気が遠くなる。モジュール化(構造化)プログラムでモジュール内の処理がエラーフリーになったことで,より複雑な処理をより短期間で組み立てることができるようになっていると思われるが,それでもエラーは発生する。

 AIを,世の中にある多くのプログラムのバグ発見に使ってはどうだろうか。多くのプロフラムエンジニアは,プログラム開発だけでなく,プログラムのバグ発見のために多くの時間を使わされている。生産性が極めて低い仕事である。

 さらに,プログラム開発時にAIを活用することで,もともとエラーフリーなシステムができるかもしれない。ただし,そのプログラムがもはや解読不能なものになってしまうかもしれない。それこそ,AIは「数十年に1度」起きるかもしれないエラーに対してのエラー処理まで組み込むかもしれない。こうなったら,本体プログラムに対して何百倍ものエラー処理部分が加わった巨大プログラムになってしまうかもしれない。しかし,社会インフラが停まるほどのエラーが頻繁に起きている。プログラム側で対処すべきだろう。

 一方で,デジタルのいいところは,簡単に「リセット」できることである。パソコンでもスマホでも,かつては「リセットボタン」というハードウエアスイッチが備えられていた。おそらく回路基板上の信号線ないし電源線を物理的に遮断してリスタートしたり,初期化したりしていた。現在は複数のキー操作の組み合わせで,ソフト的にリスタートすることが多い。

 大規模なコンピュータシステムは,ひょっとしたらリスタートができないかもしれない。エラー発生時は,できるだけ速やかに切り替えられるようなダブル(タンデム)システムを構築していることもあるが,100%復旧するとは限らない。リセットしてから立ち上げるよりは短時間で復旧するのかもしれない。

 AIがシステムを設計すると,さらにリセットが難しい仕組みになってくるかもしれない。たとえば電源がオフになったときのエラー処理も組み込まれているから,電源をオフにしてもリセットできないシステムができてしまうかもしれない。

 リセットは「ゼロ」からの再立ち上げである。基本的にほぼ正常に戻るのがメリットである。ただ,正常に戻るまでにも時間がかかる。エラー前の状況に戻るかどうかの保証もない。エラーの原因が不明になってしまうかもしれない。それが,デジタルの怖さでもある。

 個人レベルのパソコンやスマホでは,本人がリセットすればそれほどダメージはない。しかし,パスワードロックなど,本人がリセットできない状況になると,完全に初期化するしか方法がなく,所有者にとっては大きなダメージとなる。社会システムではリセットすることで非常に大きなダメージになる。

 世の中の多くの出来事がデジタルで動きつつある。特に経済が仮想空間上のマネーゲームで繰り広げられていることが,どうにも理解できない。短期利益を得ようとする投資家は「投機家」として全面的にマークすべきではないのか。

 一方で,リアルなモノ,たとえばすべてのリアルな製品,食糧,エネルギー,それを移動させる運輸システムなど,人が直接関わるモノの価値を過小評価してはならない。さらに,衣食住を支えているリアルなシステム,そして人間の生命という最も大事なリアルを一瞬のうちに崩壊させてしまう戦争とその武器というリアルなモノをいかに排除するかについても,もっと真剣に考えなければならない。宇宙ゴミも同様だが,リアルなモノがゴミにならないようにさらに知恵を出し合わなければならない。リアルは「リセットできない」からである。