21世紀の戦争が,ドローンによって様変わりした。1発数千万円もするミサイルの代わりに,1機数万円のドローンを大量に投入する。
当初は,ウクライナというある意味での弱小国が,ロシアという大国の攻撃に対する偵察・監視などの補助的な役割で使われていた。ところが,「自爆ドローン」という新しい使い方で,多彩な攻撃ができる手段へと変化して行った。小型ながら,正確に目標に到達し,ビルを倒壊させるほどの爆薬も搭載できる。
ロシアによるウクライナ侵攻から2年半が経過し,今度はロシアも攻撃型のドローンを使い始めた。世界一大量の核兵器を持つロシアだが,核兵器による抑止力が効かず,かといって核兵器を使うこともできない。ウクライナには西側から大量の兵器が供給される。やられっぱなしの状況を回避するために,ロシアも攻撃型ドローンを使い始めた。
当初、ロシアはイラン製のドローンを散発的に使っていた(航続距離2000kmのイラン製と思われる攻撃型ドローン--これはもう巡航ミサイルだ【追記あり】 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2022/10/23)。しかし、戦争状態が膠着するにつれて、従来型の兵器の生産が間に合わなくなっている。そこで自国でもドローンの生産を始めて使い始めた。
一方、北朝鮮はアメリカのトマホークにそっくりの偵察用大型ドローンを開発していたが、ここに来て自爆型ドローンの開発と実戦配備の計画を明らかにした。韓国にとっては脅威になる。
すでに、中国は大量のドローン兵器を部隊として構築し、台湾への圧力を掛けている。この部隊は、ドローン空母に載せてどこにでも移動でき、日本を標的にするという脅威もある。
ドローン単体では偵察任務しかできない。しかし、大量のドローンがそれぞれ自律的に攻撃目標を設定されたり、さらに自律的に敵を判定したり、さらに連携して波状攻撃をするようにプログラムされていたとすると、ある意味で非常に機動性の高い歩兵軍団を運用することになる。しかも、多少の犠牲があっても、人命の損失には至らない。要は、空飛ぶ歩兵軍団、あるいは空飛ぶ殺人ロボット軍団となるのである。穴に隠れても突っ込んで来るし、障害物の後ろにも回り込んでくる。逃げ場がなくなる。
自爆ドローンが、精密に目標を設定されて、大量に同時に攻撃を仕掛けられたら、これはジュウタン爆撃よりも効果的である。
民間用ドローンは9割が中国製だが、その軍事転用は容易である。自爆ドローンは低コストで生産でき、小国でも有力な兵器になる。つまり、大国と小国が互角に戦える図式ができあがってしまったのである。
もはや、この動きは止まらない。しかし、せめて国連は、「攻撃型ドローンを生産したり、攻撃を目的として使用した国や組織をテロ国家、テロ組織と定義する」と提議すべきである。すると、とりあえずドローンによる攻撃は抑止される雰囲気が生まれる。
この定義だと,大国であろうと,もしドローン攻撃を仕掛けたならテロ国家ということになる。
ドローンの定義については諸説ある。筆者の捉え方だと,ドローン(drone)はオスのハチから来た言葉で,ハチのような音を立てて飛ぶイメージなので,民生用によく見る4つのプロペラでホバリングするタイプだと理解している。自爆用や偵察用に使われる固定翼の飛行機型は,UAV(unmanned aerial vehicle:無人航空機)とした方がいいと思う。ただ,自爆型のほとんどは飛行機型なので,本題の定義からは外れてしまう。
しかし,4つのプロペラでゆっくり接近するタイプのドローンは,カメラで観察された上で個別に狙いを定めて攻撃したり,また隠れた場所にまで入り込んで攻撃するといったインテリジェンスがあるため,実はロボットと言ってもいい。現在はリモコンでの操縦が多いが,いずれ自律飛行し,単独で相手を敵か味方か判別して攻撃するというインテリジェンスを持つだろう。すると,アシモフのロボット3原則の最初にある「ロボットは人間に危害を加えてはならない」に反することになる。この意味からも,ドローンによる攻撃は否定されるべきである。