家事は大変だが,中でも一番面倒かなと思うのが,食事の後片付けである。シンク周りに汚れた食器や箸,スプーンなどが乱雑に集まる。これを洗って,水切りし,乾いたら食器棚に戻す。食事の用意をしたなら,野菜くずを生ごみの袋に移し,冷蔵,冷凍食品を使えば,包装していたビニール袋の汚れをすすいで,ゴミ箱に移さなければ片付かない。シンクの排水口には細かいゴミが集まるので,週2回は取り出してゴミ袋にゴミを捨て,排水口を洗う必要がある。
筆者は物事が片づくことは嫌いではないので,片づけ始めると集中して一気に終わらせてしまう。慣れれば何ということもないことである。歩いて数歩の範囲で,すべての仕事が30分ほどで片づく。
一方,掃除は苦手である。同じ時間で掃除をするにしても,家中を歩き回ったり,モノを移動させながら,腰をかがめて掃除機を動かす。一通り終わったと思っても,モノの間からホコリが見えたりして,なかなか達成感が得られない。
洗濯はもはや自動洗濯機任せにできる。かつては2槽式の洗濯機で,洗濯・すすぎと脱水の間で洗濯物を行ったり来たりさせたが,それぞれの工程で3~5分間は放置できるし,そのまま多少放置しても問題はない。時間に縛られることはない。あとはまとめて干せばいいだけである。
洗濯機はその後,自動洗濯機に進化し,さらに水平ドラム式だと乾燥機能も組み込むことができた。洗濯物を放り込めば,あとは乾燥した洗濯物を取り出して,畳んで片づければ済む。掃除機はその後,ロボット掃除機が出てきたが,モノが多すぎる筆者の家では導入は無理である。
一方,皿洗いはかつて自動食器洗浄機を使ったことがある。まあ便利である。よく出来ている。しかし,油汚れの皿も,味噌汁の椀も,全部まとめて洗う。油汚れがない汁椀がいったん油汚れまみれになる。汚れ落としも,洗剤液を吹き付けるしかなく,そのために洗浄力の強い洗剤を使う。研磨剤も入っている。模様を焼き付けた食器などは,洗う回数を重ねると模様が消えてしまう。また,ご飯粒のような固着した汚れは,水流の力だけで落とすことは難しい。結局,食器洗浄機の中に食器をうまくセットするには頭を使わなければならないし,洗い終わってから食器棚に戻すのも人手が必要である。
結局,ご飯粒を落とす,シミを落とす,汚れを落とすなど,人間が気になる部分は今の機械では落とせない。掃除ロボットに視覚センサーが付いてきたが,障害物の判断しかできない。
人間の視覚とその情報の判断は,まだまだ未知の領域ではないだろうか。視覚センサーの映像解析にこそ,AIをもっと活用すべきではないだろうか。
街中にある防犯カメラは,かつては「犯罪の抑止力」になるとされていた。しかし,令和時代の日本では,「防犯」はもはや死語かもしれない。学校,コンビニ,ファストフード店,そして駅前まで,防犯カメラがあちこちにあるにも関わらず,凶悪な無差別殺傷事件が発生している。防犯カメラなど,何の意味もない状態である。
新型コロナウイルス禍でマスク着用は当たり前になった。これでも顔が半分隠れてしまう。花粉症の季節に入り,メガネを着用する人も増えている。一方で,ニット帽子を深々と被る若者も多い。さらにコートのフードを被る人が多い。これでさらにうつむき加減に歩く。顔認証はほとんど意味がなくなっている。さらに,自転車や電動キックボードでヘルメットの着用が努力義務化され,バイクはフルフェースのヘルメットを着用する。犯行後に人間を特定するのは容易ではなくなっている。
画像の解析精度を上げると同時に,感情分析を全面的に取り入れ,犯罪を起こす可能性のある人物をピックアップし,犯罪を未然に防ぐ方にAIのパワーを使う必要があると思うのである。
正直言って,今の生成AIは人類を破滅に向かわせると思う。世界中の情報を仮にすべて学習すると,答えが出なくなるはずである。世の中の「常識」はまったく正反対の価値観が存在するからである。単なる雑学コンピュータに成り下がるだけである。
これに対して,視覚情報を的確に判断することで,現在,人力でしかできないが評価の低い仕事,いわゆるエッセンシャルワークの代替が可能になる。
別にエッセンシャルワークを否定しているわけではない。彼らの仕事を過少評価し,差別をする経営者がいるからである。最低限の時給で厳しく働かせ,要らなくなれば簡単に切り捨てる。これを何とか救えるのが視覚AIだと思うのである。
二足歩行ロボットや四足歩行ロボットは,いよいよ殺人兵器になろうとしている。いずれ,一般人に危害を加えるようになる危険性をはらんでいる。それよりも,介護,看護,分別,清掃などの作業を,視覚AIのアシストで実現することが,人類の平和につながるように思える。
中国のDeepSeek社による生成AIの発表で,世の中がまた大混乱に陥っている。なぜ,人間は自分の利益だけを追い求めるのだろうか。それがどういう影響を与えるのかまで思いが及ばないのだろうか。まず,視覚AIに特化した開発と,既存の生成AIを利用した詐欺犯罪(音声合成,顔合成,詐欺動画など)を見抜く対抗技術の開発が急務だと,筆者は考える。