jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

日本はやはり「衰退国」ではないのか

筆者は,日本が最大限に経済発展した1980年からの20年間を,関連する情報業に携わった。マイコンを中心とした自動化技術が花開き,無人化,自動生産などに日本人らしい緻密な行動でムダをなくし,低コストで高品質な製品を世界中に供給した。自動車の電子制御,ロボット,半導体液晶テレビなど,最も華やかな時代だった。この時代に,マスコミ人として情報提供でサポートできたことは,実に幸せだったと思っていた。しかしこれを「実にラッキーだった」と言い換えざるをえないのかもしれない。

 もし,筆者の社会人生活が1960年からの20年間だったら,日本は公害問題を世界に撒き散らしながら独りよがりの経済発展をしていた。逆に,2000年からの20年だったら,世界経済が破綻し,坂を転げ落ちる日本を見なければいけなくなっていた。おそらく,いずれの時代も情報業に携わるという選択肢がなかったのではないかと思う。

 いまや日本は先進国ではなくなり,発展途上国にも追い抜かれ,「衰退国」になりつつあるような気がする。

 「衰退国」は,筆者が初めて使用した言葉かと思ったら,「Newly Declining Countries」という言い方が2013年には使われていたようだ。主に日本とドイツを指すらしいが,当初は単数形で,その指し示す国は,まさに「日本」1国だったという。ヨーロッパを中心に,そのような認識がすでにされていたのかと思うと,愕然としてしまった。

 感覚的には,英国病と言われたイギリスが経済発展で頓挫したのを受けて衰退国のイメージだったのだが,王室はまだまだ健在,EUからの独立で世界に先駆けて環境問題宣言も行った。ワクチンの独自開発と積極接種により,新型コロナウイルス禍の致命的な状況から脱して抑え込みに成功しつつある。ジョンソン首相の言葉の力も併せて,「イギリス,力強いな」という印象を世界に発信している。

 日本は,この新型コロナウイルス禍で世界に誇れる結果を何も残していない。ワクチン開発はできない,ワクチン輸入も遅れを取り,接種の段取りも何もない無茶苦茶状態である。医療は2回目の医療崩壊をしつつあり,今度は本当に崩壊するように見える。2回目の緊急事態宣言で従来ウイルスの拡大に対応できずに医療崩壊の危機を招いたが,今回の第3回目では,おそらく変異ウイルスの拡大速度にはまったく追いつくことができず,医療破綻が目に見えるようである。医療関係者へのワクチン接種も進んでいない。経済は伸びず,その中で聖火リレーに何百億円もの税金が使われている。

 経済も衰退しているが,日本の頭脳も衰退している。というか,何も考えていないのではないかと思える。

 日本人というと,海外から見たら「礼儀正しい」「誠実」「マジメ」と見られているらしい。「日本はゴミが一つもない美しい国」という評価もある。たぶん,お客様として受け入れる施設は,そのようなおもてなしを提供しているために,評価されているのであろう。「おじぎ」の挨拶は「丁寧さ」「丁重さ」「自分を立ててくれる」などという印象を与えるだろうし,家に入るときに靴を脱ぐ習慣は,家の中が美しい,美しく保とうとしている,という印象を与えるのだろう。

 しかし,これらがすべて「虚像」であることは,この文章を読んでいる日本人ならみな感じていることではないだろうか。

 日本一の清流と呼ばれる四国の四万十川を例に取ると,この川の特徴は流量が多く,流れが急なために,水が途中で淀むことなく海にまで流れる。しかし,周辺の街からは排水が垂れ流し状態である(最近は管理はされつつある)。多少の排水をそのまま流しても,川が海まで流し去ってしまう。さらに海は大海原に拡散してしまう。

 海に囲まれた日本は,何でも「水に流してしまう」という考えがずっと続いてきた。福島第一原子力発電所の事故後の冷却水の海洋放出にしても,考えてみれば「当初からその想定だった」と思われる。海洋放出しないことが前提だったなら,冷却水が増え続けている段階で岩盤掘削などの手段を講じていたはずである。タンクの個数が増えるペースはだいたいわかった段階で,工事の規模も決められていたはずである。なし崩し的に海洋放出をすることになるだろう。原発廃水の海洋投棄を改めて支持 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/4/13。結局何も考えていない日本人は,これをするしかない,というわけである。

 新型コロナウイルスが拡大を始めた2020年の頭に,中国では突貫工事で10日間で1000の病床を作ってしまった。日本の第三波の際に,同じように病床を作って対応していれば,自宅待機で亡くなる患者を出さなくて済んだと思う 公立病院に「新型コロナウイルス専用病棟」を10日で作る - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/1/15。「放っておけば,そのうち収まる」というのだろうか。

 自治体,政府,専門家会議も,それぞれ責任の押し付け合いをしており,このために,対策が決まるまでに3日,効力を発するのにさらに2日かかり,結局,「様子を見て」「意見を聞いて」「調整して」対策が出るまでに1週間かかる状況である。その代わり,対策期間が終わると,即座に平時に戻してしまう。メリハリもなければ,罰則,拘束力もない。世界中でこれだけ右往左往している国もないのではないか。

 せっかく1年延長した東京オリンピックは,おそらく開催はムリだろう。日本も含めて無観客で行い,選手村と競技場にバブル(ホワイトゾーン)を作って感染しない環境を作り,毎日のPCR検査を実施して,初めて実現ができるような競技大会に,世界中からどうやって選手は来日したがるだろうか。「オール・オンライン・オリンピック」で行こう - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/3/20 と提案したが,第四波の真っ只中の国に他国から来るとは思えない。

 ワクチン確保の契約も「周りの国の様子を見ながら」いたため,実際に契約しようとしたら数が足りず,先進国はおろか,発展途上国よりも遅くなるような状況である。正直言って,ファイザー社は現在,複数の変異ウイルスに対応できる新バージョンのワクチンの開発から製造へとシフトしつつあると思う。そこで,すでに各国に供給している従来型ウイルス用のワクチンと交換し,古い方を日本に転送する,という形になるのではないかと思う。従来型ワクチンでもそれなりの効果はあるが,新バージョンの方が効果が高いことは考えられる。「後進国から余ったワクチンを分けてもらう」ような形になるのではないか。それでももらえればありがたいが,届いたワクチンにアリがたかるように争奪戦が起きている状況を,世界各国はまたどのように見るのだろうか。まったく恥ずかしい。

 今の世界では,「持続可能な発展目標」(SDGs)がキーワードなのに,日本は「発展」どころか「衰退」の道をたどっている。レジ袋削減だの,マスクなしで騒ぐ乗客だの,話題が実にみみっちい(貧乏くさい)。この時期に,医療関係の社会面記事が起きるのも情けない。看護師400人,医師100人が退職した大病院がある一方で,送別会でのアルコール会食など,なぜそういう事件が起こるのか,筆者の頭ではもう考えが及ばない。こちらの頭がおかしくなってくる。

 沈みつつある泥船に乗り続けて,黙って沈むのを待つ人,必死で水を掻き出そうとする人がまだいるのが,今の日本だが,結局このままだと沈むのは時間の問題である。早く内側に別の板を張って沈まない船を作る。これがパラダイム・シフトである。もちろん他の船に乗り換えてしまうのも手ですが。しかし,沈まない船ができた暁には,それまでドンちゃん騒ぎをしていた人には降りていただきたいものだと思うのである。