福島第一原子力発電所の水素爆発,メルトダウンから10年。今も増え続けている冷却水を,いよいよ海洋投棄する,と菅義偉首相が発表した2021/4/13。筆者はすでに
福島原発の汚染水を放出する件 - jeyseni's diary 2020/8/27の段階で,海洋投棄しか方法がないと意見している。
これに対して,韓国,中国からは直接的な非難が,台湾からは懸念が表明された。アメリカや国際原子力機関(IAEA)は,海洋放出については安全基準に合致しているとして評価している。
福島県の漁業組合を中心に,日本の漁業関係者は一斉に反発。野党も反発している。一方,大阪府の吉村知事は,大阪湾でも要請があれば放出に協力すると表明,海洋放出を支持した形である。
代案としては,地中深くに穴を掘って流し込む,コンクリートに混ぜて固定する,過熱蒸発させる,自然蒸発させるという4案がある。地中の場合は滲み出し方が不明,蒸発の場合はその後の空中拡散の流れが不明,コンクリート詰めは身近に廃棄物として残る,など,こちらも問題を持っている。
海に放出すれば,当然海は汚染される。しかし,海というキャパシティと,海流という予想可能な流れがある。漁業資源により影響の少ない流し方が考えられるため,筆者としては唯一希望のある案である。頭ごなしに反対反対と言っても仕方ないと思うのである。実現可能な代案を出して議論してほしい。
海洋投棄を支持している吉村大阪府知事は,残念ながらこの発言によってまた窮地に追い込まれることになるだろうが,筆者は正論だと思っている。
それにしても,陸地にある田んぼや畑が放射性物質で汚染されたのは,水素爆発に伴って空中に噴出した放射性物質が降り注いだからである。しかし,これは雨でも流れるものではなく,地表を削ってすき込むなどの方法で少しずつ回復している。
一方,海洋汚染は,陸地に降った放射性物質が,川から流れ込んで行ったためだろう。陸地の汚染が完全になくなるまでは,汚染の原因はなくならない。現時点では,汚染物質はまったくと言っていいほど検出できない状態にある。
それでも,風評被害は続いている。ここに,汚染水を海洋投棄すれば,さらに被害が拡大する,というのが一般的な理由である。しかし本当にそうだろうか。
実際に,現在の汚染水を放出してみない限り,どのように汚染が再発するのか,あるいは再発しないのか,机上の空論になってしまう。筆者は,ほとんど影響は出ない,という方に賭けている。単なるギャンブルではなく,数字で示せるとも考えている。
別に菅首相は,新型コロナウイルス禍の最中に既成事実を作ろうとしているわけではないと思う。明らかな自然破壊を引き起こしている沖縄辺野古基地問題とは違い,水の放出という極めて静的な処理だと思っている。海中モニタリングポストを作り,監視しながら放出する,というしかないのではないだろうか。