jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

結局,貧乏クジを引いた東京オリパラ2002

東京オリンピック2020の招致が決まったのが,2013/9/7。アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたIOC総会である。立候補は,トルコのイスタンブール、スペインのマドリード,そして東京だった。滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」プレゼンが印象に残っている。安倍晋三総理,猪瀬直樹東京都知事が先頭に立ってアピールした。

 東日本大震災が2011/3/11。それから2年。「復興五輪」がテーマになった。

 しかし,それから10年。いまだに復興していない。福島県でもまだ立ち入れない地域がある。東京電力福島第一原子力発電所は,廃炉がまったく進まず,冷却水をタンクに溜めるだけため,そろそろ限度に近づいて放水計画を進めている。いまだに福島近海の魚は,風評被害で売れない。

 オリンピック誘致を復興の原動力にする--その発想は悪くはなかった。オリンピックの準備と並行して,東北の復興,原発廃炉を進め,オリンピック開催時にはすっかり立ち直った日本での開催ができることが目標だったに違いない。

 しかし,戦後復興の象徴のような経済の立て直しとは異なり,震災からの復興は技術的にも予算的にも,そして心情的にも,復興しなかった。正直,2020年の段階で,廃炉が順調に進み,全員が故郷に戻って復興に力を入れている段階になっていれば,オリンピックも進めてよかったが,復興が遅々として進まない中で,「やはりオリンピック開催は無理」という判断をすべきだったのだろう。スポーツの祭典をしても,観光誘致にはなっても震災復興にはつながらないからである。

 そこに2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)禍が追い打ちをかけた。世界各国で人流を抑えるロックダウンが行われ,この基本的な感染症対策によって感染拡大は初期段階で抑え込むことができると筆者も考えていた。2020年秋には解決し,観光も元に戻っているはずだった。

 しかし警察や軍隊の権力によるロックダウンをした各国も,国民の高い意識による自己制限で乗り切ろうとした日本も,封じ込めに失敗した。東京オリンピック2020は1年間の延期が決定され,ここで抑え込めるか,あるいは抑え込めなくても拡散を防げる方法を確立して,オリンピック開催にあたってそのモデルを盛り込み,COVID-19禍の中でもオリンピックを開く方法を講じるべきだった。

 しかし,結局はオリンピック開催に当たっての手段は何も構築されなかった。選手村の中での動線分離などの方法が実現していただろうが,何も行われず,結局選手村での感染拡大も進んでしまった。

 結局「何とかなるだろう」「その場になればいいアイディアも出てくるだろう」ぐらいの感覚で,箱モノづくりばかり進めたということになる。

 これに加えて,近年の地球温暖化による異常気象で,日本の平均気温が数度上がっていることから,マラソン競技が札幌で開かれることになったが,ほかの屋外競技は都内を中心に開催されることになった。案の定,熱中症にかかる選手も出てしまった。8月開催なら,最初から札幌でという選択肢もあったはずである。当時から「なぜ東京で?」という疑問があった。これほど込み入った街で,交通も制限したような状況でオリンピックを開くことによる経済損失も予測できた。1964年の敗戦復興五輪とはまったく条件が違うのに,なぜ誘致に名乗りを上げたのかいまだに不明である。当時の安倍首相,猪瀬都知事のパフォーマンスだったということだろう。

 これにCOVID-19禍が加わった。日本は,マスクを中心とした国民性による感染拡大防止ができるかと思われたが,結局これは夢に終わった。ワクチン接種でしか,拡大を防ぐことができないが,ワクチン開発レースでも,治療薬開発レースでも遅れを取った。そして,開催直前になってからのまさかの「緊急事態宣言」突入。

 東京オリパラ2020を辞退するチャンスは何回もあった。2015/7に発表された大会エンブレムのデザイン盗作をした段階で,筆者は辞退すべきだと思っていた オリンピック中止を宣言した人がリーダーになれる - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/5/6。予算に対して建築費がどんどん嵩んできたときにも,これ以上出費を抑えることができない,と辞退するチャンスはあった。福島原発廃炉が進まない段階,そしてCOVID-19禍。どれも解決できなかった。

 正直言えば,やめられなかったのはすべて,安倍前首相のパフォーマンスのためだったと思われる。COVID-19禍は安倍氏にも予測不能だったろうが,最後は病気を理由に途中で逃げ出した形になる。「横綱休場」みたいな休養取りという印象である。

 竹ヤリを持って前に進むしかない敗戦直前みたいな状況になっている。当時も,軍部に押し切られた昭和天皇が開戦を宣言し,最後は昭和天皇が敗戦宣言をして収拾を図ることができた。東京オリンピック2020も,令和天皇のご心配の拝察があったにも関わらず,開会宣言を祝意を削った不本意な表現でなされた。人間天皇の3代目としては,これ以上の宣言をされることはできないだろう。そうすると,やはりWHOか,ローマ法王かがメッセージを出されるしかないのではないだろうか。あるいは,当事者である選手がボイコットして帰国する,などの強行態度をどこかで示す必要があるだろう。