筆者が情報源としてネットニュースを参照していることは紹介した。が,かなりの情報はクズ情報である。これは個人的な感想であるので,予想のつく方はスルーしていただきたい。
クズ情報と筆者が感じる最大の切り口が,テレビのワイドショーのゲストコメンテーターの一言を,さも「私が聞いてきました」風にちょこっとまとめる手法である。「○○に対して○○さんは○○とコメントした」というだけでアップロードされる。おそらく,文字起こしバイトに1件数円でまとめさせるような類の記事だろう。1時間の番組を見て20本の記事をまとめたとして,時給100円にもならない。これをサイト側はアップして,広告を集めて儲けるのである。記事の中身についても,実は意外に評点は厳しく,採用されなければ1本と数えてもらえないこともある。コピペしたであろうというチェックも必ず入る。割に合わないバイトである。
しかも,コメントの内容がくだらないので,よくこれを1本として通してアップしたなと,あきれることも多い。名前の通ったコメンテーターだからという理由もあるのだろうが,ただ芸能人的に名前が知られているだけで,中身のないコメントが多いことは以前から指摘している通りである。
もう1つのパターンも,コメンテーター自身のブログなどから抽出した内容である。「自身のブログで○○とコメントした」的なニュースである。これも同様に,バイトで情報が集められる。当然,同じ人のブログは複数の人が読んでいる。内容は同じである。10人が読んでいれば,そのうち採用されたとしても1本である。実に虚しいバイトと言うよりほかない。
もっと酷いパターンは,「これは何でしょう」的な写真を目次ページに表示し,これをクリックすると,次から次へとページをクリックしなければ最初の写真が出てこないように仕組んだページである。10枚20枚は当たり前。50枚クリックしても,最初の写真が出てこない。途中の写真は,どうでもいい写真ばかりであり,結局はクリック数を稼ぐための手法でしかない。
こういう観点で見ると,自分たちの社会的存在のために,自らルールを決めて遵守することを明言しているマスコミという組織は,健全な価値の維持に貢献している。本来は,その活動を支持するために購読料を支払い,広告料を支払っていただくお客様がついてくることで企業活動が成り立っていく。経済の原則である。
しかし,ネットニュースは,ルールがない。情報発信者がほぼ個人なので,正確さ,情報の確認,公序良俗などの意識を期待しても無駄である。また,価格についても,まったくの保証がない世界である。
通信販売が成り立つ基本は,金銭と商品というリアルな交換があるからである。説明に対して商品の仕様や性能が違えば,返品・返金のためのクーリングオフも成り立つ。しかし,「製品の評価」という情報は,ネットニュースと同様,すぐに信じると失敗する可能性の高い情報である。中には本当に不良品が混じってくる可能性はあるが,どう読んでも実際に購入せずに評価だけ書いている記事も散見される。悪意のあるコメントも半分ぐらいはあると見ていいだろう。
本来なら,人の発言やコメントを書くのは引用であり,勝手に引用することは,著作権法違反あるいは人権侵害という犯罪行為である。特にネットニュースは,情報の出元以外はすべて引用なので,立派な著作権法違反になる。新聞社のオンライン記事をそのままリンクとして掲載したポータルサイトが著作権違反に問われたが,その後はもう何でもありな無法地帯になっている。
ブログやSNSに対する誹謗中傷発言も,最も質の低い情報と言うことができる。情報というより,これはもうハラスメントという犯罪であり,脅迫という犯罪である。その発言にリツイートすることも,犯罪幇助と言うことができる。
これだけ多くのネット犯罪が起きているにも関わらず,相変わらず刑法・民法,その他既存の法律で対応しようとしているので,警察という取り締まりのプロも知識がなく,法律家も方法がなく,捕まえられない。
プラットフォーム側でブロックする方法を適用すべきと思うが,そもそもプラットフォームを運用している側に,情報の質についての知識も認識もなく,「これは表現の自由だ」と居直っている。万人の目に触れる可能性のあるメディアが,すべて自分勝手な主張を発信していては,すべての組織は存在し得ない。プラットフォーム側がダメなら,傍受してAIで監視・ブロックする流れを作るしかないが,これも誰が管理するのかという問題がある。
筆者なんかは,マスコミの経験もあり,また情報発信についての常識を持ち合わせていると思うが,それはそれで1人の思い込みにすぎないのかもしれない。まあ,筆者のようなこういう真面目な(と勝手に思っている)論評が,逆に今の世の中にとっては「質が低い」と思われているのかもしれないし,うまくフィルタリングされて広がっていかないのかもしれない。すくなくとも,人に迷惑をかけることもなく,また自分が攻撃を受けない中で,1人で情報発信(いや情報書き込み)をしているにすぎない。賛成の意見は欲しいが,反対の意見はできれば聞きたくない,というわがままな情報発信者ということになるのだろう。