jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

プロパガンダは日本にもあった--大本営発表と天皇制。しかし今や「平和」思想そのものが日本のプロパガンダなのではないか

1941年(昭和16年)12月8日,日本軍はハワイ島パール・ハーバー真珠湾)のアメリカ軍の戦艦や空母を奇襲した。いわゆる第二次世界大戦の始まりである。その後,戦線は太平洋の諸島に広がり,「日本軍は勝利」という報道が国内では流されていた。いわゆる「大本営発表」である。実際は,アメリカの反撃で苦戦したり,玉砕した地域もあったが,日本軍側の成果のみが報道され,これを聞いていた国民は,戦争の勝利を疑わなかった。天皇陛下昭和天皇)が始めた聖戦であるという報道を国民が信じ,1945年8月15日の玉音放送までは,「天皇陛下のために」と信じて自らを犠牲にしても相手に突入するという特攻隊精神が日本にまん延していた。

 戦後の憲法改正で,天皇が君主から象徴に変わり,人々の生活が徐々に豊かになるにつれて,天皇への心酔は覚めていった。現在から見ると,この心変わりそのものはかなり恐ろしい印象を受ける。生活が豊かになることは,お金によってもたらされたものであり,その後,高度成長期には日本は「エコノミック・アニマル」とも呼ばれ,「カネのためなら何でもする国民」と世界から思われた。海外から盗んだ技術を自分のモノにしてしまう器用さと,努力を惜しまない誠実さが当時はあったとはいえ,金儲けが一番価値を持つものだ,という意識に成り下がってしまった。円高で輸出に有利だったために,原料を海外から安く買って付加価値のある製品を作り,これを海外に高く売って外貨を稼ぐという経済モデルがうまく回ったのが,戦後から20世紀末までの日本である。

 その後,やはりカネに目がくらんだ技術者が韓国や台湾,そして中国に雇われ,日本の製造技術が海外流出した。すでに賃金水準が上がっていた日本でモノづくりするよりも,この東アジア地域の方が人件費が安く,世界の工場とまで言われた日本の製造業は一気に廃れていった。カネを運用する企業がのし上がってきたが,2000年以降はバブルも弾け,大手証券会社の大型倒産などが相次いだ。国としての産業は崩壊し,カネに目がくらんだ人たちが個人で「投資家」と称して私欲をこやしているだけで,日本全体は沈んだままである。

 そして2020年に勃発した新型コロナウイルス禍でも,日本は何もできなかった。世界に供給するワクチンを開発する能力も,ワクチンを量産する能力も,持ち合わせていなかったことが明らかになった。2022年2月16日に勃発したウクライナ戦争では,ロシアを批判する声明は出すものの,軍事力を持たないために北方領土交渉を一方的に打ち切られたり,エネルギー供給で自国技術を出せなかったり,はたまた騒ぎに乗じて北朝鮮のミサイル実験の練習台に日本海が使われるほど,見下されている。

 フランスやドイツは,ロシアからのエネルギー購入を取りやめる決定をしたが,それに代わるエネルギー源として,フランスは原子力発電所,ドイツは再生可能エネルギー政策をそれぞれ進めると発表した。一方で日本は,ロシアからの天然ガスを輸入しないと決めても他から高い天然ガスを調達せざるを得ず,また石炭の輸入も止めると宣言しても,今度は国内の石炭火力発電所が運用できなくなるというジレンマを抱えている。自国でエネルギーを生み出すという具体的な政策は,いまだ何一つ出されていない。国民に電気を節約しろ,と言うだけで,休止している原発を緊急に再稼働を許すとか,水素燃焼発電を1年後に実現するとか,何の手も打たない。

 電気や水,ガスなどのいわゆるライフラインをいち早く整備した日本は,いわば「平和思想」が一種のプロパガンダになっているようにも思えてくる。ミサイル実験に抗議はするものの,月に6発もの実験を許してしまうのは,「まさか本土には打ち込まないだろう」という平和思想を国民に植え付けているからではないのか。仮にウクライナ戦争が世界に波及したとすると,攻撃先はアメリカやイギリス,フランス,ドイツなどとともに,アジアでは唯一日本が対象になる。そのとき,日本はアメリカが守ってくれるという妄想を国民に植え付けてしまっているのではないか。アメリカも攻撃を受けるような状況で,他国を守ることなどできないし,実際,日本が攻撃を受けても自衛隊の持つ数十発の迎撃ミサイルPAC3しかなく,これも実戦で使ったことがないので国民を守れるとは到底言うことはできない。

 食糧の自給率も低い。エネルギーの自給率も低い。有事にわざわざ日本を救ってくれるような余裕のある国はいまやほとんどない。では唯一,富を蓄えている中国に頭を下げるかといえば,それもできない。

 今や,家電もコンピュータも作れなくなった日本の製造業の土地や人員を,植物工場や陸上養殖工場に一気に転換して食糧自給を促進できないか。休耕地で再び稲作をできるような農業振興策は打ち出せないか。そして日本独自の水素燃焼発電に一気に投資して世界に発信できないか。

 有事を前提とした新しい政策を何も打ち出せない,金権政治を延々と続けてきた自由民主党政権こそ,日本の「平和思想プロパガンダ」と言えるかもしれない。しかし,有事政策を打ち出せる政党があるかと言えば,これもまったくないのが現状である。すべての野党が,“自民党反対を叫ぶだけの政党”だからである。