筆者は刑事ドラマが好きなのだが,最近の刑事ドラマはほとんど見ない。面白くなくてすぐにテレビのスイッチを止めてしまうほどである。
たまたま,刑事の似合う俳優というランキングがあったので,情報を拝借することにする【投票結果 1~49位】刑事役が似合う俳優ランキング!日本で最も刑事役がハマっているのは? | みんなのランキング (ranking.net)。上位の20人は,内藤剛志,水谷豊,上川隆也,舘ひろし,柴田恭兵,寺島進,内野聖陽,船越英一郎,寺脇康文,佐々木蔵之介,伊東四朗,沢村一樹,西島秀俊,織田裕二,及川光博,反町隆史,高橋英樹,椎名桔平,柳葉敏郎,渡部篤郎だという。
さてこの中で筆者が試聴する刑事ドラマは,内藤剛志,船越英一郎,伊東四朗である。いずれも強面で頑固な現場の刑事役を貫いている。警察はこうじゃなければならない,と思わせるのである。
一方,水谷豊はかつての新聞記者やルポライター役で出ていたころの軽さを「相棒」シリーズでは推理に焦点を置くことと二人組にすることでバランスを取っている。相棒として出てくる寺脇康文,及川光博,反町隆史の演技は嫌いではない。窓際という立場で警察内部の歪みを批判している辺りは,医療系でいえば「ドクターX」のような痛快さがある。腐敗した組織の中で敢然と戦っている人がいると思われてくれる。
上川隆也,内野聖陽,高橋英樹はそれぞれ,遺留捜査,鑑識,検事などがはまり役となっている。警察組織の中では裏方だが,警察とタッグを組むことで犯罪捜査力を上げていることがよく分かる。そういう意味では,「科捜研の女」の沢口靖子もはまり役である。「京都地検の女」の名取裕子もいい。
後半のランクにいる片岡鶴太郎,中村梅雀も渋い演技をしている。このランクに入っていないが,最も渋いのが渡瀬恒彦だと思う。十津川警部シリーズでは伊東四朗の亀井刑事とのコンビで大活躍する。同シリーズの初代の三橋達也・愛川欽也コンビも良かったが,渡瀬恒彦はその後,「タクシードライバーの推理日誌」「おみやさん」でも元刑事役でその力量を発揮した。
BS放送やCS放送で繰り返し放送されるので,おそらくほぼ見切ったのではないかと思えるほどである。録画したドラマがほぼ以前に見たものだったりすると,高橋英樹,寺島進の作品を見ることもある。
最近の刑事ドラマは,警察という使命感のある演技がなく,人気若手俳優にアクションをさせたり,恋愛ネタを持ち込んだりして,重さがなくなっている。命がけで仕事をしているという凄みが感じられないのである。昨今の警察の不祥事を見るにつけ,警察はもう市民を守ってはくれないのではないかと思えているときに,この軽いドラマは気に入らない。
医療系ドラマも,命に直結する外科,小児科,産婦人科,緊急救命医,そして法医学系は迫力が伝わってくる。一方「ラジエーション・ハウス」という放射線科のドラマは,最初は面白くないのではないかと思っていたのだが,プロとしての感性によって病気の原因を明らかにするという作りが非常によく出来ていたと思う。
21世紀は,勧善懲悪ドラマは人気がないのかもしれない。政治家,議員,官僚,裁判官・弁護士,公務員(警察,消防,税務署,市役所),医師,看護師,介護士,そして教員,保育士など,筆者からすれば正義のヒーロー,ヒロインであるはずの職にある人達が,いとも簡単に犯罪に走ってしまう。そして,若者は詐欺を首謀したり加担したり,さらに昨今は無差別な強盗までしてしまうという荒廃した世の中になってしまっている。
学校を卒業しても定職につけず,収入が不安定で結婚することも家庭を持つこともできず,したがって少子化に歯止めがかからない。結婚できて子どもが授かったとしても,共働きで保育園に預けてしまうような世の中である。子どもへの愛情が十分に与えられず,また虐待や育児放棄などの悲惨な事件も起きる。躾も十分にできず,責任を学校や教員に押しつけることでモンスターになってしまう。ただでさえ過酷な労働を強いられている教員が疲弊してしまい,さらに教育が不十分になってしまう。子育て世帯に手当を与えたり,学費などを無償化したりすれば解決するといった簡単な問題ではない。
日本は自由主義国家だが,現在は「自由放置国家」になっている。国が先導して方針を示していない。池田勇人首相の所得倍増計画のときは大蔵省(財務省)と経産省,田中角栄の日本列島改造論のときは土木建設省(国交省)など,民間とタッグを組んで全面的に支援する官僚・省庁があった。しかし,今,国策で動いている省庁はどこにもない。
水素エネルギー(経産省),陸上養殖・植物工場(農水省),そして科学・教育(文部科学省)など,活躍すべき省庁をシフトさせて加速し,市場と雇用の創出をしていくことで,「学校を卒業して定職」につくことができ,結婚,出産,子育てとすべてうまく歯車が噛み合って動きだすはずなのである。
みんなが忙しく働く社会に,陰湿な事件は起きない。時間がなくて暴走して事故を起こしたり,大金持ちを襲う事件が起きたりはするだろうが,放火,万引き,詐欺,イジメ,などの情けない事件を起こしている余裕はない。本当にスピードを出しすぎて事故を起こさないように取り締まることは必要だが,姑息なネズミ取りで点数を稼ぐような警察は要らない。むしろ,努力義務とはいえルール化された自転車のヘルメット着用や,信号無視,逆走,歩道走行,夜間のヘッドライト上向き走行など,マナーの悪い自転車ドライバーをきちんと指導してほしい。何だか,きちんと「指導」するだけの自信のある警察官がいないのではないかと思えるほどである。