jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

福島第一原発の処理水の量を計算してみる--まず水量は1日あたり25mプール1杯分ぐらい【追記あり】

2023/8/28,東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が始まった。8/22に岸田首相が福島の漁業関係者と都内で会見し,8/24に閣議で放出を決定。それからわずか4日の放出開始である。あらかじめ予定を指示していたとしか思えない。感覚的には法務大臣による死刑執行と同じような素早さである。海洋放水が海への死刑執行とならないことを願うばかりである。

 さて,改めて今回の放水量と放水期間についてざっくりと計算してみた。「30年程度」とはやはりずいぶん長いな,と思ったからである。

 現時点で,タンクに溜まった水量は1,340,000トン(134万トン)だという。これが約1,000基のタンクに入っている。単純計算で,タンク1基に1,340トンが入っていることになる。

 8/28にスタートした第1回目放水の予定水量は7,800トン。これを17日かけて放出する。単純に割って,1日あたり約460トンである。kgに直すと460,000kg。ドラム缶1本が200リットル。一般家庭のお風呂の標準容量も200リットルである。1リットルが約1kgなので,1日の放水量は,ドラム缶で2,294本分,同じ数の家から毎日放水されるお風呂の水と同じぐらいである。学校の25mプールの容量が500,000リットルなので,ほぼプール1個分を1日に流すという感覚でとらえるといいだろう。

 計画では,2023年中に31,200トンを放水するという。1日460トンで計算すると68日間。途中で調査のために停めたり,濃度調整のために水量を減らしたりする可能性もあるようである。

 このペースで,現在のタンク容量1,340,000トンを流せば8年で放水完了となるはずなのだが,事はそう簡単ではない。何しろ日々,冷却水が増え続けているからである。その量は,毎日約100トン。このままのペースだと,廃炉が完了して放水が終わるとされる30年間では1,095,000トン(109万5000トン)の冷却水が加わる。廃炉作業の進展に伴って,冷却水の量は減っていくことが予想されるので,1日の放水量も減ると思われる。仮に,現在のタンクの中の処理水と,30年間の追加冷却水を単純に足したとして,放出する水の量は2,465,000トンとなる。

 さて,やや疑問に残るのは,「処理水を7倍に薄めて放出する」という方法である。今回の第1回目放水の予定水量「7,800トン」が,「タンク中から減る量」なのか「7倍に薄めたあとの量」なのかがはっきりしないことである。放水後の測定では,「放出された水のトリチウム濃度は「運用上の基準となる1リットル当たり1500ベクレル未満。世界保健機関(WHO)が飲料水における上限としている1リットル当たり1万ベクレルの6分の1」と発表されているが,これが7倍に薄めて放出された水での数字なのか,放出後に海洋でさらに拡散された後での数字なのかについても,明確な説明がない。

 仮に7倍に薄めた処理水での値だとすると,1日あたりの放出トリチウム量は1,500 Bq×460,000×7=4,830,000,000 Bq(48億3000万Bq)となる。

 トリチウムの年間の放出基準量は22兆Bq(ベクレル)となっている。1日あたり,60,273,972,603 Bq(600億Bq)という数字になるので,総量としても1/12であり,十分に基準を満たしていることになる。

 放出後はさらに多くの海水と混ざることになり,また海流の影響で強く攪拌され,広範囲に拡散することが期待されるため,やはり問題はないように思えるのである。

 どこにもこうした緻密な計算比較結果が載せられていないように思われる。ぜひ参考にしていただきたい(個人のサイトなので,計算間違いがある可能性があるので,ご指摘いただけると幸いである)。

【追記】8/28のモニタリングでは,福島第一原発を中心とした半径3kmの10ヵ所のモニタリングポイントで,1リットルあたり7.3ベクレル未満と測定された。ただし,今回は波の関係で2ヵ所のみの測定である。放出停止を判断する基準は700ベクレルとのことだが,これがもしモニタリングポストでの値だとすると,放出時点での値は1500/7.3=約200倍になる。700ベクレルという停止基準値が放出路での値であることを期待したい。