2024/8/8の宮崎、8/9の横浜の大きめの地震で、南海トラフ地震の発生可能性が高まったと示唆されている。ニュースで指摘されている「南海トラフ地震防災対策推進地域」の図を見てみて,何か違和感を覚えた。
(気象庁|南海トラフ地震について | 南海トラフ地震発生で想定される震度や津波の高さ (jma.go.jp))
今回,横浜の地震が南海トラフ地震とつながらない,という根拠になっているのだが,果たして本当だろうか,という疑問である。
南海トラフという深い海溝が,上図の赤い範囲の南側の辺上に長く続いている。それが伊豆半島の手前で日本を横断する線,いわゆるフォッサマグナ(糸魚川・静岡構造線)につながっている。
一方,富士山から伊豆諸島にかけて,フィリピン海プレートが富士山に向かって動いている。プレートの上端は,三浦半島から房総半島の南を通る相模トラフという海溝になる。
南海トラフを原因とする地震と,相模トラフは直接はつながっていないが,フィリピン海プレートを介して相模トラフが影響を受ける可能性は高い。まして,南海トラフ地震によって津波が発生した場合,駿河湾で影響が止まることはなく,その先の東京湾にも津波が入り込むことが考えられる。実際,今回の宮崎の地震によって,房総半島の外側にも津波注意報が出された。陸も海もつながっているからである。
東京湾は入口が狭いので,仮に東京湾入口でそれほど高くない津波でも,湾の奥では影響が高くなる危険がある。東京都は,特に隅田川より東側の地域が海抜が低く,津波発生時の影響が大きいことがすでに指摘されている。ならば,この「防災対策推進地域」の中に,関東地域の海岸部,東京都,千葉沿岸部も含めるべきではないだろうか,と思ったのである。
そこで思い至ったのが,「政治的判断」である。首都圏はすでに,「首都直下地震」への対応が求められている。ここにさらに,南海トラフ地震への対応が加わったりすると,たとえば今回の地震後の対策強化や避難準備といった対策を,首都圏も行わなければおかしいことになる。つまり,「首都圏は南海トラフ地震の影響は受けない,ということにしよう」との政治的判断が働いているように思えるのである。
逆に,横浜の地震が首都直下地震の予兆としない判断もおかしく思える。まるで,「首都直下地震の予兆は,首都直下で起きたものに限る」とでも定義したかのようである。
南海トラフ地震では,高知県などで30m級の津波が来ることが想定されている。素人的に考えれば,東京湾周辺でも5m級の津波の影響が出る。しかし,湾の奥ではこれが8~10m級の高さにならないとも限らないのである。
筆者としては,これもまた素人の意見だが,「南海トラフ地震より首都直下地震の方が先にやってきて大きな被害が出る」と思えてならない。今回の2つの地震の後,東京都が何のメッセージも発信しないことが,先月の都知事選挙のおかしな結果とつながっているのではないかと,これも素人の勘ぐりである。