jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

地下vs地上:災害に強いのはどちらだろうを考察してみる

2024/8/8 宮崎県沖の日向灘震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。最大震度は宮崎県日南市で6弱を筆頭に,宮崎県,鹿児島県,熊本県を中心に九州,四国,中国など西日本で揺れが観測された。日向灘での震源ということで津波警報も発令され,宮崎県で0.5mといった津波が観測された。

 震源の位置といい,津波発生という現象も重なって,南海トラフ地震を想起させる地震となった。大地震の可能性が従来より5倍高まったとの発表もあった。

 今回の地震そのものの被害は比較的軽微で済んでいるようである。建物の崩壊も数件ぐらい。停電,断水などの被害も少なかったようである。

 映像を見ると,電柱が揺れて電線も揺すられているが,電柱が倒れたり電線が切れたりするようなことはなかったようである。

 電柱の強度は「風速40mに耐えられるよう」に定められているようだが,これは横向きに加わった力に対しての曲げ強さを表現したものと思われ,実用的な基準とは思えない。結びついている電線の数や,電線にモノが引っかかったときに加わる力など,条件が想定できないからである。さらに,地面へ埋める方法や深さ,地面の性質によっても,倒れるか倒れないか,折れるか折れないか,などが変わってくる。

 実際,電柱が倒れる1つの原因として,地盤の液状化がある。液状化現象が起きたら,あらゆる構造物は自分を支えられない。

 美観の観点からも,電柱や電線を地中に埋める無電線化が計画され,一部で実現している。しかし,地中に埋めるにはいろいろな制約もあるように思われる。観光地以外で無電線化のメリットがあるかどうか,考えてみたい。

 コスト:おそらく,電柱を立ててその間の空間に電線を這わせる方式の方が,コストが低い。地中に穴を掘るには,全区間を掘削する必要がある。ガス,水道などとの共同溝構想はあるが,自治体と各業者とのコンビネーションや,アクセス,各家への取り回しまで含めると,調整が難しい気がする。

 耐災害性:空中に電線を這わせることで,雨や風に対しては弱いと判断できる。一方,地震に対しては,空中の配線の方が配線長の余裕によって被害を減らせる可能性が高い。地中では,断層によるズレでまともに寸断される危険性があるが,地上だと回避できる可能性が高い。

 復旧性:電柱の被害が少なければ,切断個所の特定もしやすく,電線の張り直しとつなぎ直しは比較的容易で,システムも完成している。地中だと,断線個所の特定が難しく,また作業空間が限られるため復旧に時間がかかる可能性が高い。

 電線は切れても仕方がないと考え,そのベースとなる電柱が折れたり倒れたりしないような構造や施工法の工夫に対する研究が必要と思われる(昔の木の電柱は,足元につっかえ棒を施していたという気がする)。電柱が倒れなければ,電気の復旧は比較的速い。空中に張ることで漏電や感電のリスクも減らせられる。

 逆に,ガスや水道のインフラが老朽化し,地中でのガス漏れや水漏れが増えている。地震にも弱い。掘り起こしては新しい管に交換する工事が行われているが,いったん舗装した道路を掘り返す工事は,時間も費用もかかる。共同溝では,これまで以上に大きな穴を掘る必要があり,コストの時間もかかり,また掘り出した土の行き場がない。

 地震で1mのズレが発生しても壊れないという継ぎ手付きの樹脂パイプもあるが,コストがかかる。パイプ自身が柔軟性のある樹脂パイプも開発されていたはずだが,ほとんど使われていないのかもしれない。

 パイプにコストがかかる分,穴を露天掘り,つまり地表を含めて深さ1mぐらいまで掘り,パイプを敷いて,その後を埋めるのではなく蓋をする形で設置するようにすれば,破損時にもすぐに復旧ができる。定期的な交換も容易になる。長い目で見ればこちらの方法の方が費用は抑えられるし,工事期間も修理期間圧倒的に短くて済む。

 若干心配があるとすると,雨水が入って水没した状態になりやすいことだが,これも一定間隔ごとに枡(マス)を設けて,そこで排水するような仕組みを作ればいい。さらに心配なのはテロ行為や溝の蓋の盗難だが,これは金属ではなくコンクリートの蓋にすれば持ち去られることもないだろう。

 筆者としては,この露天掘りの溝の中に電線も埋めてしまえば無電線化も比較的簡単に安くできると思っているのである。また災害復旧もより速いことが見込まれる。

 ニューヨークの地下鉄,そして東京の地下鉄銀座線は,露天掘りで作られている。ニューヨークに至っては,天板に鉄板を敷いただけである。その上をクルマが走っている。それで十分動いているのである。地方も含めて,もっと簡単な工事手法を取り入れるべきだと思う。