筆者は長い間,裸眼で生活していたが,40歳台なかばで老眼が始まり,デスク仕事の際は老眼鏡のお世話になっている。現在も,普通の生活は裸眼で十分だが,机に向かうとき,パソコン作業をするときは老眼鏡が必須になっている。
目医者で処方箋を作ってもらい,当時はやっていたメガネチェーン店で1個作った。比較的,肌の色に近い金属縁のフレームで,着用してもあまり目立たないようにと考えて選択した。
その後,老眼鏡は「シニアメガネ」として複数の度数をシリーズで搭載した汎用品が販売されるようになり,さらに「読書メガネ」としても販売されるようになった。メガネ店で処方箋どおりに作成すると1万円は軽く超えるが,汎用品なら1000円程度で購入できる。さらに同じ時期に100円ショップでも老眼鏡が発売された。
老眼鏡の厄介なところは,距離の合う範囲が限られることである。書籍を読む距離やパソコンの画面を見る距離はほぼ一定だが,時間が経つと度数が変わることもある。日によって,同じ度数でも見やすかったり見にくくなったりすることもある。
そのたびに,メガネ店で高いメガネを作るかどうか考えたとき,100円ショップで複数の度数の老眼鏡を用意して使い分けるという選択ができるようになった。
たしかに,100円ショップ老眼鏡のクオリティは高くないかもしれない。眼科医から言わせると,かえって視力の低下を引き起こす可能性もあるかもしれない。ある意味で粗製乱造のガラスレンズやプラスチックレンズを単純に切り出して枠にはめ込んだだけである。焦点のムラもあるかもしれないし,光軸がユーザーに合わないかもしれない。
メガネ店で使うレンズは基本的に高品質なレンズであり,ムラがなく,光軸を処方箋に合わせて切り出すので,正確である。少し高くなるが,累進焦点レンズだと,焦点の合う距離をある程度調整することもできる。
問題は,気に入ったフレームがなかなか見つからないことである。フレームの色や幅,レンズの形によって,見た目の印象がガラッと変わる。これが筆者にとっては厄介な問題だと思っている。
特に,安い老眼鏡では,濃い色のプラスチックフレーム,いわゆる黒縁メガネが多い。レンズの面積も大きく,フレームも大きくなる。あるいは,まさに安っぽい銀メッキや金メッキの製品が多くなる。
黒縁メガネは相手に対して圧迫感を与えると筆者は思っており,できれば使いたくないのだが,100円ショップ老眼鏡の半分はこの黒縁である。さらにシニアグラスや読書グラスでは,カラフルなプラスチックフレームの製品も出てくる。似合う人はいいが,筆者は選択ができない。
2024年はARメガネ元年とも言えるほど,多くの企業がARメガネを発表した。本格的にスマホやパソコンの画面を眼の前に表示されるものから,眼の前に見えているモノの情報を分析・翻訳して表示するタイプ,画面は表示しないが音声で情報を伝えるものなど,さまざまなメガネ型情報機器が発表された。究極を追求したApple Vishion Proが50万円を超える価格だが,メガネ型で5万円台でそれなりに楽しめる製品も手に入れられるようになっている。
そのメガネ型ディスプレイの多くが,サングラス型を含めて「黒縁」が多い。もともとサングラスは相手を威圧するが,黒縁メガネも相手を威圧する。フレームやツルに配線を通す必要があるのが理由だろうが,どうも気に入らない。
メガネが似合うかどうかは,もちろん人に依る。芸人がわざわざ太いフレームの伊達メガネまで着けてキャラクターづくりをしたり,逆に銀縁の金属フレームメガネでインテリ風を気取ったりするので,どんなタイプのメガネでも何となくわざとキャラを作るために掛けているように取られるのが難儀である。
試作品のARメガネが太い黒縁なのは仕方がないが,その形で製品化されるのではないかと心配してしまう。頑張ってデザインにももっとこだわってほしいと思う。たとえば,イメージが先行する丸レンズの金属フレームメガネを目指して究極の回路づくりに挑戦してほしいと思うのである。