COVID-19に関する毎日の感染確認者と死亡者だけでは,状況が見えないと,何度も指摘してきた どうも正確な情報がないCOVID-19感染状況--厚労省も専門家分科会も,そしてメディアの分析能力,取材能力もどうかしている - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/8/30。このブログの中で紹介している「東京都オープンデータカタログサイト」のデータは,https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/data/130001_tokyo_covid19_details_testing_positive_cases.csv でダウンロードできた。
これによると,東京都の2020/2/28以降の陽性者数(累計),入院中,軽症・中等症,重症数,死亡者数,退院者数と,2020/5/12以降はこれに加えて宿泊療養,自宅療養,調整中の毎日の数字を見ることができる。
例えば入院数は,9/1現在で4271人である(中等,重症合わせて)。これに対して,宿泊療養,自宅療養,調整中はそれぞれ,2180人,19797人,6870人である。
これをもって医療崩壊と言わなくてなんとしよう,というわけである。
一方,全国の数字は,厚労省の以下のサイトに週1でアップされるデータがせいぜいのようである。療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)。毎週,各都道府県の入院者数,自宅療養者,療養先調整中数などが見える。現在最新のデータは8/25現在で,入院数は24,247人である。宿泊療養者数は19,937人,自宅療養者は118,035人,調整中が32,162人である。
ここでいうところの病院の入院数(東京で約4000人,全国で約2万5000人)だが,多くの都道府県がステージ4で50%を超えているとすると,最大でもこの2倍,東京で8000床,全国で5万床が最大限である。そしてこの病床数の2倍以上の人が,現時点で自宅で「自宅療養というなの医療放置」をされている状態である。
東京では,毎日の感染確認者数が約3000人である。逆に退院数を見てみると,毎日4000~5000人が退院されている。自宅療養者数が8/23の25156人をいちおうピークとして現在9/1で19797人と徐々に減っているのは,数日前に自宅療養になった人の中で症状が悪化した人からなんとか入院できてきている,ということであり,タイトルにしたようなデリケートバランスがギリギリ保たれていることになると思われる。
しかし,自宅療養は基本的に放置なので,半分は要往診,そして2割ぐらいは急速に症状が悪化する可能性がある。やはり医療機関の近くに野戦病院を構えて,常に症状の進行を監視して迅速に対応できる体制をつくることが喫緊の課題だと思う。
いま,東京で感染確認された1日の3000人のほとんどは,いったん自宅療養を言い渡されるのだろう。そしてその段階で入院が必要と言われる人はおそらく1割もいないだろう。しかし,それから数日,たとえば3日後には酸素濃縮装置が必要になるぐらい息苦しくなり,要入院状態になる人が3割ぐらいいるのだろう。そして入院手続きをしようにも,数十軒の病院に入院拒否され,また自宅に戻ったりするのだろう。病院を探して救急車で走り回ること5時間~8時間というのも珍しくない。救急車の稼働効率も明らかに悪くなっている。
仮に,いったん自宅療養になっても,症状の進行をモニターする仕組みと,速やかに入院先を確保して最短距離で搬送する仕組みを至急作らなければ,救急車がただ都内をうろうろと数時間走り回った末に元の自宅に戻る,などという滑稽な状況を繰り返すことになりかねない。
単に日々の新規数を見るだけでなく,蓄積する数字,前日との差分など,きちんと情報を読んで,対策を提案するのがメディアの仕事であり,そもそもの厚生労働省や各自治体の現在の業務だと思うのだが,筆者の認識からすると,「官僚は決められた仕事しかしない」ので,都合の悪い分析はしないと思うのである。創造的な仕事は何もせず,「必要な業務との認識がありませんでした」「業務の指示がありませんでした」で反省もなく答弁から自席に戻るだけなのだろう。メディアは,ここも突っ込まなければならないが,ただ一般人の「困りましたねぇ」「信じられませんねぇ」のコメントで時間を潰していることを,いい加減に自覚してほしいものである。