北京冬季オリンピックの中日になった。スポーツといえば基本的には個人戦やチーム戦なのだが,オリンピックは「国合戦」色が出てくるのは仕方のないことなのだろうか。
日本の選手も,結果が出せない人が続出している。ウエアの既定違反による失格など,今まで聞いたことがないルールが明らかになり,意外な展開が続いている。
オリンピックは,代表選手がその国の期待を背負って参加しているために,独特のプレッシャーがあるようである。国内戦で見られた伸び伸びとした演技ができないこともあるようだ。
北京冬季オリンピックの屋外の会場は,気温が-30℃。気温が低いが雪が少なかったために,人工降雪機で雪を積もらせたこともあり,ほぼアイスバーン状態という。また風も強い。アジアで行われた冬季大会としては,前回2018年の韓国平昌よりも厳しい環境だという。一方,スケートリンクなど屋内会場は,氷の温度が高くなっているという。これらの競技環境にいかに合わせられるかという点も,もちろん選手の能力の1つなのだが,なかなか日本国内での調整だけでは難しい面もあるのかもしれない。
試合前にいかに集中力を上げるか,というのがこれまでのスポーツに求められてきたが,逆に「いかにリラックスするか」も非常に重要だと言われるようになった。これまでは,演技の直前にお気に入りの音楽をイヤホンで聞いて集中とリラックスを同時に進めるようにしていた。昨今はBluetoothイヤホンを使って無線で音楽が聞けるようになり,練習中でも音楽を聞きながら演技する選手が増えているようだ。またスノーボードなどの新しい競技では,試合中でも音楽を聞きながら演技していいようだ。リラックスし,そして集中して,試合に臨んでもらいたい。
で,筆者のような外野は,「メダルへの期待」と,つい軽々しく言いがちである。選手本人もそれを十分に感じているために,そのプレッシャーに押しつぶされる選手も多く見られるように思う。出場回数を重ねるたびにプレッシャーも大きくなっていく。
自分のその時の体調で出せる最大の演技をしてもらえれば,結果は二の次だと思いたい。それよりも,無理をしすぎてケガをしないようにしてもらいたい。ちなみに,昨今の競技は,回転数を増やしたりひねり技が入ったりと,かなり危険な方向に来ているような気がする。たしかに1人の選手が技ができるようになると,他の選手も次々とできるようになる,というのが通例なのだが,ほどほどのところで規定した方がいいのではないか,という気もする。
他国でも,演技に失敗した選手に対するバッシングが起きている。日本も既に,複数の選手に対する心無いコメントが発せられているようである。無責任な発言を簡単にできてしまうSNSの怖さが改めて浮き彫りになっている。
日本の場合,生まれも育ちも日本,生まれてずっと「日の丸」を背負って育ってきたという人がほとんどである。日本という平和な国で育ったことで,日本への愛国心のようなものもどうしても育っている。これが,日の丸を背負うプレッシャーになっているようだ。視聴側も,日本選手の活躍にばかり目が行き勝ちである。
これにさらに輪をかけて日本人のみに集中するのが,マスコミである。たとえば,日本選手が2位になった場合,筆者としては1位となった選手の素晴らしい演技を見たいと思うのだが,報道されないことが多い。場合によっては名前すら伝えられないこともある。
これは,日本という単一民族の国の1つの悲劇でもあると思う。たとえばプロ野球では,海外からの招聘選手をかつては「外人選手」という言い方をした。単なる助っ人という位置づけだった。他国の国籍を持つ日本人が選手として参加すると,複雑な思いがする。「One Team」が流行語になるほど,海外選手との混成チームが活躍した競技もあった。どこかに「日本」単一民族へのこだわりがあるように思う。
海外留学をする若者が減っているという。筆者も特に留学したいと思ったことはなかったが,たまたま奨学金を得て1年間の留学をする機会があったことは,人生にとって大きな転換点だった。といっても,仕事を変えたわけでもなく,相変わらず日本語を使った仕事をしているわけだが,それでもコミュニケーションの力は上がったと思っている。留学に行っても,現地で日本人が集まってしまうことが多いと聞くが,筆者は可能な限りいろいろな人と接するよう心がけたことも大きかった。
さて,冬季オリンピックも後半。さらにメダルへの期待,と言いたいところだが,選手の皆さんには伸び伸びと「楽しむ」ことを続けていただきたい。本来だと,観客の応援がさらに力を引き出すとのことなのだが,そうした環境の違いというプレッシャーに負けないでほしい。特に今回は,完全バブルでリラックスする場も少なく,また完全防護服の係員による毎日のPCR検査など,さまざまなプレッシャーもある中,体調とともに気持ちも整えて楽しんでほしい。ケガをしないように。