jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

「空飛ぶクルマ」の運転免許を考える--誰が操縦するのだろうか

NHK朝ドラ「舞い上がれ!」は,空飛ぶクルマが完成し,型式証明も取れ,これを主人公が操縦して,目的地の島まで飛ぶ,というエンディングだった。航空機パイロットとしての訓練と合格,実家の町工場を手伝って航空機用ネジの受注,そして故郷に錦を飾る,というサクセスストーリーとしている。2025年の大阪万博で実際に空飛ぶクルマを会場との移動に使おうという計画がある中,NHK大阪と作者のコラボ企画だったのかと思われる。

 さて,ドラマ前半では航空機パイロットとしての訓練の様子が描かれた。クルマの運転免許と違って,教習所合宿10日で免許が取れる,といった生易しいものではないことが分かる。しかもお客様を乗せるということは,クルマで言えば二種免許である。

 自家用飛行機を操縦するには「自家用操縦士免許」,業務で操縦するには「事業用操縦士免許」が必要である。ヘリコプターの操縦も,「事業用操縦士免許」が必要である。自家用免許は指定空港で訓練したり,海外で免許を取得してから日本で書き換えることができるが,事業用免許は国家資格なので,国内で国交省の試験に合格する必要がある(そうである)。

 航空機の場合,事業として成り立たせるのには,企業として綿密な事業計画の下に運営しなければならない。運賃の設定も,実際の経費との兼ね合いで決める必要がある。

 こうして考えると,「空飛ぶクルマ」を営業用に就航させることに現実味があるのかどうか疑問になる。1機をいくらで製造できるのか,パイロットをどう確保するのか,運行の頻度,ニーズはどの程度あるのか,などを考えると,30分の宇宙体験旅行と同じぐらいの運賃になってしまうような気がする。

 ヘリコプターでも定期運行は難しい。離島との間を運行するのに,積載重量も限度がある。安定性からみても,クルマと同じぐらいの時速100kmぐらいしか出せないと考えると,時速60kmは出せるモーターボートで十分と思われるし,必要があれば高速艇,さらにもっと需要があるのならホバークラフトという選択肢もある。実際に大分空港では13年前まで運行されており,2023年から復活予定という。船舶なら,不調が起きても墜落の危険はない(沈没の危険はあるが)。

 近年,業務用のクルマ,バス,鉄道,そして航空機において,運転者・操縦者のミスや居眠り,飲酒運転などの過失によって,事故が起きて乗客が被害を受けるケースが増えている。バスや鉄道では,無人運転への取り組みも行われており,乗客の安全は確保できる可能性があるが,今度は歩行者や他の車両などとの接触による事故の危険性を否定できなくなる。

 タクシーや業務用バスの運転者は,かつては「運転のプロ」であり,地域のあらゆる道やポイントを知り尽くしていた。しかし現在は,おそらく半分が素人同然のドライバーなのではないだろうか。とにかく,運転者が足りない様子で,転職サイトでも「誰でもなれますよ」的に募集がかかる。中年以降の退職者に対する募集が限定される中でも,タクシードライバーの募集は中高年向けとして声がかかる。実際に採用されて,毎日運転していれば,ある程度は地図も頭に入るだろうが,カーナビが最終的には助けてくれる。

 ドローンでも,有人地帯(第三者上空)や目視外、夜間などを飛行できるレベル4での運用が実験的に始まった段階である。これも正直,有人地帯での飛行はやめてもらいたいと思っている。特に,人が操縦しての運行は,危険だと考える。 ドローンはすべて無人運転にすべき論 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/1/26。

 空飛ぶクルマは,アメリカや中国で開発が盛んに行われている。広大な国土を持ち,自家用飛行機の需要も高い国であり,国内需要が見込める。日本に,空飛ぶクルマの需要があるのだろうか。そして,その操縦者になりたいと思う人はどれほどいるのだろうか。タクシー運転者募集みたいに,「誰でもできます」では済まないと思うのである。