筆者は長年,PCとMacで共通のデータベースを扱えるデータベースソフト「ファイルメーカーPro」を愛用してきた。標準でいくつか不足していた機能(バーコード作成,メール受信,正規表現)については,MBSなどのプラグインを導入してソリューションを実現してきた。
スマホ時代において,iOSでは「ファイルメーカーGO」というアプリが提供され,PC用のデータベースファイルを直接開いて使うことができたが,AndroidにおいてはClaris社自身が「Android版は開発しない」とずっと表明を続けてきた。
個人でデータを管理している範囲では,家とオフィスの2台のパソコンのファイルの内容を一致させるだけでほぼ用が足りる。一方で更新したデータベースファイルをUSBメモリーにコピーし,もう一方に上書きすれば問題なく使える。移動中にどうしても更新しなければならないケースは少なく,スマホには必要最小限のデータをExcelファイルなどに落として参照すればいい。そう割り切ってきた。実際,スマホ画面でデータを更新したり,データベースそのものをいじることは,操作性からも無理があったし,実用的とは思わなかった。
それでも,iOSではファイルメーカーのインタフェースで検索できるのは羨ましかった。PC側でデータベースをWeb公開し,これにWebブラウザーでアクセスする方法は検証したが,大きなデータベースになるほど実用的なスピードが得られなかった。
どうせ,Android用のソリューションはない,と思い込んでいたので,しばらくフォローをしていなかったのだが,いくつか動きがあったのでまとめておきたい。
1つは,「Claris FileMaker - Android」というAndroidアプリである。3rdパーティーのpro-softが2020年に開発している。FileMakerServerでデータベースをWeb Directという方法でオンライン公開することで,AndroidからFileMakerServerと直接やり取りができるようである。業務用には使えそうだが,個人がFileMakerServerを運用するのは現実的ではない。また筆者のスマホにインストールはできなかった。
2つ目は,LiveCode for FMが開発した「LCFM Native product」というソリューションである。こちらは,ファイルメーカーのデータベースファイルをLiveCodeでAndroid用に再構築することで,Android上のローカルでファイルメーカーデータベースを運用できるものである。2019年に発表され,2022年時点ではサブスクリプションの形で運用されていた。インタフェースはファイルメーカーデータベースで構築したものをそのまま使えるという。モバイルでも通信を使わずにオフラインで使用でき,更新された内容はあとで同期を取るという運用ができる。方法としては実に実用的である。魅力的である。
問題があるとすれば,LCFM用にファイルを変換する必要があるため,データベースでレイアウトなどの変更を加えた場合はその都度,変換をやり直す必要があることと,年間500ドルのサブスクリプションだろう。個人にはそこまでの需要はないのが実情である。かつてPCの重さが2kgも3kgもあった時代でも,外で仕事をする時は持ち歩いていた。電車の中でもファイルを開いてきた。今や,14型クラスのノートPCならほぼすべて1kgを切るほど軽量になった。満員電車で立ったまま,会社のデータを操作するほどのニーズはないだろう。