花粉の季節である。筆者は幸いなことにまだ洗礼を受けていないのだが,鼻粘膜が寒さで弱くなっており,速足で駅まで歩くと決まって鼻水が出るようになった。しかも,花粉症でよく起こるという水洟である。花粉症の方はさぞかし大変だろうと身を持って感じている。
この季節になると,花粉症対策グッズや花粉症対策薬のCMが盛んになる。男性アイドル歌手がしばらく登場していたが,今年は女優の伊藤沙莉さんのCMが目を引いた。筆者からすると個性派の女優さんである。花粉症でぐずぐずしているのを「わたしオン」とスイッチを切り替えて表に飛び出すという設定である。
ここでは,スライドスイッチを右にスライドさせてオフからオンに切り替えるというスイッチが描かれている。おそらくCMでこのスライドスイッチが使われたのは初めてではないかと思うのである。
というのも,このスライドスイッチ,スマホアプリで機能をオンする際に登場する。スマホの日本語入力で指を滑らせるフリック入力が標準的に使われるようになり,スライドスイッチを指を左右に滑らせてオンオフするというのが,今のスイッチオンのやり方なのだと,改めて気づいた。
筆者の世代は,マウス操作なので,「クリック」である。電車内の広告でも,検索ウインドウにキーワードを入れて「検索」というボタンを押す操作は「クリック」である。また,確認事項でOKを示すのに,チェックマークを入れるが,これもマウスクリックで行われる。
さらにそれ以前,マウスもなく,カーソルもない時代は,キーボードの矢印キーで上下左右のボタンに移動しアクティブにしてから「Enter」キーを押していた。自由度は低いが,確実な操作ができたと思っている。
スライドスイッチは,筆者にとってはあまり使いたくないインタフェースである。オンの側にスライドさせても,スイッチが付いてこなかったりすることがたびたびあったからである。この場合は,マウスによる確実なクリックの方が性に合っている。
そういう意味では,ウインドウを切り替えたり閉じたりする操作がスライドが標準なのも気になる。WindowsやMacでは,ウインドウのデザインは厳密に決められており,ウインドウを閉じたければ,Windowsなら右上の×マーク,Macなら左上の赤ボタンをクリックすれば閉じる。ソフトを終了したい場合も,たいていはこのクローズボタンをクリックすれば終了できる。
ところが,Androidではこのクローズボタンの位置がバラバラだったり,クリックしても反応しなかったり,さらにクローズボタンがないアプリすらある。強制終了しか手がないのかもしれない。
特に昨今標準となりつつある,動画CMでは,クローズボタンが15秒後に出て来たり別のボタンがアクティブになったりする。統一感がないのである。
しかも昨今は,CMに見せかけてオレオレ詐欺に引きずり込まれた若者の現状を潜入取材したりするCMにこのタイプが多い。実にイライラさせられ,CM企業のイメージダウンにさえつながっているので,クローズボタン遅延型CMはやめてほしいのである。
スライドさせなくてもいいように思うが,若い人たちはスライドスイッチ動作が当たり前なので,まだまだいろいろと改善されることを期待したい。