jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

今の俳優さんは大変だな,と思う件

昔,映画俳優と言えばTop of Top。雲の上の人であった。国民全体の憧れの対象であり,ヒーロー,ヒロインであり,二枚目だった。映画の中の歩き方や所作が社会現象になり(高倉健の任侠歩きなど),衣装がファッションになった(栗原小巻のマチコ巻きなど)。

 今は,俳優といえばテレビドラマが主な仕事場である。シリーズものの主役になれば「はまり役」と言われるようになるが,社会現象を起こすことはない。社会が多様化したから,テレビだけが情報源ではなくなったこともあるだろう。

 しかしさらに俳優さんの不幸は続く。一般的に言えば,俳優さんは美男美女である。一挙手一投足が社会に影響を及ぼすことに変わりはなく,その一つの仕事としてコマーシャルへの出演がある。商品イメージに合った俳優さんを起用することで,宣伝効果が抜群にある。昔は,大手メーカーの製品の広告だったり,食品の広告,クルマの広告への起用が主だった。そのうち,メーカーの国際競争力がなくなり,広告への出費を抑えるようになると,ローン会社や投資会社,建築会社などが俳優さんの出演を依頼してくる。俳優さんのイメージに勘違いをしてローンに手を出して焦げ付かせてしまう例も出てきて,俳優さん自身が出演の自主規制に入り,一気に活躍の場が減ってしまった。

 ここで俳優さんに代わって登場するのがお笑い芸人である。いまや,普通車のCMやビール,日本酒のCM以外は,ほとんどお笑い芸人が占めている。俳優さんも,お笑い芸人と大差ないような演出を強いられているように見える。

 これは仕方ないとして,問題はテレビドラマそのものである。

 現在,テレビドラマの半分は「コミックの実写版」である。コミックはまず動画の「アニメ」になることが多い。アニメでは,静止画にない大胆な表現が取り入れられる。声優によるセリフも,より洗練される。効果音楽も加わって,雰囲気を盛り上げる。

 ところが実写版になると,俳優の動きもアニメみたいな動きは難しい。それを俳優さんは,セリフ,表情,演技でカバーし,アニメ以上の効果を出さなければならない。

 それでも,アニメのイメージをすでに描いている視聴者は,実写版に失望してしまう。しかし最近は,アニメ化の前に実写版が出てくることも多くなっている。コミックのイメージを演じなければならない俳優さん。うまく演じたとしても,「原作のイメージ通り」みたいな評価しかされない。なんだか行き場を奪われてしまっているように思う。

 このアニメのイメージを俳優に演じさせる演出家も,本当に生きがいを持って仕事をしているのだろうか。コミック作家に踊らされているだけではないのか。

 コミックの切り口が,お笑い芸人向けになっているようにも見える。これを俳優が演じるために,コミカルな演技をしなければならなかったりする。大変だなと思う。

 もう一度,大衆に迎合しない二枚目俳優の登場を願いたい。今はただの外面のいい役者に過ぎない。1枚皮を剥げば,何が出てくるか,たかが知れている。