jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

インボイス制度について--取引先との信頼関係を損なわないよう,取り扱いには注意が必要

インボイス制度の概要|国税庁 (nta.go.jp)。「正確な適用税率や消費税額等を伝える」ものを「適格請求書(インボイス)」と呼ぶ,と書いてある。

 そもそも,invoiceは「請求書」という意味で,適格請求書なら「eligible invoice」とすべきところだと思う。わざわざ「これまでは適格でない請求書があった」ことをごまかしているとしか思えない。「適格請求書制度」でいいはずである。

 で,何が「適格」なのかというと,消費税をきちんと払っている事業者が「適格事業者」で,消費税を払っていない主に個人事業主が「不適格事業者」だということになる。年間売上が1,000万円以下が2年続くと,翌年は消費税の支払いが免除される。「免税事業者」という「消費税を納める義務が免除される特例」に相当する。

 つまり,これまでの「免税事業者」は「不適格事業者」ということになり,特例がなくなるということになる。

 多くの個人事業主は成功しているわけではないから,年間1000万円の収入をなかなか上げられない。売れない作家や個人執筆者などもそうである。それでも,支払い者に対しては消費税を載せた額で請求書を発行してきた。飲食店の場合は,お客に対して消費税を上乗せした額を請求していることになる。

 そして年間の売上が1000万円に達しなければ消費税を免除される。ということは,消費税分は税金を収めていないことになる。免除であり,免税なのだが,これが今回の制度では「不適格」だということになる。

 逆に「適格事業者」は,「適格請求書発行事業者」として「登録番号」を取得し,請求書にこの登録番号を記載することが義務づけられる。当然,この登録番号を取得すると,「必ず消費税を支払わなければならない」事業者として税務署がガッチリ押さえることになる。発行事業者名はWebサイトで検索ができ,その住所も表示される。何だかまたこの情報を元にした犯罪が起きないか,心配になってくる。

 さて,「適格請求書発行事業者」という言葉を使っているのなら,インボイス制度ではなく「適格請求書制度」でいいはずである。なぜわざわざ,カタカナ語を増やすのか,というのが筆者の不満の1つである。実際,一時期,個人事業者になった時期に,確かに消費税を加えた請求書を発行していたにもかかわらず,消費税は収めていない,つまり,消費税分を「タダ取り」していたことになる。そうすると,2023年10月以降は,消費税を加えた請求書は発行できなくなる。これでは,免税という特例の廃止,ということになるわけで,そこも納得が行かない点である。

 さらに2024年1月に始まる「電子帳簿保存法」も,個人事業者には負担になる。もちろん,大企業にとっては取引先が膨大な数に及ぶことから,これを整理して扱うためのルールを作る必要がある。取引先のルールとも整合性を持たせる必要も生じる。2年間の猶予があったとはいえ,経理担当者には針のムシロだったことだろう。

 まあ,多くのデータを一元管理することによって後工程で合理的になる点は,筆者も認めるところである。いまだに,同じ情報をExcelで管理されていると,その転記を繰り返しているうちに情報が複数になったり,途中で加わった修正が前のデータに反映していなかったりする。厄介である。請求書でも,一発で正しい請求書が出せるわけではなく,間違いを修正したり,端数を値引きしたり,とサジ加減が加わると,複数の請求書が発行される可能性がある。こうした点を逆に間違いなく処理できるのか,紙の請求書ならシュレッダーに放り込めばいいが,電子請求書だと複数残ってかえって管理しにくくなるのではないか,など心配している。

 とりあえず,多くのサラリーマンにはほぼ関係がないが,取引先からくる請求書に「適格事業者番号」が記載されているか,などの確認が必要になり,社長決済時や経理担当者から突き返される可能性もあるので,結構ストレスになりかねない。取引先との信用関係にも影響が起きかねない。注意すべき点だと思う。