jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。批判ではなく提案をするのが生き甲斐です。

スマホ,タブレット,そしてノートPCはどう処分されるのか--あまりにも高密度化した製品の行く末

筆者のさまざまな実験の実験台となったandroidタブレットが充電できなくなり,そのうちバッテリー残量が0%になって起動もしなくなった。

 実は,筆者自身が代々使ってきたノートPCやガラケースマホなどのIT関連機器は,ほとんど筆者宅で死蔵状態にある。

 かつて主に使ってきたデスクトップPCは,ハードディスクを取り出してPC回収業者に持ち込んで処分した。データの流出が気になるので処分するかどうか迷っている間に年月が経ち,自分でデータ消去もできない状態になったが,物理的にハードディスクは取り出せたからまだ良かった。

 しかし,ノートPC,ガラケースマホタブレットになると,訳がわからなくなってきた。ノートPCはまだ努力すればハードディスクは外すことはできそうだが,デスクトップPCのときほど自信がない。電源が入ったとしても,初期化ソフトが動くかどうかわからない。時間がどれほどかかるかもわからないので,手が付けられない。

 ガラケースマホタブレットの場合は,動かなくなった理由はリチウムイオンバッテリーの劣化が多い。古いタイプのスマホまではバッテリーを外すことができるので,回収ボックスに入れればいいが,本体には個人データが残されているだろうし,最近のスマホタブレットは,バッテリー交換すらできない。動かなくなったら手が出ない。

 検索すると,IT機器の回収業者はいくつか出てくる。国の認定を受けているとか,データは完全消去する,といった文言が並んでいる。しかし,自治体のPCを処分依頼したら,個人データや重要データが消去されないまま,中古PC販売業者に転売され,そこでデータ流出が起きたといった事件も発覚している。どこまで信頼できるのかという保証がない。

 さて,仮に真面目な業者があって,データの完全消去をしてもらえたとして,次に心配なのは「リサイクル」の流れである。行き先としては,中古PCショップでPCとして販売,中古部品・ジャンク品としての転売,細かく分解して素材業者が回収,破砕ゴミとして廃棄,そして海外に送って廃棄,といったことが考えられる。

 しかし,ネジで固定された部品をバラバラにするというこれまでの電化製品のリサイクルと違って,スマホなどの高密度設計製品は部品単位から素材単位までバラバラにするのさえ一苦労である。仮にバラバラにできたとしても,個別の部品,特にICやLSIなどを別の用途に流用することはおそらく不可能だろう。デスクトップPCなら,CPUチップをコネクタから外して別の高クロックCPUにするなどの試みはできただろうが,基板にガッチリとボンディングされているCPUなど,外すことも付け替えることも不可能である。液晶パネルでさえ,1ヵ所の接続が切れているだけでも再利用はまずできない。

 シャシーもプラスチックやアルミなどさまざまな素材が使われている。バラバラにしてもそれを資源化できるほどの数も量も集まらない。

 とすると,結局は燃やして金属部分だけを取り出し,クズ金属として売るという開発途上国で人手で行われている危険な作業になってしまう。燃えたときのガスも有毒,溶けた金属もまた有毒物質が含まれている。液晶パネルの中に封入されている「液晶」も,有害な液体である。

 東京オリンピック2020では,これらのIT機器をリサイクルして得られた金属でメダルを作ったというが,ごくわずか混ぜただけなのだと思う。

 江戸時代は,ゴミを燃やした灰を畑や田んぼの肥料として使い,完全なリサイクルができていたという。現代のゴミは,燃やすと封印されていた毒物が空中,土中,水中,そして生物の体内に広がり,蓄積される。地球を破壊する一方通行である。

 リサイクル,リユースなどと言っているが,単にゴミを先送りしているだけで,そこからまた利益を得ようというあさましい根性しか見えてこないし,リサイクルに使われるエネルギーはまた膨大なものになる。決して地球には優しくないのである。

 再生可能エネルギーのための太陽電池パネルもいずれはゴミとなる。EVを支えるリチウムイオン電池も,ゴミとなる。いずれも,リサイクルできなくはないが,ライフサイクルマネージメントから考えると,「製品を作るときのエネルギー」+「製品をリサイクルや廃棄するときのエネルギー」は,「製品が生み出すエネルギー」よりはるかに多い。リサイクルせずに,ただ地面に埋めてしまっても,いずれは地球にとって不要な物質として拡散し,生物の生存にも影響を与えてしまうだろう。

 3年前のIT製品は,もはや使い物にならない。リユースができない。かといってリサイクルもまず難しい。「適切に処分する」と言っている業者も,結局は「適当に処分する」「日本からはなくすが海外のどこかに捨てる」というのがオチである。クルマですら,アフリカはともかくとしても,ロシアに闇で中古車輸出ルートができている。明らかに違法な輸出である。特に,半導体まで載せたクルマが,軍事転用されていないわけがない。

 手元に置いておいてもどうしようもない古いIT製品だが,これを処分すると結局回り回って地球に悪影響があり,しかも個人情報などの流出の危険性もあるとなると,なかなか捨てきれないのである。