2018年の西日本豪雨を上回るような洪水、土石流の被害が、九州や中国地方の日本海側で起きてしまった。5年前の教訓が生かされなかった。というか、警報の発令方法が変わっただけのように見える。線状降水帯発生、などが各地に発令されたが、すでに避難する時間的な余裕のないタイミングのように見えた。
auは、2000年に発生した大規模な通信障害の原因が、人手による復旧手段が適切ではなかったとして、AI を使って自動的に復旧作業を進める仕組みを導入すると発表した。
クルマの自動運転でも、安全アシスト車でも、コンピュータによる判断が優先されるように考え方が変わってきた。明らかに人間の判断時間よりも短時間で判断と次の回避動作ができるからである。
線状降水帯発生についても、すでにいくつかのパターンが見えてきているように思う。避難の余裕のある1時間前に、空振りでもいいから、発生予報を出せる段階にあるのではないか。その際の条件設定と判断はコンピュータにさせてもいいのではないか(雨雲レーダーの濃度情報をメッシュごとに加算すれば,洪水予測ができるのでは(個人的な仮説です) - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2023/7/5)。
さて、おそらくそのAI 予測も、うまく行かないことが予想できる。というのも、基本的に近年の堤防決壊は「人災」だからである。
戦後の高度経済成長期に作られた建設インフラは、すべて寿命を迎えている。高速道路、橋、トンネル、そして堤防である。見た目ではほとんど分からない錆びや亀裂、などの崩壊が進んでいる。全体としては形を維持しているが、局所的に要は「穴が開いている」状態である。
機械力学で言えば欠陥点には「応力集中」が起き、掛かった力の何倍もの力が加わる。当然、設計時の安全率を軽く超え、一気に崩壊するのである。
自然災害は、人知を越えている。「この斜面では崖崩れが起きる可能性がある」と分かれば、それを放置することは基本的にはない。しかしどこまで対策するかは、掛けられるコストと時間による。10年保証すると仮に言ったとしても、崩れたら修復するとしているだけで、崩れないという保証ではない。しかも、10年先までその企業が存在するかどうかも保証はない。責任の所在など曖昧である。
その自然の猛威に対して、人間の作ったモノなど脆弱である。そこにヒビでも入れば、ひとたまりもない。
水はあらゆる隙間に入り込む。そこに木材があれば腐食させ、金属があれば錆びさせ、また寒い時には凍って体積を増し、隙間を広げる。土の中に染み込めば固い地盤との間に入り込んで滑りやすい層を作る。表層が一気に滑れば土石流となる。土、水、樹木が一気に斜面を滑り落ちる。その重量は何トンという量になり、家でもビルでも崩壊させてしまう。
今回の豪雨でも、自然豊かな平和な山の裾野で大きな被害が出ている。平らな土地でも安心はできない。
逆に平らな土地は、川も同じ高さで流れるため、洪水を防ぐための堤防が作られる。しかしこの堤防も人間が作って、何十年もメンテナンスすることはない。蟻の一穴の例えのように、1ヵ所にヒビが入れば、水も力もその弱い部分に集中し、一気に決壊すればあとは広がり放題になる。
メンテナンスには技術も技能も予算も必要である。壊れていなくて当たり前、不具合を見つけられなければ過失になる。地味な仕事である。自治体の予算は削られ、メンテナンスの仕事の経営が成り立たなくなり、放置された結果、重大な災害になる。まさに人災なのである。筆者は,堤防をもっと強化する方法を提案している(矢板方式の河川堤防はいいアイディア。どんどん打ち込んでみてはどうだろうか。 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 2021/8/27)。結局,そんなメンテナンスを行う動きはどこにもなかった。
専門家と言われる人のコメントも当たり前過ぎて、聞いていても腹が立ってくる。専門家なら,災害が発生する前に災害を予見しろと言いたくなる。
新型コロナウイルスも,またじわじわと感染確認者が増えているというのに,暑さも手伝ってマスク着用率は2023年7月に入って激減した。緊急事態宣言が出されていた最中でも,9割の人はマスクを着用していたが,最後の1割がマスク未着用で,咳・くしゃみエチケットもせずに咳をしていた。このわずかな「蟻の穴」によって,感染がうまく収束しなかった1つの理由だと思っている。
現在は,マスクなしの人に限って,咳・くしゃみエチケットはしない。つまり,筆者には「蟻だらけ」に見えるのである。あえてこの「蟻だらけ」の街中に出たくない。再度テレワークに入りたい理由である。