スマートフォンをクルマのナビにする人が多いと思う。一方で,若い人を中心にクルマを所有せずに,レンタカー,さらに時間貸しのカーシェアなどを利用することが増えている。
自分のクルマなら,専用カーナビを使いこなせるが,レンタカーやカーシェアに取り付けられているカーナビは,それぞれメーカーも機種も異なる。クルマを借りたその場で行先を設定するぐらいしか使えない。
その点,自分のスマホでナビができれば,事前にプランを設定できるし,どのクルマに乗っても同じ画面でナビができる。運転中に頼れるナビがあれば,安全運転につながる。
ところが,スマホナビをさまざまなクルマに取り付ける方法がなかなか難しい。一般にボンネット上にスマホを固定するが,ボンネットの表面は少しザラザラした「梨地」になっていることが多く,取り付けしやすい吸盤方式で安定させるのは難しい。また吸盤が安定して取り付けられるフロントガラスへの取り付けは,法律上禁止されている。
かといって,粘着式シールなどで完全固定するわけにもいかない。地震の際の落下防止テープなど,きれいにはがせるタイプの粘着式シールも考えたが,取り扱いがやや面倒である。
一方,スマホ側の固定方法もいろいろな種類があるが,なかなか決定打に出会っていない。取り外しも比較的容易で,かなりの固定力が提供されているのが,iPhoneのMagSafeである。かなり強力な磁石でスマホを固定する。リング状なので角度も自由に設定できる。
ただ筆者は,磁石を使うことに少し抵抗がある。ステンレス製トレーとマグネットベースで車載用スマホホルダー--ノート型ケース付きでも使える - jeyseni's diary (2025/5/18)では間接的にマグネットを使うことを提案し,まずまずのいい線で使えてはいるのだが,やはり磁力での固定には外れてしまうことの不安がある。なにしろ少しでも隙間ができれば,吸引力は幾何級数的に下がり,元に引き寄せることができなくなるからである。
もう1つ,磁石を使うのをためらう理由は,カード類の磁気記録に影響がないかどうかの心配である。昨今のクレジットカードや交通カードは,情報がICに記録されており,磁気ストライプを使っていないものも多い。しかし,かつて磁気ストライプの情報がカバンの蓋の磁石で消えてしまうような事故も経験しているため,なるべく磁石は使いたくないのである。現実,まだ磁気ストライプを読み取るタイプのクレジットカードも所有している。
スマホを最初に試したとき,中古品だったため,専用のカバーなど販売されていなかった。どのタイプにも使えるという触れ込みで,小さい吸盤を並べてスマホの背面を吸いつけて固定するノート型スマホケースを購入した。ところが,スマホの面に対して垂直方向には吸着するのだが,水平方向には滑ってずれてしまうことが分かった。
スマホリングも,多くは粘着テープ式で完全固定するので,取り外しはできない。単一の吸盤を使う方法も,空気の侵入を永久に防ぐことはできず,これも急速に吸着力が落ちて外れてしまう危険性がある。
と,いろいろ考えると個人的には「物理的な固定」が望ましいかなと思う。しかし,市販のスマホホルダーを見ると,四隅から押さえるタイプ,上下または左右から挟むタイプがほとんどである。特に上下または左右から挟むタイプは,バネの力で固定するものが多く,精密機器であるスマホに対して無理な力がかかっているように見える。
カメラを三脚に固定する場合,ネジでガッチリ固定する。カメラ側にネジ穴が用意されており,三脚の上面のある程度広い面積で支えて固定する。プロ用の大型のカメラでも基本的な仕組みは同じである。昨今は,このネジ固定と併用できるクイックシューという簡単に取り外しができるアダプターも普通に使われる。カメラを三脚から急いで外して手持ちに持ち変えるといった動作にも対応できる。
筆者は,アクションカメラも所持しているが,GoProには手を出していない。もちろん,100%活用する気がないから投資しない,という理由もあるのだが,一番の不満がこの「三脚用ネジ穴を実装していない」からである。何らかのアダプターを取り付けなければ,三脚に固定できない。1台目にお試しで買ったアクションカメラに三脚穴がなく,2台目として本格的に選んだ機種の最大のポイントが,三脚穴があること,だった。おかげで,小型の三脚や自撮り棒など,三脚ネジを使ったさまざまなグリップをカメラ本体に直接取り付けて撮影できている。
スマホにもこういう標準の固定システムがほしいところで,iPhoneは磁石式を選んだ。Androidには標準方式がまだない,という状態で,イライラしているのである。
スマホの下部に三脚用ネジ穴を付けるのは,物理的にできない。ネジ穴だけでスマホを支えるだけのスペースが取れない。背面の中央に穴を付けるという手もあるが,あまり恰好は良くない。
そこで,代替策として提案しようと考えているのが,スマホケースの背面にMagSafeと同じ寸法の金属を埋め込むと同時に,ここにネジ穴を3個ないし4個設けておくスタイルである。ちょうど,パソコン用ディスプレイのアーム取り付け用にVESA規格があるように,1つの基準でネジ穴を用意しておくのである。とりあえず,筆者のペンネームを流用して“JS規格”と名付けておこう。
こうすれば,取り外しのスムーズさを求める人はMagSafeタイプのスマホホルダーで利用すればいいし,安定した固定を求める人は,ネジで固定する方法を選べばいい。ネジ留めの際も,がっちり固定してしまうタイプから,簡単に手で外せる蝶ボルトを利用する方法も選ぶことができる。
筆者のスマホのようにノート型ケースを使っている場合は,前回紹介したステンレストレーにこの“JS規格”ネジ穴を取り付けて固定し,トレーの上にスマホを載せる,という方法で対応できる。
スマホケースに金属板を組み込むことで,多少なりとも冷却効果が期待できる。どの程度の厚さの金属板ならクルマの振動に耐えられるのか,固定用のネジの太さはどの程度が必要なのか,市販の金属板が使えないか,DIYショップや100円ショップなどを調査して実験してみたいと思う。