jeyseni's diary

「ジェイセニ」と呼んでください。

中国が次の時代を牛耳る前に,日本は「特効薬外交」に切り替えよ

ロジスティックスという言葉をカタカナで初めて聞いたのは,30年ぐらい前だったと思う。それ以前にも,たとえばトヨタ生産方式などで「物流」の重要性は感じていたが,まだ「運送・輸送」という意味のtransportationの方がしっくりしていた。教科書英語しか知らない筆者は,transferとかmoveとか,さらにはtruckとか別の簡単な言葉に置き換えて使ってしまうだろう。実際,その方がわかりやすい。英語でも日本語でも,さまざまな言い換えで表現できることは,コミュニケーションにとっては重要である。

 河野ワクチン担当大臣からこの「ロジ」「運び屋」という言葉が出され,この新型コロナウイルス禍での物流の問題が改めてクローズアップされた。問題は,「モノが動かないのにヒトが動く」ことである。

 モノが動かないので,経済が止まる。生鮮物が滞留し,腐って廃棄される。ワクチンの大半は,米国ファイザー社からの輸入になるが,-70度で管理しなければならず,日本への運搬,そして各地への運搬,現場の直前まで,環境を維持できるのか,いまさらながら不安である。接種場所を早く決めて,保管冷凍設備の設置をしなければならない。パナソニックが,運搬用冷凍設備の開発を急ぐと言っているが,これもまた間に合わない感じがする。旅客用航空機や食品用冷凍運搬車など,これまで別の用途に使っていた「ロジ」を借り上げて手配するなど,発想の転換ができるだろうか。

 モノが動かない半面,ヒトが動くのが近代社会である。江戸時代も,日本では天然痘・麻疹・インフルエンザ・コレラなどの感染症が,江戸(東京)を中心に猛威を振るったようだ。ヒトが密集することで感染が拡大するのは,現在も同じだが,違うのはヒトの動きの範囲である。海外からのモノやヒトは長崎の出島で区切り,江戸と地方は関所で区切られる。新幹線もなければ高速道路もない時代,ある意味でのロックダウンが実現し,一都市は壊滅状態になるが,全国が一斉に蔓延するということはなかったのではないか。現在は,感染症を媒介するのがヒトそのもので,その動きを止められないことが,世界的な感染爆発の原因だろう。「出島」と「関所」をもう一度 - jeyseni's diary (hatenablog.com) 

 第二次世界大戦後の復興で,世界の工場となった日本は,このモノの流れの中心にあった。原料を輸入し,付加価値をつけた製品を世界中に輸出して外貨を稼いだ。稼ぎ頭だった自動車産業は,物流でも情報の流れでも最先端にあり,日本の工場では無人搬送車や無人倉庫などの自動化設備を含めた国内物流の体制が出来上がっていた。

 その後,台湾,韓国,そして中国が生産拠点として一気に成長し,さらにインドネシアベトナム,インドなど,人件費の安い東南アジアで部品生産から組み立てなどが行われるようになり,日本国内で完結していたロジが世界中に広がったことによって,日本の製造業の優位性が失われて行った。特に,政治体制の違う中国に部品加工部門を全面的に頼るようになって,製造業のピラミッド構造が崩れて行った。

 2000年以降,観光立国をぶち上げ,観光客で外貨を稼ごうとした作戦により,日本の存在価値がさらに下がってしまった。オリンピックの誘致という世界最大の観光作戦で浮かれたのも束の間,新型コロナウイルス禍を抑えきれていない現状では,開催は無理だろう。せめて,日本がワクチンの世界的な供給基地となって,まず国内の感染を抑えることがアピールできていればまだ良かったのだが,これも中国に取られてしまった。ワクチンを独自開発した中国と,これを量産できる中国。中国国内での感染拡大は,完全には抑えきっていないようだが,今の勢いでは中国が次の時代の担い手になるのかもしれない。しかも12憶人という国内需要があるので,最悪,鎖国しても生きていける。

 中国トップが,世界のリーダーとしての気持ちの切り替えをしてくれないと,世界経済も地球環境も破綻してしまうだろう。これまで世界のリーダーであったアメリカが,正直,トランプ氏の「アメリカ中心主義」によって,世界の秩序を崩してしまった。メキシコとの間の国境封鎖,白人中心主義,自国経済発展のためのパリ協定からの離脱など,世界が求める流れに逆行した4年間だったと言えるかもしれない。バイデン新大統領は,元の「世界のリーダー」たるアメリカを目指すようだが,国民の半分はすでに目先の利益,自分の生活しか見なくなってしまった。トランプ氏は過激とも言える言動と政策でアメリカから世界情勢を変えてしまった。これと同じような自国中心主義の中国の習近平国家主席が,逆にじわじわと世界の流れを変えてしまうのかもしれない。

 1年でケリがつくと思った新型コロナウイルス禍なのだが,日本という狭い,しかも島国でも終息できなかった。次に打つ手は「ワクチン外交」だが,これを国策として展開しているのが中国である。欧米からのワクチン供給は,外交ではない。あくまでもビジネスである。製薬会社が最終的には利益を享受するだけであって,アメリカやイギリスがこれによって潤うわけではない。しかし,中国は国策で東南アジアに対して「ワクチン外交」を展開している。

 ここは,「日の丸ワクチン」の登場はさっさとあきらめて,某ベンチャーへの資金供与も止めて,たとえばイギリスのアストラゼネカからライセンスを買って日本でワクチンを量産して,まだ供給が追い付かないアフリカ諸国やスペイン,イタリアなどの経済の弱い欧米諸国に供給することを提案する。

 そして,日本の研究資産を新型コロナウイルスの特効薬開発に集中し,いち早く特効薬を開発して「特効薬外交」できた国が,次の勝利を収めると思う。インフルエンザの特効薬「アビガン」は残念ながら新型コロナウイルス特効薬としての成果が出なかったが,これを改良するのが一番の早道ではないか。

 NHKの番組で紹介されていた任期採用の特任助教が進めている新型コロナウイルス特効薬の開発などに資金を集中提供して,日本が再びモノづくりで世界に貢献できることを祈る。